ガンバ大阪2014シーズン回顧

ガンバ大阪の2014シーズンは「昇格イヤー」に「国内三冠」というこれ以上ない形で幕を閉じました。2015のリーグ戦開幕前(チーム的にはACLゼロックスですでにはじまってますが・・・)に改めて、昨年度の弊ブログの予想ともからめながら、ポイントを絞って振り返ってみたいと思います。

(1)W杯中断までは降格圏

これももう、劇的なリーグ戦優勝のダシにされてしまっている側面があり、正直食傷気味ですね。

宇佐美の離脱だとか、今野のメンタル的な落ち込みだとか、要因はたくさんあげられました。

ただ、今さら、完全に結果論やろ、と言われることを承知で、私はそこまで悲観していませんでした。いまでも、あれは選手を鼓舞するための「まやかし」だったとさえ思っています。

中断前というより宇佐美復帰前までの対戦相手には最終順位が上位となった浦和、鹿島、柏、鳥栖、川崎、横浜FMが含まれており、すべて負けています。また、対戦時の順位ではC大阪が5位だったり、調子の良い相手と巡り合わせも悪い時にあたったような印象が強かったです。

宇佐美後、には徳島、名古屋から勝点とりましたし、中断明けの残り一巡目の相手、甲府・清水・神戸にとっては逆に中断前にガンバと当たっておきたかった・・・と思われたかもしれません。

いずれにしても、シーズン序盤から中断までに、なかなか強いチーム・成熟したチームとの連戦だなあ、と実感しておりました。そこに正攻法でぶつかって、なにもできずに抑えられる、というのは知恵がないなとも思いましたけどね。

もちろん、強いチームとやったんだから負けても仕方ない、では優勝はおろか、プロとしてのメンタリティに欠ける話で、選手達はそう思ってはいなかったでしょう。ただ、ネガティブな一サポーターとしては優勝なんて大それたことを考える前に、勝点テーブルを眺めては、いやあ、これは充分巻き返すチャンスはあるよ、と考えていました。一方で、こんなはずでは、と思い続けた2012シーズンの怖さが頭から離れなかったことも事実ですけど。

(2)ナビスコカップ予選リーグの活用

降格した2012シーズンでさえ、ACLのためにナビスコ予選を免除されていたわけで、久々の予選リーグからの参加だったのですが、長谷川監督らしい、言い換えればJ2式ターンオーバーをしながら、サブ組・若手の力で予選を突破した。これは非常に意味のあることだった。若手を試すことはもちろん、サブ組の試合勘を維持すること、そしてリーグ戦で勝ち点を積み上げるのに苦しむ中、ナビスコで予選を突破できそうな位置にいたことは、チームの雰囲気を明るくする唯一の材料だったのではないかと思います。

特に鍵になったのは、鳥栖にアウェイで勝ったこと。この試合は特に若手が多く(内田、井手口、高木)出場した中で、さらに途中出場した小川には初ゴールもう生まれ、そしてなによりも鳥栖相手に走り負けない、ということでユン監督が退団する前に勝っておくことができて良かったな、と思います。あれがなければ、リーグ戦万博での勝利もなかったのではないかとさえ思います。

あとナビスコで言えば、清水にさっさと負けておいたことも、あれで清水さんもガス抜きされて満足して頂き、余計な因縁もなくその後のリーグ戦・天皇杯での3連勝につながったのかもしれません。

(3)博打だったパトリック起用とそれを活かした選手の賢さ

長谷川監督は好きなタイプの監督ですし、ここまでチームを再生させてくれた手腕になんの疑いもないですけど、長いシーズンのあいだには「いや、それは違うだろ~」とがっかりすることもあります。その最大のものが、パトリックです。もう少し理詰めで選手を構成していくと思っていたんですが、突然のスタメン起用には勝負師的な顔が覗きました。結果的に大当たりだったので、もう僕のがっかりが間違っていたわけです。

パトリックは加入後、甲府戦は交代出場でしたが、どうにもパッとしなかった。にもかかわらず、宇佐美と前線でコンビを組んでいた倉田が累積警告で出場停止となったことで、どうやりくりするのかな、と思ったところで、まさかまったく機能していなかったパトリックをスタメンで使ってくるとは、我々も思わなかったし、清水さんも驚いたと思います。

結果的には、難しいことはさせずに、パトリックにはシンプルにボールを入れて、周りが動くというスタイルでかき回しました。

強いおさめどころを手にしたことと、競り合いを気にせず強いヘディングが打てるなど、試合中に遠藤、米倉、宇佐美が、賢く使い方を学んでいったようで、選手の適応能力を褒めてやりたい。

