2015/4/12 J1#5 ガンバ大阪vs清水 「アウェイのお客さんも満足させる術はJ2で学びました」

近年は秋口から冬の対戦が多かったアウェイ清水戦が、今年は春先に登場。

アウェイ4連戦(ブリーラム-清水-平塚-広州)の2戦目。

清水さんはリーグ・ナビスコと5連敗中。連敗中の得点は2点だが、シュート数は54本もあるので、決定率が3.7%という異常な低さ。開幕戦では5本のシュートで3点を奪う効率性で鹿島に勝ったというのが嘘のよう。レッドカードでの退場者を3名も出すなどチームとしての若さと焦りがチーム状況を負のスパイラルに巻き込んでいるよう。

ガンバは、ブリーラム戦でお休みだったパトリックがスタメン復帰。オジェソクが怪我から回復してベンチ。リンス、二川、小椋も好調のようで煽りを食って赤嶺がベンチ外に押し出される。贅沢な悩み。

試合の入りは、中盤は清水のパス交換に任せて、低い位置でボールを回収してカウンター。縦へのロングボールの出し入れは、GKの弱点を狙ったものか。パトリックと藤春を走らせて追いついたところを少ない人数でシュート打って帰陣、というガンバの攻撃。パトリックが少し下がり気味にボールを受けて、縦に走ったりワイドに開いて周りを使うなど、珍しく工夫していた。やはりタイ出張を免除してもらった分、この日は走りまくる覚悟らしい。

清水はボールをつなぎながらサイドに展開してきて、そのときガンバの守備は割と真ん中を放棄してた思い切りの良さが怖かった。実際サイドに開かずに中央突破を試みられることはなかったので、そういうスカウティングだったんですかね。

サイドからスライドしながらシュートコースを探す清水の攻撃は、緻密だったけどガンバの守備も概ね対応できてた。倉田と今野が同じタイミングで飛び込んじゃってスペース空けたシーンは危なかったけど。

しかし前半の20分過ぎに、相手SBが負傷して苦手の枝村が投入される。どこ入るんや・・・と思ったらそのままSBに。まあどこにいたって枝村は枝村。クロス一本上げられるだけで心臓が縮み上がる。

ガンバの先制点は中盤を無視したところから生まれた。阿部が縦のロングボールを入れると、エリア内で宇佐美が待ってて、2人ついていたDFをジャンピングトラップで置き去りにすると目の前にはGKだけ。ゴールに蹴り込んだ

そこから清水は一気に落ち込んでしまって、ガンバの時間帯になる。パトリックが持ち込んでのシュートは弾かれ、阿部のミドルシュートはバーを叩き、倉田はドリブルとパス交換で無双するが、この時間帯に立て続けに取れないのも、ガンバっぽいところ。宇佐美のプレゼントパスを受けてパトリックが強烈なシュートを放ったがこれまたバーを叩き、最後は宇佐美がエリアで倒されたのを、6週連続担当となった松尾主審がバテちゃって見逃したところで前半終了。

1点取ってガンバが攻勢となったが、総じてのんびりとした試合展開。確か去年のアウェイ戦もそんな感じだったな。

後半も、ガンバのラッシュで幕を開ける。阿部が縦に米倉を走らせて、縦に深く入っての折り返しは、さすがに欲張りすぎた。清水が全くついて来れてないので深く入る必要もなかったのにな~、と思ってたら、直後のプレーで今度はアーリークロスを入れて、それをパトリックがコースを変えてゴールに流し込む。

まだ後半5分ということで、ここからのマネジメントが難しいな~、という展開でで見事に清水に巻き返される。

ウタカを投入して、とにかくウタカに放り込まれると、まるでW杯でドログバが入ったときのように動揺。

そこへ東口苦手なファーへのループ気味のクロスを入れられて機関車バックは間に合わず、ドンピシャヘッドを決められて2-1。ウタカさんはこれがJ初ゴールだとか。

すでに走りまくってる阿部を早めに下げて大森を投入したのは、明らかに前線での守備にフレッシュさが必要だったからだろうけど、どうにも全体的に浮足立ってしまう。

象徴するかのように、クロスをキャッチした東口が、いつものような早めのフィードを躊躇して足下にボールを置く。真後ろにいた大前にかっさらわれて同点ゴールを決められる。64分。

今季何度も経験する後半のサンドバッグ状態だが、なんだかんだで凌ぎきることが多かったけど、この日は選手がとにかくビビっちゃってダメだった。しかし皮肉なことに、思ったより早く追いついたことで清水も浮足立って、気持ちが焦ってのファウル連発で、ボールが徐々にガンバの支配下に来る。これに助けられた。

77分に倉田に代えて二川を投入。リンスではなくて二川だったところがメッセージ。守備はもう良いから、前でやろうね、との号令よろしく、前へのスイッチが一気に入った。二川から宇佐美への縦パス、ボランチ横を通してCBの前でストンと足下に受けられるボールを通せば、何だってできる。清水のDFにしてみれば1点目は同じようなボールを前にトラップされて抜かれたんだから、下がってケアしたのは現実的だったのかもしれない。

ゴールを背にした宇佐美の前を右からパトリックが左に超えていき、対応してたDFがスライドした瞬間を見逃さずに、反転。今までパトリックを体ごと止めることを考えていたDFが早めに飛び込んじゃったことで楽なシュートにはなったけど、シュートを打つ時には、右に大森、センターにはパトリック、左には藤春も駆け上がっていた。それにしても二川は今季初出場とは思えない連携を見せた。

最後は、懇願の視線をベンチに送るパトリックを無視しつつ交代枠を残して試合を締めた。

スーパーなプレーで何度もチームを救い勝点を拾ってくれた東口だから、彼の凡ミスが原因で勝点を落とすようなことにならなくて本当に良かったし、試合終了後の東口を囲む環は本当にほほえましかった。東口コールを送ったゴール裏も。

なお、ミッドウィークにブリーラムで日本勢初勝利を挙げたガンバは、ブリーラム帰りでの初勝利という偉業も達成。

(2012柏3-3横浜FM、2013仙台1-1鳥栖、2014C大阪1-2柏)

逆に言うと、清水はブリーラム帰りのチームに初めて負けたクラブということになる。だからなんだ、と言われても、ただそれだけですよ。

<採点>

東口:セービングがいくら良くても、ボールをかっさらわれるような注意力を見せたらダメよ。ハリルジャパンで唯一出番がなかった後からちょいちょい不安定なところ見せてたけど、もうこれで最後にしてほしい。残念だけど、きっともうロシアまでは、日本代表の芽はなくなったとみた方がいいよ。チームに集中しよう。もう少し

