第96回日本陸上選手権三日目短観

男子1500m:

高校生の打越も決勝に残るなど、上野など社会人の実績組に対して学生がどうやって挑むか。世界との差はあるが興味深い決勝となった。

世界レベルでみるとやはり激しさが足りないが、それでも日本選手権では珍しいほどの主導権の握りあいがあって、特に学生が頑張る。

ラスト200を切って立命館の今崎が仕掛けるも、一瞬前に出るのが精いっぱい。続いてJR東日本勢がトップに立って直線へ。しかし最後は富士通勢がかわして、その後もはっきりとは突き放せないままゴール。前に立ってからの加速ができないあたり、世界との差が歴然ではあり、この競技の醍醐味を味わうという観点からは不完全燃焼だった。

楽しい競技だし、日本人が1500mで世界と戦う姿が見たい。

女子800m:

高校生二人、大学生二人が決勝に残ったレース。日本選手権連勝中の岸川を中心に団子で直線に向いたまま、最後に前へ出たのは久保。

2'04"18はなかなかのタイム。

また集団に最後までついて一段でゴールした高校生の福里も立派。岸川は前へ出切れずに4着。

これから数年で、世界の舞台へ出ていけそうな期待が高まった。

男子800m:

B標準を突破している横田が本命だが、筑波大の中村がA標準を目指して飛ばす。残念ながら途中でタレてしまったが、非常に気持ちがよかった。

楽な展開で引っ張ってもらった後ろの選手たちの中から抜け出した横田、口野の富士通勢がワンツー。横田は内定取れなかったためか悔しさを見せていたが、大学生に引っ張らせておいてなんか白々しいな、と。

女子5000m:

A標準を突破している選手のうち、10000mを走った絹川が欠場、吉川と福士は10000mに続き二種目目、ということで残る新谷が必然的に本命視されるが、吉川の好調さも見逃せない。

またB標準を突破している、木崎、西原、正井の他、小林も五輪を狙っているだろう。

個人的には名大の鈴木に注目。阪名戦を回避して日本選手権を選んだ(当り前か)選手がいかほどのものか。

いきなり38秒とかで入った積極性のなさに、観戦しながら怒りでヒートアップ。結局福士が先頭に立つことになった。いったい他の選手は何をしにきとるんだ。勝ちたいとか、記録出したいとか、なんかないのか。前の方でやってる人たちは自分とは違う人たちです、って思って出てきてんのかよ。

結局福士が引っ張りながら吉川と新谷がついていくが、10000mの疲れもあり思ったようには上がらない。

すると吉川が引っ張る形で前に立ち、ペースをキープ。このあたりは、自分が勝つためというよりは、2人のためのようにも見える献身的な引っ張りだった。五輪に二種目出場を狙うほどの体力は吉川にはないだろうし、5000mでの入賞の難しさを考える、とすでに10000mを決めている彼女にとって、ここでも五輪を狙うというのは現実的ではない。

ここでペースを保ったことが幸いし、吉川脱落後もなんとか福士と新谷は五輪内定ペースで進む。

福士に限界が来て新谷が前に立つものの、単独でペースが上がらない。

徐々にB標準も厳しい感じになってきて、福士も4秒程度の遅れでとどまっていたが、ラスト2周でなんとか回復し、結局15'17"92でゴール。B標準を切っていたことはたぶん知らなかったと思うが、まあそれとは関係なく文句なく五輪内定。

微妙なのは15'25で2着の福士。5000m、10000mともにA標準は切っていてともに2着。このままだと両方内定決まってしまいそうだけど、どちらかに絞った方がよくないか?と思いつつ、3着の尾西とか4着の小林のようなレースを見せられると、まったく腹が立つ(まあ標準切ってないから選考はされないんだけど)し、かと言って下位に沈んだB標準突破の選手を連れていくのもなんだし、もう新谷1人で良くないか。

名大の鈴木は15'50で10位。すごいね、名大女子に1点挙げて、同点優勝ってことにしてあげたい(名阪戦団体)。

男子200m:

高平がガッチガチで直線伸びない中、同僚の高瀬が20"42の好タイムで優勝し、五輪内定。2着の中央大の飯塚も20"45でA標準突破。高平が伸びないというよりは、周りが非常にいい走りをしたっていうことか。

3着高平と4着斎藤の差は0"01だが、まさに五輪代表は紙一重、ということになりそうな結果。

女子200m:

抜群のスタートを切った福島に、市川が直線で一瞬迫るが、力んで離された。福島はやはり本調子ではないのか23"35にとどまる。

市川は知らん間に100mは予選落ちしていたのだとかで、200mは2着でも心底安堵しているようだった。

期待の和田は直線向くまで非常に良かったんだけど最後は6着。スタートもよかったし、カーブの走りもよかったので、4継にいかがですか。

大会を通じて、お客さんもまずまず入ったし、記録的にもまずまず、勝負でも盛り上がったうえで、実力者が五輪を完全に断たれるような大波乱も少なく、収穫の大きい大会となったのではなかろうか。ここをピークにするのではなく8月に照準を合わせている選手が多かったことも好材料だ。

短距離や投擲に話題をかっさらわれることのないよう、中長距離の選手たちの調整の成功を祈りたい。