(4)9月の万博でのダービー

チームの状態がよろしくなかった4月の長居でのダービーでさえ、選手達もフォルランも信じられないようなスーパープレーを見せてくれて、ダービーだけは別物、ということを強く実感したわけですが、9月の万博ではまさに真逆に入れ替わった状態で迎え撃つことに。セレッソさんにとってもやはり別物、になるかと思いきや、試合は完勝。万博史上まれに見るサポーターの熱量は、連合さん達が何年も試行錯誤してきたひとつの集大成だったと思う。セレッソを揶揄するチャントを封印したことで、熱量が冷まされることなく、ピッチに注がれた。試合終了直前の「俺たちが大阪さ」は、ヤマハスタジアムでのそれとともに、ずっと僕らの心に残るものになるだろう。

、という叙情的なサポーターメンタルに留まらず、選手達との一体感というか応援を力にできるようになってきた、という意識はこの頃には醸成されていたように思う。

(5)ナビスコカップ優勝によるリーグ戦疲弊のリフレッシュ

リーグ戦でも、柏に負けた以外は難しい相手から勝点3を積み上げ続けて、強豪がさっさと負けていった天皇杯でも勝ち残っていて、早い段階で3冠どころか2冠の可能性さえガンバにしかない感じになっていた。しかし、この時期になって戦力的な固定も目立ちだした。西野の離脱でCBは丹羽岩下の固定。SBは米倉ジェソクで固定、藤春は対広島スペシャル化。二列目も倉田を有機的に使えず、怪我から復帰した大森もパッとしない中で、阿部の驚異的な走力にひたすら頼るような試合がつづいていた。

ナビスコと代表で中断した後は、浦和・神戸・徳島。特に浦和はこの中断前の時点でも勝点差が5あり、失速気味とはいえ昨年程じゃない(この時点では)し、ガンバ戦で優勝を決められる可能性さえあった。ナビスコ決勝で負けてしまえば、今年のチームとしては崩壊かな、メンタル的に持ち直せないだろうな、という悲壮さだった。もちろん、一時はここまで勝点延ばすとは思っていなかったのだから、贅沢なネガティブだったんだけど。

なので、ナビスコ決勝で早々に2失点したときには、無冠を覚悟した。結局、2失点目の直後にヤットさんクロスのパトリック砲で息を吹き返したわけで、これまたもうパトリックさんには頭が上がらん。逆転での優勝は、単なる1冠に留まらず、残り短いシーズンを走りきるエンジンの再点火に充分な燃料補給となった。

(6)選手個々人の成長

開幕時に発売された「G Magazine」(オフィシャル雑誌)の表紙には10人の主力選手が掲載されている。開幕前には、まごう事なき主力として違和感がなかった選手ばかりだが、リーグ戦最終節にはその半分の5人(藤春、倉田、二川、加地、西野)がスタメンにいなくなっていたことに驚かされる。

怪我とか移籍とかそれぞれに事情はあるけども、とにかくシーズンの間に選手が成長し、監督がそれを見抜き促しながら、図らずも一年を通せばターンオーバーができていた格好になる。怪我人のせいにはできないけど、結果的にはそれが編成上の問題・戦力不足をあぶりだして、優勝を逃したり降格したりしたシーズンもあったわけで、とにかくチームマネジメントとしてはうまくはまった。長谷川監督の「獲っちゃった」じゃないけど、はまっちゃった、に近いですかね。最大の補強は個人の成長、なんて綺麗事、ここまでうまくいくことはそうそうない。

(7)最後に

「三冠」なんて死ぬまでにはもう見れないかもしれない。2014シーズンは、年老いてから思い出してもニヤニヤが止まらない年として刻まれるだろう。

直接的に最後までタイトルを争ったのは、ナビスコは広島、リーグは浦和、天皇杯は山形、ということになるだろう。それぞれのチームには、ライバルとして敬意を表したい。2015シーズンにやり返されることのないよう、ガンバも準備して欲しい。

個人的に、タイトルに向けた過程で重要な相手となったのは、ナビスコは川崎、リーグはセレッソ天皇杯は広島、だと思う。ナビスコの準決勝はH&Aで壮絶な打ち合いに持ち込まれて、危うく西野さんが刻んでった遺伝情報が読み込まれるところだった。リーグ戦は鹿島相手に難しい展開から逆転勝利を挙げた試合を、選手も監督も鍵だったと言うので実際はそうなんでしょう。でも僕は、9月のセレッソ戦でしっかり勝てたときに、心が震えた。あの試合ができるなら、セレッソもそう簡単に降格しないんじゃないかとも思った。それが、ダービーだけは別格ということなんだろうけど、それを勝ちきったのは素晴らしかった。天皇杯は、早い段階で広島とのJ1同士の対戦となって、しかもリーグ戦でもすぐに対戦がある状況で、ミキッチを封じ込める藤春スペシャルを見せたことが大きかったと思う。

以上、2014シーズン回顧でした。