米倉:前半は不必要なくらい慎重だったけど、後半は開始早々から積極性を見せてアシスト「まさかパトリックがああいうの決めると思わなかった」とか言わずにたまにはアーリーも入れよう。しかし後半の守備ではバタつきの代表格。できました

丹羽:ウタカ相手の動揺が隠せなかった。失点シーンでクロスを見送ったのはしゃあないとしても、東口が空けたマウスに飛び込むくらいの気迫が欲しかったなあ。まあ普段からそういう執着心はないんだけど・・。もう少し

岩下:2-0から追いつかれていく時間帯に、むしろ頼もしさを感じた。まわりを鼓舞し、シンプルにボールをクリアし、主審に詰め寄る(w)。兄貴感で試合を落ちつけられたかもね。大前がゴール後に急におとなしくなったのも、岩下効果かな(根拠なし)できました

藤春:途中で対面する相手が変わったけど関係なかった。あまり使ってもらえなかったけどSBの裏にフリーランを何度も仕掛けた。よくできました

今野:ネガティブ今ちゃんが顔をのぞかせかけたけど、主審の「そんなことじゃダメ!」のイエロー提示(違う)を受けて踏ん張った。CKになぜかフリーで受けたところを思い切ってシュートしてくれてたら見直したけども。できました

遠藤:相変わらず、一方的な都合による省エネ志向が相手に伝わってない。2点目の起点となった米倉への斜めクロスだけじゃ、物足りないです。ティーラトンのビデオ見てプレイスキック研究して。できました

阿部:スーパーミドルがセーブされたのは残念だが、この日も2点に絡む攻撃でのアクセントと献身的な守備に救われた。ただ、顔つきが険しいのが気になるな~。満足行ってないのかもしれないけど、このプレーを続けて欲しい。よくできました

倉田:よく走ったし、エリア内の浸入が実を結べば良かったんだけど。相手を切り裂く効果的なプレーと追いかける守備は、やはり2列目が生命線だと実感。二川さんの仕事はできなくても、彼のお膳立てにふさわしいプレーだった。よくできました

宇佐美:2点目は状況がこうならなかったら生まれてなかったかもね。エースの自覚での2ゴールはMOM。よくできました

パトリック:「こんだけ走らされるんやったらブリーラム行きゃ良かった」とにかくパトリック頼みの時間帯が長かった。よくできました

大森:しっかりと守備に奔走していたけど、同点のシーンでは珍しいものを見る目で眺めていた。できれば3点目のスイッチを入れる役ができたらよかったけどね。そういえば4点目を逃したね。できました

二川:仕事人ですな~。疲労が満ちたピッチでひとり異次元のプレーを披露した。よくできました

監督:同点ゴール決められた時は誰よりも血が煮えたぎっただろうに、よく冷静に対処しましたね。二川投入は抜群のセンスだったし、投入選手の即決定機演出にはしびれました。交代枠残した意図は不明だけど、リンスを短時間で入れるのは失礼、ということかな?よくできました

2015/4/7 ACL#4 ガンバ大阪-ブリーラム 「日本勢ブリーラムにて初勝利」

暑期のタイに乗り込みアウェイ戦。

ブリーラムは2012年に現在のチーム形態になってから、2013年にはベスト8に進出するなど、ガンバがアジアの舞台から遠ざかっている間に、ACL常連となったチーム。ここまでACLでは7勝9敗8分け。うちホームでは5勝4敗3分け、とホームでやや数字が良い。Jチームはこれまでブリーラムアウェイでは1敗2分けと勝てていない。

初勝利を挙げた名古屋戦からの変更点は、ACL今節出場停止のパトリックの代役にリンス、また足首に不安のある岩下に代えて西野を起用。ベンチにはジョンヤ、堂安が繰り上がった。

試合前の暑さに比して、試合中は風もあり猛暑と言うほどでもないが、まだ春の便りを聞き始めたばかりの日本から来るとやはり動きが鈍る。ブリーラムのラッシュに曝されて、モタモタと下がる間に、西野が負傷。早々にジョンヤが交代で投入されるが、マークをどうするとかの確認の必要もなく、CKは東口の頭を超えてファーサイドのネットに吸い込まれる。ハイボール・・というよりはループに近いボールを機関車バックしちゃってバランス崩すのをたまに見るけど、この日は蹴ったティーラトン選手が素晴らしかったという他ない。

なおホーム戦でもスーパーなFK決められた選手。もっといえば、この直前のタイ国内のリーグ戦でもどえらいFK決めてたので、観客のボルテージは最高潮。

この状況下で、乗りやすいタイ人(まあ多国籍だけど)にゲームをコントロールするのは容易ではない。

もしかしてアウェイの大歓声がなかったら、試合は静かに沈められていたかもしれない。

だが相手が勢いに乗せられて前に出てくる分、ほんのわずかなギャップを狙うだけの元気が、前半にはまだあった。

ブリーラムの守備は球際の判断力と、パスコースの読みが冴えていてなかなかチャンスを演出できない。

それでも阿部を中心にして、倉田・リンスと細かくパスをつなぎながら、エリア内でようやく倉田がドリブルで仕掛けることができ、それをパスアンドゴーで中に割って入っていた中央のリンスにパス。リンスはそのままゴールに向かって真っ過ぐシュート。いつもの超絶技巧とはまた違って、いや、それまでにさんざんリンスに対応していた守備陣からこそ意表を突くダイレクトなプレーだったのかもしれない。起死回生の同点弾。

直後には、宇佐美が右の米倉を走らせて、中の阿部へクロス、あわせただけで逆転!というシーンがあったが、これは阿部がオフサイドポジションブリーラム守備陣が意気消沈したところを、手早くゴールに迫ったシーンだっただけに惜しかった。

選手交代もなく後半に突入すると、ブリーラムは息を吹き返し、運動量が激減したガンバは防戦一方となる。

今野がボールを回収しても、つなぐ先がない。体力を絞り出すように阿部倉田がチェイスしても、サイドやボランチと距離がありすぎてついていけず、たちまちピンチに逆戻り。苦しい時間帯だった。流れるようなパスワークから、サイドへ開いてクロス、そこに複数人がエリアに飛び込んでくる迫力に、ただやられっぱなしだった。

61分には、顔色の悪い阿部に代えて赤嶺を投入。前でリンスとの連携に苦しむ宇佐美をワイドに開かせる。

今季どんな相手とやっても後半に訪れるこのサンドバッグ状態。東口がこらえてくれたことで、ホームのブリーラムにもようやく脚が止まる時間が訪れる。

それを待っていたとも思えないが、77分にバテバテの倉田に代えて大森を投入。

この辺でようやく試合展開としてはイーブンに戻せた。

どちらも動きが少なくボールだけが動ためにロストの応酬という感じだけど。

84分にはゴール前に縦に入れられたボールに2人がフリーで反応。慌てた米倉がゴール前で1人引き倒したが、こぼれ球をシュートされて失点・・とおもいきや謎のオフサイド判定。PKを見逃してのゴール、でもおかしくないプレーだったが命拾いした。

87分、相手のカウンターを前線からの守備でとりかえし、左ワイドに開いていた宇佐美から、米倉に対角のパス。右サイドを駆け上がった米倉がワンタッチでクロス中にを入れると、さらに後ろから駆け込んできた大森が走り込んで逆転ゴール!

