北京五輪・野球:金は本当に悲願だったのか?

 日本は野球で五輪チャンピオンになったことはない。日本のメンバー構成でもめたり、相手国の状態も色々だったり、大会ごとに騒がれはしたけどついに勝てなかった。

 それでも、なぜか毎回、金メダルを至上命題とされ、「金しかない」とか追い込んでしまう。今回もまるでナンバーワンかのように振る舞って、大会に臨んでしまった。もちろんWBC優勝による期待感もあるだろうが、あれは、メジャー選手も国内リーグも全面バックアップの大会。五輪は結局、国内選手だけで、しかもその中でもベストメンバーを組めなかった。

それはしかたない。その程度の、望みだったのだ。ただ、先発投手を二人も提供してくれたソフトバンクには、特に感謝しなきゃいけないと、個人的には思う。

 

 四勝五敗で四位と結果を受けて、これが日本の野球の力でしょ、とやってしまうのが筋だし、スポーツなんだから結果で評価されるのは当たり前。なでしこジャパンが二勝三敗一分けで四位だったのと同様、戦績と結果が比例している。WBCソフトボールの金メダルが、どちらかというと戦績にそぐわず結果を得たと言える(もちろんルールがあった上で戦略立てるのだから、立派な成績だが)。

 監督の投手交代に関する采配について、かまびすしいが、その点はもう明らか。我慢できずに先発投手を変えるのは多用すれば士気にひびくし、不調の岩瀬を「方程式」だといってこだわったのも疑問。でもそれだけじゃなくて、日本の野球を応援してきた人たちが、情けないのは、日本がつまらない野球を披露したこと

別に豪打でないからつまらない、なんてことではない。貧打はもちろんつまらない要因にはなるが、それがすべてではない。だいたいスモールベースボールはどうした?効率よく点を取っていくんじゃなかったのか?

高校野球バリに初回から送りバント(予選キューバ戦の初回無死一二塁、アメリカ戦初回無死一塁、準決勝韓国戦無死二塁)というのも士気をそこねるが、走りもせずに牽制だけ誘う走者、セーフティ狙いでファール、執拗にコーチがマウンドへ向かい、頻繁なイニング途中での投手交代。なんだか、チーム全体が「やってますよ」的なポーズを見せることにこだわりすぎて、試合のリズムを自ら手放したようでならない。

こうしたことは、我々が当たり前のように日本の野球の一部として、見てきたし、誇りに思っていたもの。おそらく、はじめて野球を見た人が、野球というゲームはなんて退屈なんだ、と思うのは無理もない。他の競技ではあり得ないような、スピード感や迫力を無視した戦略。

すべて、勝ちにこだわったためであり、結果を出せば、「なるほど、野球は奥が深いな」、と思う人もでてきたことだろうが。競技進行で内面的な部分が占める割合の大きさを見せておいて、凡退、そして敗退。ポーズではなく、本当に相手の隙をついていく野球ができれば、決してスピード不足にも迫力不足にもならなかったはずだが。

日本の試合を見た人は、野球という競技が、世界には普及していかないな、と多くの人が思ったことだろう。たぶんIOC会長も。

それにしても、エラーとして記録に残る後逸や落球だけでなく、ことごとく日本野球はチョンボをしたし、あるいは作戦としての動きが少なかった。あきらかに力の劣ったオランダ、中国を除いて、試合の内容を具体的に見て、攻撃面での課題を考えてみたい。

盗塁は極端に少なかった。台湾戦で青木と西岡が成功させただけ。まともなクイックができない投手に対してさえ、ランナーはポーズだけで走ってこない、それがばれて走者はプレッシャーをかけることができずじまい、相手にされなかった。

無死のランナーを生かせないケースも多かった。併殺はかなり二塁走者が厳しくいっていたこともあり少なかった(キューバ戦七回無死のみ)が、併殺を免れただけで結局生かせなかった。動かずに後ろが三人で凡退(キューバ九回、カナダ二回、準決勝韓国六回)、バントの失敗(キューバ戦四回無死)。など、再三の無死走者を生かせなかった。

キューバ戦の得点が二点とも犠牲フライ(青木と新井)からだったので、目立たないけど、その後は犠牲フライ一本がなかなか出なかった(初戦キューバの初回一死二三塁、韓国九回無死二三塁、カナダ九回無死三塁)。

エンドランは何回決まった?試みたのも少ないが、アメリカ戦の五回の失敗も含めて、オランダ、中国相手を除くと、結局ゼロかしら?

結局、オランダ、中国以外の相手から挙げた18点の得点のうち、ホームランが8点、タイムリーヒットが5点(うち台湾戦が4点)、タイムリーエラーが1点、併殺崩れの間が2点、犠飛が2点。得点の少なさは目をつぶるとしても、内訳だけ見たって、こんな野球をめざして選手選考していなかったのは一目瞭然だ。

機動力や小技という点では川崎、西岡が万全であれば青木との三人でかき回すシーンが見られたのだろうか?でも、控えにはまだ荒木がいたが、結局ベンチはこれといった策もなく、バント指示だった。GG佐藤の守備が特にトーナメントでは致命的となったが、あれだって、森野が好調であればレフトの守備に着くことはなかったろうし、あるいは村田が不調でなければ森野がサードに回ることもなかっただろう。GG佐藤の守備力を期待してはいなかったはずだから、やはり選考に問題があったといわざるを得ない。

他の競技同様、故障や体調不良を抱えた選手で勝ち抜けるほど、甘い大会ではなかった。そういうことだ。

すべての面をひっくるめて、金メダルは状況的に悲願だったように感じられたが、実際は、悲願といえるほどの準備をしてこなかった。といえるだろう。

ところで、試合中、大あくびを何度もしていた村田は、なんだかものすごい重病のように感じたのだが・・・大丈夫なんだろうか。