第96回日本陸上選手権初日短観
今年の日本選手権は、ロンドン五輪の選手選考も兼ねて、大阪で開催。日本選手権として、また五輪選考会として、都合のいい方で解釈しながら観戦した初日の感想を少々。
女子円盤投:
引退を表明している室伏のラスト舞台で、薮本が最終試技で逆転して優勝。
ドラマチックというか、よく集中していた。ようやく室伏超えを果たして感無量。
男子400mH(予選):
今季限りの引退を表明していた為末が、一台目を引っ掛けて転倒。雨のせいかな、残念な幕切れ。それよりも同組だった成迫が脚を痛めており非常に痛々しい走りだった。そちらはほとんど触れられないが、追加情報が知りたい。twitterでは「アキレス腱は切れてない」とのことだが。
A標準突破者が3人、決勝に向けて勝負も楽しみだし、好記録も期待したい。特に大学勢。
男子3000mSC:
早めのスパートを仕掛けた山下が優勝。NTNからは1位、5位、12位と入り、三重県出身としては嬉しい限り。
しかし優勝タイムは、五輪B標準の8'32"00に届かず8'34'95。自己ベストを11秒更新した山下にとっては文句ない記録だけど、国内で数少ない参加標準未突破種目となってしまった。
男子棒高跳:
5m42で試技数も並んでいた山本と澤野がジャンプオフで決定戦を行った。澤野は競技中に脚を痛めたようで、山本は何度も決められるチャンスがあったが、ズルズルと5m17まで下がってようやく決着。雨でコンディションも悪い中、長時間にわたる競技で、集中は非常に難しかったのだろうけど、第一人者を目の前にしたチャンスをプレッシャーにしてしまった、これも経験の差かな。
しかし、日本選手権としてはもちろんしっかり順位付けしなきゃいけないことはわかる反面、世界大会の選考会としてはあまり実用的ではない。数少ない試技しかない可能性も高いのだし、競技開始時からトップレベルで能力が出せることを優先して決めないと、意味ないのではないかなあ。
こういう競技は選考会を別でやる方が、いいのかもなあ。少なくとも世界との差があるうちは。
男子ハンマー投:
室伏が18連覇。
強い雨が時折降りつけるなどサークルがテッカテカで、72m台の低調な記録にとどまったが、三回試技した後は他の選手が超えてこないことを悠々と見ながらパス。割と6回投げ切ってくる印象が強かった室伏だけど、気象条件も考えて無理せず、という判断が逆に体調を心配させる。「本番も雨かもしれないのでいい経験」というならますます投げるべきだっただろうし。
男子5000m:
B標準を突破している佐藤は10000m一本、同じく渡邊は欠場。B標準を狙ってガンガン飛ばしていく展開を期待したが、まさかの牽制。
竹澤は何がしたかったんだ、と思ったが、ラスト勝負を旭化成の出口が制して優勝。タイムは8'47台と、B標準(8'25)に遠く及ばず。ロンドンは渡邊が出るのかなあ。これで複数名連れてく意味もないだろうし、選考超難しい。
女子10000m:
過去エントリーでもたびたび書いているように、福士の落ち着きがないレース展開が嫌い。
でも日本人だけのレースで福士に引っ張らせて、追走だけする選手の多いことも苦々しく思ってる。
福士の後ろで楽しながら、ラストで置いていって勝った選手が、世界でもっとレベルの高いペースの上げ下げに全く対応できなかったのをもう何回も見てきた。
今回もそのコピーかのよう。
吉田の記録はもちろんA標準を突破しているのは事実。日本選手権を勝ったのも事実。でも、世界大会にこんな選手を送り込んでもどうしようもないことを、陸連はいい加減学ばなければ。一発決定で楽してんじゃないよ。
これは、吉田が悪いんじゃなくて、あんな展開でもなんでも勝てばいいと思ってるから、本番で通用しない戦術が得意な選手が勝つことになってしまう。それは「世界でラスト勝負したい」などと言ってしまった吉田にも気の毒。福士にも反省してほしいけどね。いったん下がってみろよ、とか展開にアクセントをつけてみろよ、とか思う。