UEFA CL決勝:プレビュー(予想)

明日のCL決勝、せっかくなので、予想を。

ローマでの決勝に至った2チームは、バルセロナマンチェスターUバルサは3季前のチャンピオン、ユナイテッドは昨季のチャンピオンである。ちなみに三年前のバルサは、アーセナルとのマイクラブ対決。ファーストプレーでのレーマンの退場、10人でリードを奪うがこらえきれずにバルサが優勝。

プレミアリーグからは5季連続で決勝に進出するチームが生まれていることになる。ベスト4の顔ぶれを見てさんざん報道されたとおりだが、プレミアリーグの隆盛は明らかだ。

まずは、勝って欲しいバルサの方からプレビューを。

新監督にペップを迎えたことで、トップの監督としての経験不足が懸念された。少なくとも今年は、低迷して再度監督交代となってバタバタと暗黒期に向かいさえしなければいい、と僕は思っていた。ロナウジーニョ、デコを放出し、エトオの戦力外も宣言し、燃え尽き組の一掃を図ったのは歓迎だったが、イコール結果に結びつくかどうかは未知数だった。実際リーグ戦開幕直後は、沈んでいきそうなチグハグぶりだったし、CLの予選も二戦目のアウェイで負けている。どう贔屓目に見たって順調ではなかったのだが・・・

9月のヒホン戦の6ゴールをきっかけに、チームの連動性が発揮される。シャビ、エトオイニエスタ、メッシの4人でのゴールにはまだアンリが含まれていない。その後も続くメンバー選考・采配の柔軟性を示すものだったし、構想外と言い放ったエトオを再生するなど、監督として抜群の手腕だった。リーグ戦はそれを皮切りに9連勝。ヘタフェとドローを挟んで10連勝。カタルーニャダービーで敗戦するまで、つごう5ヶ月間無敗だったのだ。その間、Bチーム編成で戦ったCLのリーグ戦最終節しか負けていない。

アジリティ、ゴールへの戦略的なアプローチ、称賛する言葉は尽きないが、ゲームをコントールする意思統一は監督を頂点としてチームがチームとして機能していることではないだろうか。それが組織として美しいし、日本人の僕にはそれが美徳に感じ取れてなお敬服する。リーグ戦でのシュート数700に対して被シュート数250、得失点差70、どちらも、単にポゼッションで守備機会を減らしているだけではなく、組織的な守備と攻撃への確実なビルドアップが徹底している成果だと、思う。

リーガを手中に収めた上で、臨んだCLはやはり準決勝の激闘が最大のポイントだった。

初戦ホームでスコアレスドローとされた二戦目アウェイで、前半早々エッシェンにボレーを叩き込まれる。ヤヤトゥーレのブロックのクリアが悪いところに飛んでしまったという運の悪さと、もちろんエッシェンのスーパープレーとで、バルサは完全に意気消沈してしまった。二点目を取られなかっただけでも幸い、チェルシーの走力と集中力に裏打ちされた粘り強く鉄壁の守備の前にシュートさえ打てない。アビダルの退場で10人にもなり、二試合スコアレスで万策つきたか。絶望的なロスタイム、メッシがゴール前に送ったパスを、イニエスタが正面にシュートを放ちゴールに吸い込まれる。早朝にもかかわらず「うわあっ!!」という声が出て家人が飛び起きる。唯一の枠内シュートがアウェイゴール

実況の倉敷さんの「これで終わったら理不尽だなあ」がすべて。バラックが主審に詰め寄る形相は節分に使える。

決勝には、退場となったアビダルと、累積のダニアウベスが出場できない。つまり、両SBが不在と言うことになる。ダニアウベスとメッシのユニットは強力であり、相手を押し込めて失点リスクを減らす重要な役割だった。バルサの攻撃に与える影響はもちろん、ユナイテッドの強力サイドを考えると、ここを自由にさせるのは非常にまずい。だからといって、プジョルをサイドに回してなんとかなるユナイテッドのセンターではない。ヤヤトゥーレを下げるという選択肢もシーズン中には取られたが、ユナイテッド相手にボランチを空けて自由に組み立てられるのは非常にまずい。シウビーニョとかケイタとかサイドに配置して、センターラインを変えない方が良いような気がするけど。

守備の不安に対して、攻撃面ではイニエスタ、アンリが、無事に出場できそうなのが朗報。シャビ・イニエスタの二列目に、メッシ・エトオ・アンリの3人が顔を揃えそう。

ゴールはともかくとして、まず中盤でボールを支配するためには、1ボランチがとても重要。サイドバックの攻撃参加は控えめになるとしても、両ウィングが開いてサイドに相手を押し込むことで、バルサの時間帯を長くすることが、勝利へのロードマップ。ラインはいつも通り高く保たないとリズムは取れないが、裏を取られる可能性はいつも以上に高い。点の取り合いに持ち込むことが理想であり、そのリスクは負わないといけないが、チェルシー戦のように苦労することはないのではなかろうか。