このまま試合は終了、ブリーラムでの日本チーム初勝利を収めた。

これで、ACLの予選リーグ敗退はとりあえず免れた。

相手監督には「チャンスを外してるとこういうことが起こる。ACLはそれを許してくれるほど甘くない。ガンバは後半のたった一回のチャンスを決めた」と言われたが、そう言われても納得。守備だって粘り強く組織的に守っておさえたわけではなく、相手にやりたい放題されながら、フィニッシュの精度に救われた。

相手の攻め疲れを待ってのスイッチオン、というバクチはもうやめて欲しいものだけど、連戦で、メンバーも苦労して、難しい相手。贅沢は言うまい。

暑さも日本の夏ほどではなかったが、やはり体が慣れていないとギャップに苦しむものだ。

<採点>

東口:プレースキックの名手という情報は持っていたんだろうか、という疑念は残るが、雨あられと打たれたシュートをよく防いだ。決定機を外してくれたのは、いいポジショニングのおかげということにしよう。よくできました

米倉:ひとり疲労感とは別世界で上下動を繰り返していた。無尽蔵のスタミナで、最後は正確な折り返しを大森に供給。守備でも相手のフィジカルに負けない千葉ヤンキー魂で張り合った。個人的MOM。よくできました

丹羽:気合いは入っていたけどもツルツル抜かれては置いてけぼりにされてた。ジョンヤの世話どころではなかった。もう少し

西野:怪我から回復しようやく信頼を得てきたところで無念の離脱。五輪は消えたか・・。出場時間短く、採点なし

藤春:押し込まれて守備で走らされることが多かった。前ではサポートも少なかったしね。できました

今野:緊急投入されたジョンヤのお守りと、集中力を欠いた遠藤を狙われた後のボール回収に大忙しだった。獅子奮迅の活躍ではあったが孤立無援。弁慶ばりの壮絶な最期を予感させたが、勝って良かった。よくできました

遠藤:動けないのはいつも通り、パスミスやボールロストが多いのもたまにあることだが、この日は判断ミスも相次いで、イレブンを疲弊のスパイラルに陥れた。後半に猛攻に曝された主要因。もう少し

阿部:険しい顔でプレーし続けたが、調子の悪さを如実に体現していた。多少の連携ミスを運動量で補うスタイルが、疲労と暑さで封印された。ミドルも見せ場がなかった。オフサイドとはいえネット揺らしたときは興奮したけど。もう少し

倉田:下がって守備することに追われた一方で、前でのチャレンジはほとんど見られなかった。同点ゴールのようなシーンを、サポートの有無にかかわらず一人で切り裂いて見せて欲しかった。調子も良いはずなのに勝ち味に遅いところが心配。できました

宇佐美:代表ブーストは一試合かよ・・・と落胆。粘り強い守備に手こずって、ワイドに開いて受けていたのが最後に実を結んだ。リンスとの相性にも難があるんだろうな。できました

リンス:こちらもブリーラムのしぶとく賢い守備に、超絶技巧を発揮する機会を与えられなかった。とはいえ1点目のシーンは普段スタメンを張ってないとは思えないほどの連携から生まれた。なんとか辛抱してリンスをトップコンディションで使えればガンバはさらに強くなる。よくできました

金:緊急事態での出場も、テクニカルなプレーも、アジアっぽく泥臭い守備でチャンスの芽を摘んだ。よくできました

赤嶺:途中出場だというのに消えてしまった。時間帯的にも相手の脚は止まりかけてたのに、遠慮したのか、2列目と一緒に下がったプレーに終始。もう少し

大森:ナビスコ決勝ばりの決勝弾。よくできました

2015/4/3 J1#4 ガンバ大阪vs名古屋「チケット収入を犠牲にした金曜日の代償」

日本代表の監督がハリルホジッチさんに代わったお披露目試合で藤春をフル出場させ、宇佐美には代表初ゴールの場を提供してくれた。その直後の試合ということもあって二人のモチベーションには期待。さらにハリルホジッチさんの万博来場情報も。

ACLアウェイへの移動を考えて、金曜開催の万博。試合が始まるまでは強い雨だったが、始まるとおさまっていき、芝が乾くとともに試合もガンバ側に好転していった。

前半は、名古屋がパスをつないでくる。つないでくるというのはたぶん彼らのやり方ではなくて、高い位置から快速永井か、坊主川又にあわせるボールを入れたいはずなんだけど、低い位置でDFラインを構えることで縦に抜けるスペースを与えない。で、前に入れるか、その前の段階で、すっかり復調した様子の今野が、ボールを分断。

逆にガンバの方が、サイドに素早くボールを出して、高い位置でクロスをあげて帰ってくる、ということを繰り返していた。全体を押し上げずに我慢している以上、このやり方はやむを得ないし、多少は自陣に押し込まれる時間も増えた。

ただ両サイドとも攻め上がったときに人数が少ないので選択肢が少なく、SBとSHのコンビネーションがイマイチなことが致命的となってしまう。藤春・倉田も、米倉・阿部も、ちょっと呼吸が合わないな、というところを宇佐美が良くサポートに駆けつけてた。

それが実ったのが、前半のゴールシーンだったかも。クロス気味に上げた低いボールは相手DFにもあたってネットへ吸い込まれた。雨の日はこういうのもあるよね。

後半は、開始早々阿部が縦のパス交換で前に持ち込んだボールを、深い位置のスペースに出したところを、米倉が追いついて折り返す。宇佐美がきれいに叩き込んで2-0。

ところがこのあとが良くない。

展開が落ち着いて阿部・倉田が少しポジションを下げる。意図したものというより、心理的に安全を期したのか。で、中に絞ってしまいがちになり、結果、相手から見たらワイドにスペースが使える。そこへ持ち込んでの早い攻撃に晒されてしまった。

