2014/10/9-12 NC準決勝ガンバ大阪vs川崎フロンターレ「どうやって試合を沈めるかを注意深く考えて決勝へ」
【第1戦at万博】
GK東口
DF米倉丹羽岩下オ
DMF今野遠藤
OMF阿部大森
FW宇佐美パトリック
西野の離脱後、岩下丹羽のCBコンビとなり、鳥栖や鹿島相手に色々とほころびを見せつつあるのが心配。
二列目には怪我から復帰した大森が引き続き抜擢、倉田がサブ。
藤春・二川はベンチにも入っていない。
川崎は小林が代表で離脱しているほか、中村が体調不良で不在。
雨の中、試合開始直後の前プレからテンポのいいレナトのミドルシュートを皮切りに川崎にラッシュされるが、天候を意識しての早めのシュート意識に助けられる。丹羽岩下のコンビだとチョイチョイみられる、裏を取られたり、クロスに振り回されることもなく、試合の入りという苦手な時間帯をやり過ごす。
15分、遠藤が左から斜めのパスを米倉に通す。セレッソ戦の宇佐美→阿部のようにきれいにDFを置き去りにできないのがベストボールにビビる米倉の難点ではあったが、思い切ったシュートがDFの脚に当たってゴールに吸い込まれる。先制。
左サイドの大森を起点に攻撃の人数をかけることで川崎の守備もうまく引っ張ることができたが、米倉のシュート意識とスリッピーなピッチにも助けられた。
続いて27分、パトリックが中央で持ち、左から中に大森がゴール前に走りこむところにタイミング良くスルーパスを試みるが、目の前のDFにブロックされる。そんな気の利いたパスが出せるわけないよなあ、と思っているとその跳ね返りのボールを後ろから走りこんできた宇佐美がかっさらってドリブルで持ち込んでシュート。見事にゴールに突き刺さって2-0。
マークについていた選手も、エリア内でスペースを消していた選手もすべて置き去りにしたスーパープレー。
パトリックと宇佐美を消すための川崎の努力が無力化できているという流れで、川崎の混乱を生みだすのに十分な2点目だった。
中盤で人手が足らずプレスが掛からないことをいいことに、遠藤が終始前でプレーできていたのも好材料だった。
後半は、おそらくパトリック対策で起用された井川が全く機能していないということで金久保にスイッチ。
しかし、後半最初の川崎のチャレンジボールを岩下が出足よくカットすると、右の阿部へ。さらに縦のパトリックにボールを出すと、ドリブルで持ち込んでそのままシュート。外せばいつも通り体が強いだけのパトリックだったのだが、GKの正面ながら手を弾いてそのままゴールネットを揺らして3-0。
こうなると公然と試合を沈めにかかる長谷川監督。
すぐにパトリックを下げて佐藤を投入。後ろからのビルドアップを消させることで相手の形を作らせない。
70分には阿部を下げて倉田、80分には宇佐美を下げて明神を投入。
ボールを保持するガンバに対して川崎はカウンターで何度かガンバゴールを脅かすが、そもそも今のフロンターレはそういうチームではないので、割と安心。
83分にはセットプレーからゴール前で倉田がふわりとしたクロスをあげて、フリーの岩下へ。
ガンバサポなら思いだす、家長からマグノアウベスのくだり(2006)だったが、どうしたことか岩下は決め切れず。
苦笑いで自陣に戻るが、つくづくこれが決まるかどうかで無駄に大変な思いをすることになった。
捨て身で人数をかけてくる川崎のプレーをいなしながら時間を使っていたAT。
ラストプレーになるはずだったCKを川崎の田中選手に決められてアウェイゴール献上、3-1。
頭でズドン、なら東口も対応できたろうが、肩に当たってフワリと頭上を超えられてしまった。
これで試合終了。
4-1ならともかく、3-1と、アウェイ戦を残してまったく油断できないスコアとされてしまった。
【第2戦at川崎】
GK東口
DF米倉丹羽岩下オ
DMF今野遠藤
