世界陸上2007大阪 女子マラソン

大会開催中の一週間で、一気に気温が下がり、過ごしやすくなった。男子マラソンのスタート時とは打って変わった、女子マラソンのスタートコンディション。好記録、とは言わないが、ペースは速めで推移してもおかしくなさそう。

レース予想は、周が積極的に出て行けば、おそらく文句なく優勝。ただし速いけどレースぶりはうまくなさそうなので、もたもたすると日本人選手にもチャンスか。特に、原がぴったりくっついていけば、転がり込んでくるかも。レース巧者という意味では、シモンやヌデレバは一日の長があるが。土佐は何とか持ち前の粘りで下位から上位入賞を目指して欲しい。

どちらかというと涼しいコンディションにもかかわらず、その後の気温上昇を畏れてか、それともスローのレースしかシミュレーションしてこなかったか、5km18分30秒という入りのペース。大集団でなかよく進行。18分ペースで推移。一応トップをひっぱるのは、土佐と原。コースを知ってる日本人に先を行かせれば、何の問題もなく楽に行ける。あまりにも集団が大きいからか、ヌデレバを中心に少し離れた第二集団も形成される。

御堂筋に入っても第二集団まであわせて30人ほどの大集団は形成されたまま。これは、折り返してからの細い道が走りにくいぞ。集団が少し縦長になって、絞り込むには格好の条件だが、中間点・ハーフを過ぎてもその気配はなし。

23kmあたりの給水直後に原が脇腹を押さえる。あれ、なんかひねった?飲んで急に腹痛って。気づかなかったが、何回か抑えていたんだろうか。そして、そのまま、集団から最初に遅れる日本人となってしまう。おいおい、期待してたのに。

25kmを過ぎて、やっとペースが17分台まで上がり出す。縦長になり、ポロポロと人が減っていく。橋本、小崎もここで脱落。ヤマウチが積極的に前に出たかと思ったが、数キロで脱落。

30kmを過ぎると、ようやく集団は8人に。ケニア3人、中国2人、日本2人(土佐・嶋原)そしてシモン。なんてバランス、というより、チームランニングか。ヌデレバ、周はかなり同僚に気を配って走っている。

35kmの給水で、ケニア勢がいっせいに給水をミスする。完全にストップしたので、これはチャンス、と思ったのだが、誰も動かず。ヌデレバは悠々と復帰。ここで、脚を使わせることができたら、後半の展開は変わったのだが。

ケニアが一人遅れたが、残ったシティエネイがペースアップ。ヌデレバが上げろと指示していた、と解説の増田さんが言っていたが本当か。

しかし、そのペースアップに、シモンと嶋原がつけず、先頭はとうとう5人に。ただ、シモンだけに、つけなかったのか、つかなかったのか、判別できない。

40kmを前にして、まず土佐が遅れる。やや離れてシティエネイも遅れてきたのが、土佐の気力を繋いだともいえるか。先頭に残った3人はなかなか離れないが、でもヌデレバ、周はともかく、朱は抜かないと。土佐、崩れたフォームで、苦しそうな顔(これは最初からか)ながら、粘りの力走。サングラスをしてはいるが、鬼気迫るオーラが出ている。そして公園周回道路に入って朱を捉える。

待てよ、この展開は、数日前にも見たような。そう男子マラソンの尾方のレースが頭をよぎる。怖いのは後ろにいる・・・げ、シモンか。シモンはどこ?、だが、さすがに国際映像、そうそう映してくれない。

トップのヌデレバは周を5秒ほど離してはいるが、まだ勝負は決していないわからない。周と土佐の差は「みるみる縮まって5秒」とかテレビは叫んでいるが、そこまでは行ってない。残り距離とスプリント力を考えると、最後までこの順位かな。周はどうも脚も腎臓も良くないようだが、走りは衰えてはいない。

競技場に入って、それぞれの差が少しずつ開く。最後は気温も30℃まで上がり、消耗は激しい。瀬古スパートは出ない。

ヌデレバが2時間30分37秒で優勝、周が8秒差で二位、土佐は10秒差の三位となった。多くの観客が詰めかけ大声援を送った。北京の内定とかそんなのはどうでも良い。日本チームのムードは後半良くなりつつあったが、やはりメダルがあると評価も違うものだ。いわれのないバッシングも多少はやわらぎ、今大会に臨んだ選手たちの努力が、わずかでも報われるのではないか。

日本選手は、嶋原が大健闘といえる6位。トップと1分差以内でゴールという点も評価したい。原は残念なことに18位。体調が良くなかったようだが、それはそれ、万全の体調で臨んだ選手がほとんどいなかったのだから、粘って欲しかったなあ。

最後に全体的な完走。記録との乖離を見ても、男子のレースより涼しかったのに、記録の乖離は高い。ちょっとレースレベルが低かったのではないか?今大会は気象条件も良くないし有力選手が少なかったとはいえ、もう少し勇気を持ったレースぶりを期待したかった。そうでないと、今日のようなレースでは、順当な人が勝っていってしまう。アクシデントを引き起こすようなインパクトを、特に優勝候補ではない選手たちに期待したかったなあ、と。

ま、でも、日本・日本マラソンによっては、よかった。