55分、名古屋のカウンターで小屋松が走り込んできたが、東口がエリアの外まで飛び出してきてボールを受ける。小屋松は藤春もケアしてたし岩下も追いついてたのでどっちかに出せば問題なかったのだが、後ろからダッシュしてきた川又が目に入ったのか、ボールをロストしてしまう。逆のサイドながら完全に倒したかな、と思ったけど、あとでビデオを確認したら腕は広げたけど、幸い川又が東口に乗っかって倒れた格好になってた。どちらかに体を入れて腕が引っ掛かってたら、退場だったでしょうね。

ただ、これをきっかけに東口のプレーがきわめて不安定になる。

開き直った名古屋のワーワーサッカーに押されて、攻め込まれるシーンが続いた62分、CKを岩下とトゥーリオが競ったこぼれ球に、東口が飛び込んでしまって、永井にガードされてそのままぽっかり空いたゴールに永井が押し込んで2-1に。倉田と米倉がとっさに反応してがんばったけどね。

その直後にも、止め切れない小屋松を今野が手で引き倒して与えたFKから、ゴール前で完全フリーになられた矢野にへディングを叩きつけられるが、これは東口が間一髪はじき出す。もう、完全に入ったと思いました。ドンピシャでしたもの。

このあと倉田を大森に交代。守備で走力を費やしていた倉田を変えて大丈夫かしら、と思ったがこれが正解でした。前でボールを受けて早い攻撃をしかける大森からチャンスが生まれる。そのタイミングで名古屋が小屋松を下げてくれたことも、中盤の展開を楽にしてくれた。

阿部に代えてリンスを投入したことで、前線のリズムも変わり、すでにそのころにはトゥーリオも前に行っていなくなってた名古屋の守備。

エリア内で自由にパス交換ができるようになったのが3点目につながった。

パトリックが前に持ち上がって、左の大森にパス。守備ラインはみんなパトリックにみとれていて対応が遅れる。さらに縦に藤春を走らせてエリア内深い位置からマイナスのクロス。リンスが走り込んで逆で受ける。宇佐美も大森もフリー待っていたけど、ニアのパトリックを選択、も競り合いでこぼれる。それに後ろから走り込んできた今野が楢崎の手をかすめてズドン。3-1で勝負あり。

宇佐美は最後まで惜しいシュートを連発。さらには守備ラインの前まで戻ってボールチェイスに参加するなど、ハリルホジッチさんの効果をバリバリに披露してくれました。

FC東京戦のように追いつかれなかったことは、選手のコンディションが上がってきた証左でしょうかね。それで監督のオプションも増えたということにしておきましょう。

雨の平日ナイターでお客さんの入りは11,000人ちょっと。

去年は同じ時期の鹿島戦(やや雨)が約13,000人。一昨年(J2)の時はヴェルディ戦(雨)が10,000人。

昇格初年度とか三冠効果とか、それぞれ集客にからむ要素はあるだろう。天気はしゃあないけど、金曜にずらしてお客さんが2,000人減った、ということを考えると、それを犠牲にしてまで臨むACLアウェイなんですよ。銭の花を散らすだけということがないように期待したい。

<採点>

東口:ハリルホジッチが「全員使う」と言ったのに最後まで出場機会がなかったことで、自分が実在しないのではないかという哲学的な悩みを持ったとか。動きすぎて不安定になったのは代表逆効果ということにしましょうか。矢野のヘッドと永井のミドルを弾いたことでかろうじて同点とはさせなかった。永井のやつは、パンチしたボールを矢野が正確にあわせてたらダメやったろうけどね。。。もう少し

米倉:すばらしい。無駄走りが少なく、しかもゴールへ向かうため相手が困惑。まさに2年前のフクアリで歯ぎしりさせられた、それでした。よくできました

丹羽:永井はかなり抑えたけど、サイドに釣られることもしばしば。不安定な時間帯をもう少し落ち着かせてほしかった。できました

岩下:失点シーンではトゥーリオを倒したことをアピールされてました。ゴール入ってなかったらPKだったかな。主審からは見えない位置だったけど。ただ、カバーリングにミスはなく、そつのない守備をしていた。できたら矢野が中に入ってきたときに、もう少し助けてあげても・・。できました

藤春:とりあえず入れとけ~だったクロスが、縦に自信を持って走ることで力強くなった。倉田から自立することで、前に無数の道が開けた。よくできました

今野:危ないシーンを減らせたのはボールを回収力。クリアさえうまくいかない時間帯にも、獅子奮迅のボール奪取をみせていた。ドリブルでスペースを埋めていくのは、非常に効果的だったし、何度か見せていたラストパスの意欲が最後に報われた。目標の年間5ゴール、ぜひ達成を。よくできました

遠藤:代表外れたのでまた絶好調モードかな、と思いきや、パッとしなかった。これまでの代表への貢献に敬意を表されてる場合ちゃうで。しかし、守備タスクを宇佐美に助けてもらう日が来るとは・・・。もう少し

阿部:得点につながるシーンの起点だけでなく、良いシュートも放ってくれた。後半は少し消極的になったところで、さっと交代させられた。まあ連戦なのでね、これもターンオーバー。よくできました

倉田:エリアに切れ込むまでの速さと、自分でシュートを打つのをあきらめる速さが、混在していた。だから決定機にボールが回ってこないのでは。ガンバっぽいところを突破してほしい。リンス見習おう。できました

宇佐美:あのシュートがうまくて良く走る方はどこからいらしたのかしら、宇佐美に似てるようでしたけど。90分、スーパーでした。もっととれそうだったのが怖い。よくできました

パトリック:しっかりボールをおさめて、名古屋ディフェンスの注意をひきつけた。トゥーリオとなにか話してたけど、だいぶイラつかせてましたね。ただフィニッシュの粗さよ。よくできました

大森:ワイドに開いて前に持ち込む、監督の修正意図を見事に体現。ゲームコントロールの肝でした。よくできました

リンス:単なる阿部の代わりだけでなく、追い越して前で仕事をすることで、相手の守備をエリアに押し込めた。よくできました

小椋:復調の気配があるのかな。短時間でも早くフィットしてくれることが重要。シーズン最後には重要なピースに。出場時間短く、採点なし

2015/3/22 J1#3 ガンバ大阪vs甲府「今野頼みの○○サッカーで今季初勝利」

ACLJリーグで2分け3敗と苦しんでいる状況で、苦手の甲府へ乗り込む。

ブリーラム戦ではようやく阿部を先発起用できて、攻撃面では改善がみられたけれどもやはり勝てず。この日も阿部がスタメンで、倉田がベンチにまわった。その他、今野、西野、二川もベンチ入りを果たしたのが楽しみ。