OMF阿部倉田
FW宇佐美パトリック
中2日の対戦にもかかわらず、スタメンをほとんどいじってこなかったのが驚き。
そして、「まず2点、そして3点目」、という明確な目標のある川崎に怒涛の攻撃を仕掛けられる。
この日も中村がいないことで、川崎はサイド攻撃からのクロスと縦のボールを多用して、ゴール前のシュート機会を増やすことを選択。そしてそれが現状の丹羽岩下コンビが最も弱いやつ。
9分に早速失点。左からの低いクロスに対して岩下が謎のジャンプでかわして、真ん中で待っていた大久保が労せずして(ジャンプもせずに)しっかりとヘディングでコースを狙って決めた。
これで落ち着かれるとガンバはやりにくいぞ~、と思ったがそうはならず。
川崎はそのまま中盤無視で人数を前にかける展開を続けてくれる。
いくら苦手でも「わーわーサッカー」も慣れてくればいなせる。
両サイドバックの疲れが隠せないため、たびたびサイドで起点は作られるが、そのたびにボランチがうまく時間をかけさせることでブロックを形成し、決定機には持ち込ませない。
第1戦よりは遠藤さんが後ろのポジションに位置しながら、ガンバが主導権を握って前へ攻める時間が増えることで、徐々にリズムをつかむ。
41分、相手エリア右角から宇佐美が倉田に出して、守備の間に走りこんだ阿部に倉田がパス、阿部がワンタッチで密集のパトリックに出すとパトリックがヒールでリターン。シュートのうまい阿部にとっては文句のないお膳立てでゴール。1-1の同点に。それにしても第1戦からパトリックはまるでブラジル人の様に細かい足技を披露している。
これでアウェイゴールという点での精神的負担が解消。川崎は少なくともあと2点が必要に。
ここでのメンタル的な落ち込みを、見逃さなかった。
左サイドを宇佐美が持ち上がり、センターへ低いゴロパス。最終ラインの前を横切るボールだったが、右へ走るパトリックを追い越しながら左へ走る阿部がうまくあわせて逆転ゴール。うまいことパトリックがスクリーンにもなったが、それにしても同じコースに左右の足で蹴り込むシュート力の高さ。
この2点のシーンではいずれも、川崎のエリア内には守備人数は揃っていたし、なんなら人数を割いていた宇佐美やパトリックに決定的に突破されたわけではなかった。ただ、シュートの局面で人数だけが揃っていてもしかたなくて、ボールを持っている選手がギャップをつくりだせば、もう目の前にはゴールなんだな、ということだった。1点目は倉田と阿部をあそこまで自由にしすぎだったし、2点目は相手が集中を欠いたことが、ギャップの要因だったように思えた。
とにかくこれで2戦合計5-2。川崎が勝ち上がるためにはあと4点必要で、ガンバにとって残りの時間を費やすことはさほど難しいミッションではなかった。
前半ATのお約束と後半開始早々の不用意な失点はあったが、60分に宇佐美を下げて大森を入れた時点で、相手の中盤からサイドへのつなぎを無力化、後ろでボールを封じ込めると同時に、疲弊した米倉とオジェソクを上下動から解放。ガンバが前でつないで押し込む時間が増える。セットプレーで追加点のチャンスもあったが、無理なつなぎも人数をかけた攻撃もせず。70分にはパトリックを下げて佐藤を投入し、ますます相手の最終ラインでボールを回させる時間が増える。
見事に試合を沈めたまま試合終了。
【結果】
二戦合計5-4でガンバ大阪が決勝進出。
第1戦でオープンな展開のままパトリック宇佐美が早い時間に決めると同時に、2人を抑えるヒントを与える前に下げることができた。第2戦では川崎はCBコンビを代えて人数をかけようとしたが、攻撃にも人数をかけたため、倉田と阿部が自由になり躍動した。1戦目は大森、2戦目は倉田、と使い分けた長谷川監督のチョイスもあたった。