一方のユナイテッド。

ロナウドのゴタゴタもあったり、ハーグリーブスを欠いたり、今年もスロースタートなリーグ戦序盤だったが、リバプールの予想外の頑張りと、昇格組の序盤の健闘でプレミアシップが混戦となったことが幸いした。誰にも依存しない、完成度の高い大人のフットボールで、誰が出ても「らしい」フットボールを披露。なんだかんだ言って負けたのはリバプールアーセナルだけ。ドローで勝点を拾い続けて日本ツアー・・・じゃなかったFCWCの優勝を機に上昇気流に。9連続完封を含むプレミア11連勝。あの1311分です。ボルトン戦のように後半ロスタイムの劇弾や、ウィガン戦のようにスミ1(野球用語です)ならぬ前半1分のゴールを守りきるなど、ゲーム展開は違えど、この間1-0が6試合。強い。ダイナミックで速い。ベルバトフパクチソンテベスルーニーロナウド。どの組み合わせでも、アンチユナイテッドとしては絶望的になるシーンばかりだった。

だがリーグ戦にも山場はあった。レッズにリードされて苛ついたサーが後半こらえきれずに三人交代した直後、ビディッチが一発レッドで退場。1-4と叩きのめされた試合で陰りがみえ、翌フラムとの試合も0-2と敗戦。さらにはアストンヴィラにも1-2で敗色濃厚だったんだが・・・ロナウドのえぐいシュートと、誰やねんおまえクラスの新星マチェダの劇的ロスタイム初ゴールで逆転勝利。今季のMVPはマチェダ、と言ったのは誰だっけな。

CLでもっとも苦労したのは準々決勝のポルト戦か。ホームで予想外の2ゴールを許し、冷や冷やのアウェイでも、なかなか追加点が奪えず1-0のままで終了。ワンチャンスをものにされたらポルトの勝ち上がりとなるところだった。その教訓を生かしてか、アーセナル戦では格の違いを披露。10分で2点を奪い、アーセナルを4点必要な状況に追い込む。その後の、ライオンとウサギのような80分は、恥ずかしい以外のなにものでもなかった。11人の大人と11人の子供の試合、は誰が言ったんだっけな。精神修養だと思って最後まで見ました。

だが、その試合でフレッチャーが退場処分となってしまい、決勝には出場できない。バルサの支配するボールをいかに絡め取るかが、ユナイテッド側の争点であり、ダブルボランチで蓋をする必要性はいつも以上に極めて高い。キャリックの相棒はおそらくアンデルソンか。リオが決勝に間に合うようなので、ビディッチとともにCBは万全。オシェイとエブラは場合によってはCB化するし、高い集中力でひたすらスペースを埋めてプレスや飛び込んでこないDFに対してバルサは穴をどうやって見つけるか。

アンデルソンが下がっていると、前とのバランスが悪くなる。今季は大事な試合ではロナウドルーニーテベスの組み合わせで行っているような気がするのだが、その間をつなぐ適役というとスコールズだろうか。ギグスってことはないだろうか。あるいは、パク、ルーニースコールズを二列目に配して、ロナウドのワントップか。ロナウドベルバトフの2トップは、無失点記録の際には有効だったが、展開力のあるチームには効かないということか、最近は試してもいない。いずれにせよ、今名前を挙げた選手の誰かはベンチスタートになるわけだし、マチェダやナニも控えている。オプションとしては贅沢すぎる。いずれにしても、ボールは支配されても、決して自由なプレーはさせずに、ボールを奪ったら10秒でゴールを目指す。ユナイテッドのやりたいことは明確だが、機能すればバルサには止められない。

もちろん、セスクやファンペルシのように簡単には手玉にはできない相手だ。大一番で今までの尺度では測れない相手と対戦するユナイテッドの守備力が問われる。

以上を踏まえて予想としては、ハイスコアになってバルサが主導権をとる、と信じたい。ただ、ユナイテッドには信じられないことをしでかしてきた歴史がある。1点差で後半が過ぎていくようだと、もつれる。バルサは2点差つけておかないと、90分では決められない。特にチェルシー戦でも見せたような同点後のベンチの混乱は、最後に経験の差、準備の差、対応力の差として現れちゃうかもしれない。

一方、バルサの守備の不安な点をさっさとついてしまえばユナイテッドが連覇すること濃厚。

早く寝ないと・・・