風が強くて両チーム苦労する中、6分に明神が負傷退場。小椋の適応が遅れたこともあって、しゃあなしとはいえさすがに酷使させすぎやろ、と思っていたけど、最悪の形で問題が露呈してしまった。代わって倉田が投入される。

前半での交代といえば、西野監督時代に、加地の負傷でチョジェジン投入、昨年も今野の負傷交代で佐藤投入、などで大胆なポジションチェンジを図って活路を見出すことが多かった。この日もそれ込みでの交代だろうという感じはしたが、まずは倉田は今野の位置に入った。

前半はサンドバックとまではいかないが、甲府にしっかりと形を作られる時間帯が続く。決定的なシーンこそ多く作られないが、ガンバはうまくボールを運べず、すぐに自陣に戻されてしまう。SBも前で起点を作れず、大森と阿部もボランチ脇のエリアを潰しに走るため、宇佐美やパトリックとの距離が空いてしまう。ATにロングボールを阿部が落として、宇佐美がエリア深くに切れ込んだシュートが惜しかったが、おおむね我慢のまま前半は終了。

後半開始から、怪我で離脱していた今野が投入される。45分がどうなのか心配ではあったが、まずは今野がボランチに入ることで中盤から後ろの守備は安定。三角形を作りながらSBが安心して高い位置をとって前を向くことで、ようやく相手ゴールに迫るような形を作り始める。

ただ、そうなってからフィニッシュ精度に欠けるのも、今季のガンバの問題。宇佐美、パトリックなどが決定的なシーンを決め切れない展開で、60分、エリア内を固める甲府に対して左脇で倉田に縦に出して中央にクロス、DFラインの前で宇佐美が決定機もボレーを打ち切れず、流れたボールを阿部が左足一閃。弧を描きバーを叩いてゴールネットを揺らす。ようやく先制。

さらにその直後、中央で宇佐美が競り勝ったボールを阿部がアウトで縦に蹴りだしパトリックを走らせる。エリアまで運んで守備を背負ったまま阿部に戻し、阿部は前の宇佐美に出してゴール前に走り込む。パトリックと阿部の献身で宇佐美の前はDF一人だけとなり、左足でワンタッチしてから、空いたコースを右足でシュート。ズドンと突き刺すミドルで2-0。シュート前のワンタッチが、絶妙にコースをつくったという城福さんの(悔しそうな)解説。ただ、もしかしたらACLで厳しくコースを切られるのは、やっぱそのワンタッチが余計なのかもな、とも思いましたよ。

結局この試合も、前半での負傷交代というスクランブルを逆手にとって、絶妙なゲームマネジメントでようやく今季初勝利をつかんだ。

前半から今野を使うのは故障明けという点でリスクが高かったし、倉田ボランチがはまればそのまま行きたかったかもしれない。結果的には、それがはまらなかったことで、今野投入の決断ができて、倉田も後半からポジションあげることで、甲府の守備タスクを増やすことができた。たぶん「ボランチのところ狙えよ」っていう指示が相手には出てただろうからね。

<採点>

東口:前半はばんばんセットプレーを浴びたが落ち着いて対応。落ち着いたままACLのように決められても困るんだけどね。よくできました

米倉:普段は期待しないクロスが、この日は風をついて低くて速く、ゴールを感じさせてくれた。よくできました

丹羽:やられっぱなしの時間帯をよくしのいだけど、今野が入るまではとてもじゃないけど完封できるイメージではなかった。ボランチとの距離を自分で工夫してやってほしい場面も。できました

岩下:ミスもなくキレることもなく辛抱強く耐えた。特にアドリアーノを無力化したのは秀逸。よくできました

藤春:スピードを活かした決定的なプレーはなかったけど、駆け上がって宇佐美や倉田が起点となれるよう支えた。スプリント数は19回だが走行距離が11.5kmということからもこの日の特徴が伺える。よくできました

明神:前半で負傷交代。元々違和感があったのか、疲労からか、キックオフから動きはすぐれなかった。しっかり治してここ一番でのクローザーとして戻ってきてほしい。もう少し

遠藤:相棒が倉田の時も、今野が入ってからも、いつものようにフラフラせずに責任感のある守備に徹した。倉田へのリターンはさすがだったし決めてほしかったね。よくできました

阿部:変化する跳ね返りのボールだったとはいえ、珍しくシュートを吹かした直後のシーンで、しっかりと抑えたシュートをゴールに叩き込んだ。体調はどうなのかわからないけど、阿部を外しちゃだめだよな、と思うこと多々。よくできました

大森:苦しかった前半に献身的なボールチェイスを見せてくれたが、結局違いを作ることはできなかった、マネジメント上しかたないけれど、倉田が後半担った役割で輝く選手だわね。もう少し

宇佐美:パトリックが守備をブロックしながら待って、阿部が絶好のボールをくれたお膳立て。さすがにきっちり決めてくれた。その前にミートさえすればというのもあっただけに。やはりゲームを動かすスコアラーとしての期待を込めて。できました

パトリック:米倉のクロスも、宇佐美のお返しスルーパスも、絶対決めてほしいやつではあったけど、フィニッシュが下手なのも込みで、よくボールを納めたことでこの日は満足。よくできました

倉田:前半はスクランブル的にボランチ発進で苦戦。過剰に相手を追い込むことで2列目がサポートに下がってきちゃう。それよりDFとの距離感ケアして欲しかった。やはり倉田ボランチ大作戦にはまだ時間がかかりそう。後半は定位置で抜群の働き。低い位置からのポジションチェンジということもあってかいつもよりも優しい配球とわかりやすいプレーだったかも。よくできました

今野:大丈夫かよ、は杞憂に。広いエリアをカバーして交通整理で甲府を押し込んだ。生まれたスペースを活用して持ち上がり、食いつかせて左右に散らすなど、絶好調。無理はしてほしくないが、今野にもらった勝点。よくできました