たられば、は禁物だが、もし2戦目、川崎がアウェイゴールを与えないことを念頭に0-1のままでボールを回されたらどうだっただろう。阿部と倉田が後ろへ横へと守備に追われて、前線と距離があいてセカンドボールはすべてそこで拾われて・・・。それにサイド攻撃を織り交ぜられていたらこんなに余裕のある展開にはならず、真綿で首を絞められるような思いを、サポーターはもちろん、選手も、監督も、体験したのではないかと思う。
とはいえ、これだけの材料を相手に与えてしまって、一週間後にはリーグ戦で三度対戦するわけで、今野がいなくて、小林が帰ってきて、中村の体調が戻れば、4月のリーグ戦同様にボコられる可能性は高いよなあ、と思いました。
採点
東口:しかたないシーンもあるけど、2試合合計ヘディングで3失点か。やっぱりCBとはよく話し合うべき課題じゃないかな。キックミスも目立ちました。もう少し
米倉:1戦目はサイドを自在に制圧していたが、その反動か第2戦はちょくちょく置いていかれることもあった。まあ守備力を期待してはいないので、前で仕事ができるときに結果を出してくれたらいいです。よくできました
丹羽:ギャップを作られて大ピンチを演出してのかろうじてクリア、は自作自演でしょ~。岩下と良いコンビを形成してください。もう少し
岩下:競り合いに負けたり目測を誤ったりするわかりやすいミスよりも、ラインコントロールの失敗の方が重傷だと思います。相手のレベルが上がると対応できないようでは困る。もう少し
オジェソク:180分通して安定していた。疲れもあるはずだが、献身的な上下動は特筆もの。左サイドを安心で包むことで右サイドの不出来までもカバー。よくできました
今野:遠藤との縦関係、サイドのカバー、インターセプトからの攻め上がり、など文句はありません。とはいえアウェイゴールとるまではW杯前並みに顔が固まってたようですけど。リラックス!よくできました
遠藤:プレースキックも時折宇佐美に任せるようになったことで、精度が上がってきたんじゃないですか。第1戦で自陣での弱いパスをかっさらわれて運ばれてシュート打たれるまで、全く動かなかったのだけが不満です。ファーストディフェンダーとしては精進してください。よくできました
阿部:文句なしの準決勝MOMだと思います。相手のDF・ボランチを運動量で無力化したことで宇佐美・パトリックだけでなく遠藤のスペースまで提供したと思います。第2戦も阿部のシュートセンスに救われた。大変よくできました
大森:第1戦では広大なスペースを与えられてキレッキレのプレーを見せ、第2戦ではチェイスで試合を殺しにかかった立役者。これだけのプレーを見せて2戦目スターターではないことは、本人は不満かもしれないが、戦術的な理由だけでなく最も重要なシーズン終盤の収穫役として期待しています。よくできました
倉田:守備的な運動量と攻撃的なアイデアを両方発揮することを期待されている中、きっちりと仕事はこなした。宇佐美が下がってからはFWもやってたのでゴールがあるとなおよかったが、夏にはボランチもやらされていたことを考えると許してあげたい。できました
宇佐美:マークもつく中で周りを活かす仕事と自分が決める仕事を両方指向して結果を残しているのは感服以外にない。ただ再開後は出ずっぱりなのでさすがに一息つかせてあげたいですね。よくできました
パトリック:足技もうまくなってきていったいどうなってるの。フロンターレサポから暖かい歓迎もされていた。よくできました
佐藤:もはや試合のクローザーになりつつあって、ボールを収める、ポストプレー、飛び込む、追う、と守備が嫌がるFWの仕事を着実にこなした。ゴール同等の評価をしてやってください。よくできました
明神:第1戦途中出場もなんとなく押し込まれた状況を改善できず。次のリーグ戦は今野が出場停止だけど、出場機会が来るように頑張ってほしいですね。できました
金:出場時間少なく評価なし