2007日本シリーズ第一戦 日本ハムvs中日:「エース」タルもの

中日の日本ハムに対する対戦成績は、昨年の交流戦で2勝4敗、昨年の日本シリーズで1勝4敗、今年の交流戦で1勝3敗。相性は悪い。

しかし、昨年の日本シリーズでの1勝、今年の交流戦での1勝を挙げたのは、いずれも川上である。相手投手は同じダルビッシュ。つまり、川上一人、気を吐いている、という構図でとらえることも可能である。

しかも、エース。

日本シリーズの初戦で登板してくるのは、セオリーである。

ただ、気になる点は、川上の対日本ハム成績は、緩やかに下降気味である。

昨年の交流戦では勝てなかったが9回1失点(延長で岩瀬が打たれサヨナラ負け)、日本シリーズでは8回2失点、今年の交流戦は6回1/3で2失点、である。

さらに、今年の川上はついに完投が一度もなかった。エースとは数字だけで判断するものではなく、精神的な主柱である部分もあるが、とはいえ朝倉・中田がそれぞれ3完投し、投球回数でも遅れをとっている。また、ローテ投手の中でも、小笠原や山井にも防御率で後れを取っている。

果たして、今年の川上はエースとしての働きを、フィールドで見せたと言えるだろうか。

否、大事な試合で、確実にチームを勝利に導くのが、真のエースだ。

だとすれば、日本シリーズの第一戦は、まさに「エース」の矜恃を示すその場所だ。

一方のダルビッシュはどうか。

中日相手には、昨年の交流戦で6回1/3で2失点(自責は0)、日本シリーズは6回3失点、今年の交流戦は3失点完投負け

相性は良くないが、内容的には少しずつ良くなっていると、言えなくもない。

さらに、今年のダルビッシュは、昨年の「若さが出た」と批判された彼ではない。

12完投、200投球回、防御率1.82。

昨年は両輪、あるいは三本柱と呼ばれていたが、今年は「大エース」である。

ただ、中日相手には、いずれも序盤に失点をして、チームを敗戦に導いてしまった。

痛恨の失点、エースならやってはいけない、という点を与えてきた、といえる。

「相手の良い部分を壊し、悪い部分を引き出すのが、プロのやり方(土井氏)」という王道の最たるチームである中日(誉め言葉です、念のため)相手に、今日も心を乱されるか、否か。

ポイントは、唯一の弱点、四死球(シーズン62個)で出したランナーをどう扱うか。

結果として、試合は、動きの少ない緊迫した投手戦となり、序盤の得点が大きく試合を支配した。

ただ、試合開始直後に、その「痛恨の失点」を喫したのは、川上の方だった。

それも、四球でためたランナー二人を置いて、セギノールの3ラン。

1点とれるかどうかのレベルの投手戦に置いて、この失点は試合を決めてしまうものだ。

特に短期決戦では、心を砕く、ファイティングポーズを崩す、価値のある得点といえる。

クライマックスシリーズでも、そうだった。

成瀬とダルビッシュの投げ合い(になりそうだった)をぶっ壊したのも、セギノールの3ランだった。

ただ、ダメージとしてはセ・リーグの第一ステージで下柳(投手戦は期待していなかったが)が10球投げないうちに、エラー、盗塁(荒木)、タイムリー(森野)、ホームラン(ウッズ)、と3点失ったのと同じような、でばなのくじかれ方である。

その後川上は8回に安打を許しただけで、残りのイニングをパーフェクトに抑えた。

そのことは、明日以降の試合で、再び中日がファイティングポーズを取るためには、重要な要素だったといえる。

しかし、この試合のダルビッシュの余裕を奪うものではなかった。まさにスイスイと投げられてしまった。試合の見せ場は6回の中日の上手い走塁を絡めた攻撃だったかもしれないが、いかんせん3点差をひっくり返せるような場面ではなかった。

今シーズンも威嚇と挑発を繰り返して、苦手のインコースを投げさせずに、コースと球種を絞って狙う、ウッズに対して、ダルビッシュはほぼ完璧な投球を見せた。特にその6回のシーンでは、スライダーで見事な併殺、それ以外の打席はストライクコースの直球で空振り三振、と手玉に取った。

試合前、ダルビッシュに対して懸念されたこと(四球・序盤の失点)は、川上に当てはまってしまった。

川上はついに今季初完投で意地を見せたが、ダルビッシュは14回目の完投(シーズン12+ポストシーズン2)で、まさに、エースとしての力の違いを見せつけた、初戦であった。