赤嶺:なかなかプレー時間が増えないけど、短い時間で結果を出すことで今後の大事なシーンでの起用も増えると思います。採点なし

2015/3/7 J1#1 ガンバ大阪vsFC東京「ベンチ無策で失った勝点2」

大雨の開幕戦に18000人を超えるお客さんが集った。三冠効果、万博ラストイヤー、代理店一押しチーム、三拍子そろったことと営業努力でしょうな。

切り替えの早いチーム同士の対戦。ガンバはACLでパッとしないなかで小椋をベンチから外し、井手口に。かといって明神遠藤のボランチコンビで凌ぎきれるのか。結果的には破綻した。

序盤は東京の切り替えの速さにボールを前に運べないが、切り替えに集中しすぎてゴール前でのアイデアに乏しい相手に助けられて特に危険なシーンはない。

試合勘の点でやや有利なガンバが、一本調子の東京を徐々に押し込んでいく。宇佐美へのマークが強いが、強引な突破とサイドに流れてのプレーを使い分けながら、スペースを作る。前半ATにタッチラインで粘った宇佐美が遠藤に戻す。フリーの遠藤がコースを狙ったシュート性のボール、ゴール前でパトリックが合わせて先制。

なお、テレビで見ても完全にタッチラインを割っていたのが見えたし、主審はコーナーを指していたとか色々な指摘があったが、主審が笛を吹いていないこと、そもそもタッチからのボールアウトの判断は副審なので、プレーを止めた選手も、抗議も、お門違いにしか見えなかった。しつこい抗議に敢然と対応しなかった岡部さんにも問題はある。

後半も特に修正してこない東京に、ガンバが余裕を持ってゲームを進める。ファイナルサードで比較的自由がきくようになって攻勢をかける。51分に宇佐美が倒されてPK獲得。自分で決めて2-0。

ここで、きっちりとクローズに入れば良かった。

東京は選手交代で2トップにしてサイドを厚くしてくる。それでも2列目の運動量ベースの対応はできていて、明神もそれなりに頑張れていた。しかし、70分を過ぎてくると、全体的に疲れが目立ち始める。75分に武藤が丹羽を背負ったままターンでシュートを決めて1点返される。

これで一気にメンタル的に落ち込み、雨で冷やされて体力も失われ動けず、集中力もきれてミス連発で防戦一方。

選手達はそれでも目の前のボールを追いかけるが、ベンチは無策。体力の残ってない選手達がフレッシュな東京の交代選手に翻弄される姿を18000人にお見せし続け、最後は3トップに戻した東京の猛攻に屈してATに劇的被弾。

2-2にて終了。

阪神江本孟紀さんの「ベンチが阿呆やから・・・」じゃないけど、ベンチの無策でうなだれる選手が気の毒でしのびない。サポーターはそれも受け入れなしゃあないけど、こんな天気でも楽しみにして来てくれたいちげんさんは、もうこないだろうな。

春先に動けないのは昨シーズンも見たけどね。そういう調整でのんきに「ACLを~」って言ってた訳じゃないことを祈る。

優勝した去年よりも1節終了時点での勝点は上回ってる、ていうくらいしか前向きなポイントがないけど、とにかくこれではACLでボコられるのはわかるわ~、としか言いようがない。

東口:途中までは安定してセーブできていたはずなのに、守備陣のもたつきとともに、反応も鈍くなった。守備が混乱したときに適切な指示ができないのならば守護神とは呼べない。もう少し

オジェソク:太田はほぼ完璧に抑え込んでいたが、いなくなってからも同じように下がってしまって、相手に自由に使われるスペースにしてしまった。できました

丹羽:武藤によく対応はしていたが、相手が上回った。同じ相手に負けない、と思うのは自分だけじゃない。今回は根負け。もう少し

岩下:ミス連発。押し込まれてなんとかクリア、も頑張っていたけど。失点につながったクリアミスは今季ずっと晒され続けると思うよ。最後にして欲しい。もう少し

藤春:自由に上がってチャンス演出。宇佐美の不調で実らなかったシーンも多かったが、トライし続けた。よくできました

明神:ミドルシュートは素晴らしかった。あれが決まっていれば、試合はまったく変わったのにね。切り替えの遅さはやむを得ないが、相手にしつこく狙われて最後はヘロヘロで動けず。もう少し

遠藤:1点目のアシストはおみごと。最後までよく走っていたが、周りが動けなくなるとしんどいですね。最後は、緩く、時間をかけることさえできなかった。シュートはタイミング的には良かったんだけどGKのミスがなかった。できました

大森:ゴールにつながると思える直線的なドリブルやパス交換の乏しく、ガンバ的パス交換に悪い意味で染まった感じ。運動量まかせのトラッキングも最後は調整不足でガス欠。もう少し

倉田:ゴールへの可能性を感じる動きは少なかった。2列目から飛び越す動きで打開するセンスも欲しかった。守備で奮闘してくれていたぶん、脚が止まってからの不在ぶりが目立った。倉田は悪くないんだけど勝てない以上は何かを替えないと・・。できました

宇佐美:徹底的にマークされていた分、パトリックや大森・倉田を使おうと奮闘していた。1点目はその粘りが実ったが、リードした後はやや自分で行こうという気持ちが強くなりすぎた。PKは奪取したけど、それ以上に潰したチャンス多し。遊びすぎた。早々の交代も納得。もう少し

パトリック:先制点だけでなく、カウンターで相手を押し込み、ドリブルで持ち込んでのチャンスメイクなど終始、前で存在感を見せた。あれ以上は望めない。よくできました

リンス:断トツの技巧でチャンスメイク。決めきれていたら、守備での決定的なミスも目立たなかっただろうに。できました

米倉:早くから準備していたのに、監督の臆病さで出番を失った。出場時間短く、採点なし。

監督:あれだけ動けない選手達さえも交代させられないならベンチに選手置かなくて良いんじゃない。色んな深謀はあったんだろうけど、この日に限れば もう少し

2015/2/28 ゼロックススーパーカップ ガンバ大阪vs浦和「号砲に過ぎないけど」

TV観戦。

ACLでバッサリやられた両チームが対戦。

昨年の3月あるいは11月の対戦と同じで、浦和がボールを自由に回すところは無視して、フィニッシュに集中の守備。今季はホールディングを厳しくとるということで、意図的にそういうプレーへの注意や警告を強調。これもゼロックスの醍醐味ではある。浦和は手を使った守備が昨年まで多かったので、どこまでとられるか試しながらやっているようにも見えた。

試合は、浦和がフィニッシュどころかチャンスメイクまでの展開さえ遅いため、ガンバが持ち込む時間帯が増えたいった。CKからパトリックが落として宇佐美が飛び込んでゴール天井に蹴り込んで1点。人数をかけて攻めてきたところをカウンターでパトリックがドリブルで持ち込んで追加点。この辺も昨年の11月と同様で、浦和のバランスの悪さに助けられたか。

