阪神タイガース:2009シーズンを占う

さてタイガースから見たら歴史的な失速という2008シーズンだったが、北京五輪以降の国内の野球に対するしらけぶりと同様、僕自身も、どこが勝とうが負けようが、もはや大きな関心事ではなかった。読売が戦力的に図抜けているのは明らかだったし、勝ちまくりはじめても、特に違和感はなかった。セリーグに関しては最終成績も妥当なものだったように思う。

いずれにせよ、そのぐらい北京五輪の野球の代表チームの結果は衝撃的な酷いものだった。とはいえ、仮に五輪で好成績を挙げていたとしても、ペナントレースの行方には影響なかっただろう。他のチームのことは分からないが、タイガースはおそらく同じように失速して、クライマックスシリーズで同じように早々に敗退していただろう。

昨年の前半戦、岡田監督が打つ手にはさほどの根拠がない割に、不思議とズバズバと当たり、面白いように勝利を重ねていた。幸運が続いている一方で、選手の怪我での離脱が相次いだ。平野の離脱は特に大きかったが、いずれにせよ「采配の幸運」に「怪我」という不運でバランスが取れていた時期に、成績にあぐらをかいて首脳陣は明確に手を打てなかった。

采配の幸運が一年続くわけもなく、打つ手が全て裏目に出るようになった時期には、クリーンアップ、捕手、クローザーを五輪に供出。ニューヒーローも現れず(あるいは現れるような采配をせず)、五輪の成績に応じたように、参加した選手は軒並み調子を落とした。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、とはよくいったものである。たまたま勝ち続ける時期と負け続ける時期があっただけで、年間通せばこのぐらいの実力でしょう。ポストシーズンに球場使えないような日程組んでるくらいだから、本気度も疑われるというものだ。

というのが昨シーズンのレビュー。

今年はどうかな?北京五輪からWBCを経てもなお、胸躍るような高揚感は生まれてこないけど、甲子園のリニューアルも完了し、今季はシーズン中の五輪やW杯での中断もない。WBCのフィードバックはタイガースに限っては期待できないが、野球に関する世間の風向きは大きく変わった。

まずはチーム編成、投手陣から。

昨年加入の金村がまさかあそこまで苦しむとは思わなかった。リーグの違いか、タイガースというチームに苦しんだのか、いずれにせよ、同じことが新加入の久保にも起こりうる。とはいえ、怪我で先発転向に失敗した久保田とWBCで故障した岩田を欠く中では、先発の数が足りない。

左の下柳は年齢を考えて中6日で大事に回すしかない。そうすると、もう一人の左の能見にかかる期待が大きい。オープン戦は後半に猛アピールしたが、シーズン入ると失速するんだよなあ・・・過去にはローテを張っていたのだから、こなしてはくれるだろうが、柱とするには心許ないが、頼む。

右は、安藤が昨年も曲がりなりにも中心として一年やってくれた。オープン戦ではフラフラしているが、今年も安藤に期待するほかないメンバー構成。出遅れた福原は、開幕には間に合ったようだが、まずは数あわせだろうなあ・・・。

チャンスを生かせなかった上園と杉山は二軍スタートで、今当落線上なのは石川だろうか。この辺がどこまでやってくれるかによって、金村と久保への負担は変わってくるんだけど、現状では、久保の方が成績は残しているので五人目かな。

六人目が、石川とか金村とか、その他で回すということかね。

一応開幕メンバーで先発として名前が挙がるのは、この7人かな。岩田が戻ってくる6月頃までは相当厳しいだろう。

中継ぎ陣は、渡辺と阿部がまずは大事なつなぎ役になる。藤田(元太陽)や江草が、オープン戦ではそれぞれ7登板と相当使われてある程度結果を出したので、ここらは当確だろう。

あとは先発ローテからあふれた1人(石川か金村?)を加えて、回していけるんじゃないか。

最終的には、昨季途中での配置換えで生まれ変わったジェロム・レ・バンナ、ではなくてアッチソン、そしてウィリアムスを経由して、藤川へという流れが理想的。だが、ウィリアムスの衰えは隠せないし、藤川もずいぶん劣化してきている。できれば前監督のような固定&酷使はやめて、柔軟に対応してもらいたい。絶対的クローザーでなくても締められる試合はある。もうリーソップは失格ですか?

投手陣も心許ないが、打撃陣の方がはるかに深刻。とにかく打てずにオープン戦最下位に沈んだ。オープン戦の成績というよりも、打てなかったという結果と内容が良くない。

金本はスタメン二試合のみで、ついに守備にはつかず。手術明けの新井も故障でしばらく離脱してしまい調整に狂いが生じている。毎年一皮むけたと言われ続けている鳥谷は、タマネギのように少しずつ小さくなっていくというか。一プレーヤーとしては状態は悪くはないが、チームを引っ張ったり、流れを変えてくれるような活躍をしてくれる存在にはついになり得なかった。三番に座っても変わらずマイペースだろうし、それはもう良い。新外国人のメンチは、例によって外れのようだ。

これらを総合するに、当たり前だが、攻撃面で横綱野球ができるチームではない。やはり赤星、平野あたりがコツコツとやっていって、そつのない野球で点を取っていく、スモールな戦術しか可能性はなかろう。

新井の三塁へのコンバートで、今岡の復活の芽は断たれたといってもいいし、一塁の関本がつなぎ屋として、平野または藤本が二塁、鳥谷が遊撃で内野は決まり。

平野が外野に回るケースがあると言うことは、金本、赤星以外の外野陣が総倒れということなので、非常に良くない事態であることを意味している。

その三人目の外野だが、林はそこそこ調子も良いようだが、葛城の方が現状では上かな。桜井や浅井もまずは代打要員からチャンスをうかがうことになる。

ちょっとレベルの低い争いのような気もするが、いかんせん、連れてきた助っ人が外野スタメンを張れない状況ではチーム編成に狂いが生じるのも仕方がない。

スモールといっても、西武や読売のように組織的にできるだけの戦術もタレントもいるわけではない。相変わらず、主に個人能力ベースの点のスピードでしかない。赤星以外に平野、金本、鳥谷がどのくらい関われるか。

状況に応じた打撃など多くの選手が対応できるのだが、それを生かせる人がどれだけ塁にいられるか。首脳陣側の問題はクリアされたはずなので、今年は期待したい。

それより最大の問題は捕手。矢野が開幕不在で、復帰後も試合数と打撃面で多くは望めない。後進の育成を怠ってきたツケは、ついに今年払わされることになりそう。たとえ不出来でも狩野、岡崎、清水が試合に出続けることで成長するのを待つほかない。

野手の劣る面を、投手力で補いながらのシーズン。

希望的な面としては、広島の新球場誕生。タイガースのようなチームにとってはありがたいことだが、まだ東京ドームと神宮が残っているし横浜のボールは相変わらず飛ぶようだ。

順位は相対的なものだが、昨年同様一強五弱のセリーグ。Aクラスの当落線上をキープというのが精一杯かな。

クライマックスなど短期決戦の弱さは、監督が代わったことで何とか払拭して欲しい。そしてどうか最後まで、興味を引きつけて欲しいと願っている。