今季2冠目、ゼロックスも2回目の戴冠。

両チームとも、ベストコンディションには遠く、修正点を確認しながら手探りの90分。

最後に、確実な形に頼っちゃったガンバと、トライに終始した浦和。

チーム構成や、監督の任期や、目指すもの。それぞれ違うわけで、それを背負いつつ勝負するのがスーパーカップ。Jリーグの幕開けですね。

<採点>

東口:少々連携でもたつくシーンもあったけど、浦和のエリア内での逡巡に助けられた。混戦でのキャッチなど、見慣れたけどやっぱり安定してるなと思う。できました

オジェソク:李とやりあってたけど、だいたい抑えてた。試合感のなさか、スロースタートなのか、動きが良くなれば、もっとよくなる。ACL期待。よくできました

丹羽:苦し紛れの放り込みやFKの跳ね返しによく頑張った。ごちゃつくゴール前で危ないシーンもあったけど。よくできました

岩下:決定的なパスの可能性を持ったボールの多い浦和相手に、よく対応できていた。ズラタンが入った後は、そちらの対応に周り完全に無力化。よくできました

藤春:サイドを駆け上がり浦和守備を翻弄。3年前のイメージで裏を突こうとするだけの相手にも対応した。相手がオッサン平川だったからかな・・・。でも梅崎も抑えてたよ。よくできました

明神:浦和スペシャル、なのかもしれないけど、シャドーへのボール配球をチェックして前への展開をさせなかった。素晴らしい。よくできました

遠藤:セットプレー、ニアで密集の前でカーブかけてセンターに向かうボール、よかったですね。倉田が突っかけるのを後ろでカバーする姿は完全に子供を遊ばせる親のそれでした。よくできました

大森:前半の少ないチャンスで、前に持ち込んでも、赤嶺やジェソクとの連携がいまいちで戻すだけに。宇佐美が右に回るか、倉田が助けに来てくれたときだけ、一瞬輝く。今年は輝かせる側に回って欲しいと期待。できました

倉田:ボランチからの運び役、サイドへの追い込み守備、エリアでの顔出しなど、充実。最後は押し込んでゴールのチャンスもあったが、外しちゃった。仕上がりの良さを実感。よくできました

赤嶺:パトリックの調子もあって抜擢も、こちらも連携の点でまだまだなことを露呈。随所にプレーは良かったけど、もう少し早く欲しいな、という動き出しに合わせて上げられなかった。浦和もよく知ってる選手だし守り方は心得ていた。もう少し

宇佐美:プレスにチャンスメイクに走り回っていたし、先制点はよく飛び込んだ。本人の言うとおり「らしくない」ゴールは、浦和も予想しなかった献身性が生んだ。直後の持ち込んでのシュートの方が、本人は決めたかっただろうね。よくできました

パトリック:結局うさパトコンビかよ、は置いといて、時間限定で効果的な仕事。はやくコンディションあげて、90分動けるようにね。よくできました

リンス:キレキレの動きで無双。シュートも惜しかった。よくできました

阿部:途中出場がもったいない、浦和が人数をかけてきたシーンで、後ろでボール追い込んで奪うのは痛快だった。よくできました

監督:赤嶺のフィットを優先させつつ、効果的な時間でパトリックを活用。リンスもうまく使えている。うまくローテーションしながらしっかり勝ちきるところはさすが。よくできました

ガンバ大阪2014シーズン回顧

ガンバ大阪の2014シーズンは「昇格イヤー」に「国内三冠」というこれ以上ない形で幕を閉じました。2015のリーグ戦開幕前(チーム的にはACLゼロックスですでにはじまってますが・・・)に改めて、昨年度の弊ブログの予想ともからめながら、ポイントを絞って振り返ってみたいと思います。

(1)W杯中断までは降格圏

これももう、劇的なリーグ戦優勝のダシにされてしまっている側面があり、正直食傷気味ですね。

宇佐美の離脱だとか、今野のメンタル的な落ち込みだとか、要因はたくさんあげられました。

ただ、今さら、完全に結果論やろ、と言われることを承知で、私はそこまで悲観していませんでした。いまでも、あれは選手を鼓舞するための「まやかし」だったとさえ思っています。

中断前というより宇佐美復帰前までの対戦相手には最終順位が上位となった浦和、鹿島、柏、鳥栖、川崎、横浜FMが含まれており、すべて負けています。また、対戦時の順位ではC大阪が5位だったり、調子の良い相手と巡り合わせも悪い時にあたったような印象が強かったです。

宇佐美後、には徳島、名古屋から勝点とりましたし、中断明けの残り一巡目の相手、甲府・清水・神戸にとっては逆に中断前にガンバと当たっておきたかった・・・と思われたかもしれません。

いずれにしても、シーズン序盤から中断までに、なかなか強いチーム・成熟したチームとの連戦だなあ、と実感しておりました。そこに正攻法でぶつかって、なにもできずに抑えられる、というのは知恵がないなとも思いましたけどね。

もちろん、強いチームとやったんだから負けても仕方ない、では優勝はおろか、プロとしてのメンタリティに欠ける話で、選手達はそう思ってはいなかったでしょう。ただ、ネガティブな一サポーターとしては優勝なんて大それたことを考える前に、勝点テーブルを眺めては、いやあ、これは充分巻き返すチャンスはあるよ、と考えていました。一方で、こんなはずでは、と思い続けた2012シーズンの怖さが頭から離れなかったことも事実ですけど。

(2)ナビスコカップ予選リーグの活用

降格した2012シーズンでさえ、ACLのためにナビスコ予選を免除されていたわけで、久々の予選リーグからの参加だったのですが、長谷川監督らしい、言い換えればJ2式ターンオーバーをしながら、サブ組・若手の力で予選を突破した。これは非常に意味のあることだった。若手を試すことはもちろん、サブ組の試合勘を維持すること、そしてリーグ戦で勝ち点を積み上げるのに苦しむ中、ナビスコで予選を突破できそうな位置にいたことは、チームの雰囲気を明るくする唯一の材料だったのではないかと思います。

特に鍵になったのは、鳥栖にアウェイで勝ったこと。この試合は特に若手が多く(内田、井手口、高木)出場した中で、さらに途中出場した小川には初ゴールもう生まれ、そしてなによりも鳥栖相手に走り負けない、ということでユン監督が退団する前に勝っておくことができて良かったな、と思います。あれがなければ、リーグ戦万博での勝利もなかったのではないかとさえ思います。

あとナビスコで言えば、清水にさっさと負けておいたことも、あれで清水さんもガス抜きされて満足して頂き、余計な因縁もなくその後のリーグ戦・天皇杯での3連勝につながったのかもしれません。

(3)博打だったパトリック起用とそれを活かした選手の賢さ

長谷川監督は好きなタイプの監督ですし、ここまでチームを再生させてくれた手腕になんの疑いもないですけど、長いシーズンのあいだには「いや、それは違うだろ~」とがっかりすることもあります。その最大のものが、パトリックです。もう少し理詰めで選手を構成していくと思っていたんですが、突然のスタメン起用には勝負師的な顔が覗きました。結果的に大当たりだったので、もう僕のがっかりが間違っていたわけです。

パトリックは加入後、甲府戦は交代出場でしたが、どうにもパッとしなかった。にもかかわらず、宇佐美と前線でコンビを組んでいた倉田が累積警告で出場停止となったことで、どうやりくりするのかな、と思ったところで、まさかまったく機能していなかったパトリックをスタメンで使ってくるとは、我々も思わなかったし、清水さんも驚いたと思います。

結果的には、難しいことはさせずに、パトリックにはシンプルにボールを入れて、周りが動くというスタイルでかき回しました。

強いおさめどころを手にしたことと、競り合いを気にせず強いヘディングが打てるなど、試合中に遠藤、米倉、宇佐美が、賢く使い方を学んでいったようで、選手の適応能力を褒めてやりたい。

(4)9月の万博でのダービー

チームの状態がよろしくなかった4月の長居でのダービーでさえ、選手達もフォルランも信じられないようなスーパープレーを見せてくれて、ダービーだけは別物、ということを強く実感したわけですが、9月の万博ではまさに真逆に入れ替わった状態で迎え撃つことに。セレッソさんにとってもやはり別物、になるかと思いきや、試合は完勝。万博史上まれに見るサポーターの熱量は、連合さん達が何年も試行錯誤してきたひとつの集大成だったと思う。セレッソを揶揄するチャントを封印したことで、熱量が冷まされることなく、ピッチに注がれた。試合終了直前の「俺たちが大阪さ」は、ヤマハスタジアムでのそれとともに、ずっと僕らの心に残るものになるだろう。

、という叙情的なサポーターメンタルに留まらず、選手達との一体感というか応援を力にできるようになってきた、という意識はこの頃には醸成されていたように思う。

(5)ナビスコカップ優勝によるリーグ戦疲弊のリフレッシュ

リーグ戦でも、柏に負けた以外は難しい相手から勝点3を積み上げ続けて、強豪がさっさと負けていった天皇杯でも勝ち残っていて、早い段階で3冠どころか2冠の可能性さえガンバにしかない感じになっていた。しかし、この時期になって戦力的な固定も目立ちだした。西野の離脱でCBは丹羽岩下の固定。SBは米倉ジェソクで固定、藤春は対広島スペシャル化。二列目も倉田を有機的に使えず、怪我から復帰した大森もパッとしない中で、阿部の驚異的な走力にひたすら頼るような試合がつづいていた。

ナビスコと代表で中断した後は、浦和・神戸・徳島。特に浦和はこの中断前の時点でも勝点差が5あり、失速気味とはいえ昨年程じゃない(この時点では)し、ガンバ戦で優勝を決められる可能性さえあった。ナビスコ決勝で負けてしまえば、今年のチームとしては崩壊かな、メンタル的に持ち直せないだろうな、という悲壮さだった。もちろん、一時はここまで勝点延ばすとは思っていなかったのだから、贅沢なネガティブだったんだけど。

なので、ナビスコ決勝で早々に2失点したときには、無冠を覚悟した。結局、2失点目の直後にヤットさんクロスのパトリック砲で息を吹き返したわけで、これまたもうパトリックさんには頭が上がらん。逆転での優勝は、単なる1冠に留まらず、残り短いシーズンを走りきるエンジンの再点火に充分な燃料補給となった。

(6)選手個々人の成長

開幕時に発売された「G Magazine」(オフィシャル雑誌)の表紙には10人の主力選手が掲載されている。開幕前には、まごう事なき主力として違和感がなかった選手ばかりだが、リーグ戦最終節にはその半分の5人(藤春、倉田、二川、加地、西野)がスタメンにいなくなっていたことに驚かされる。

怪我とか移籍とかそれぞれに事情はあるけども、とにかくシーズンの間に選手が成長し、監督がそれを見抜き促しながら、図らずも一年を通せばターンオーバーができていた格好になる。怪我人のせいにはできないけど、結果的にはそれが編成上の問題・戦力不足をあぶりだして、優勝を逃したり降格したりしたシーズンもあったわけで、とにかくチームマネジメントとしてはうまくはまった。長谷川監督の「獲っちゃった」じゃないけど、はまっちゃった、に近いですかね。最大の補強は個人の成長、なんて綺麗事、ここまでうまくいくことはそうそうない。

(7)最後に

「三冠」なんて死ぬまでにはもう見れないかもしれない。2014シーズンは、年老いてから思い出してもニヤニヤが止まらない年として刻まれるだろう。

直接的に最後までタイトルを争ったのは、ナビスコは広島、リーグは浦和、天皇杯は山形、ということになるだろう。それぞれのチームには、ライバルとして敬意を表したい。2015シーズンにやり返されることのないよう、ガンバも準備して欲しい。

個人的に、タイトルに向けた過程で重要な相手となったのは、ナビスコは川崎、リーグはセレッソ天皇杯は広島、だと思う。ナビスコの準決勝はH&Aで壮絶な打ち合いに持ち込まれて、危うく西野さんが刻んでった遺伝情報が読み込まれるところだった。リーグ戦は鹿島相手に難しい展開から逆転勝利を挙げた試合を、選手も監督も鍵だったと言うので実際はそうなんでしょう。でも僕は、9月のセレッソ戦でしっかり勝てたときに、心が震えた。あの試合ができるなら、セレッソもそう簡単に降格しないんじゃないかとも思った。それが、ダービーだけは別格ということなんだろうけど、それを勝ちきったのは素晴らしかった。天皇杯は、早い段階で広島とのJ1同士の対戦となって、しかもリーグ戦でもすぐに対戦がある状況で、ミキッチを封じ込める藤春スペシャルを見せたことが大きかったと思う。

以上、2014シーズン回顧でした。