世界陸上大阪2007 第六日:「積極的」と「逆転」で醍醐味を堪能

第四日の記事が飛んでしまったがそれはさておき。

自由席での観戦。また棒高跳び走り幅跳びのピットに近い方で見ようかと悩むが、気分を変えようとバックスタンドでゴールラインのよく見えるところに陣取る。外国人と、マスターズ関係の年配の方が比較的多い。

男子棒高跳び予選

棒高跳びのピットを避けたのは、澤野の予選はすぐ通って終わるだろうから、と言う理由だったが、最悪の形で予想は外れた。

5m55を二回失敗、パスして臨んだ65も失敗で記録なし。オフィシャルでメダルに近いとされた日本人はマラソン抜きで、室伏、為末、澤野だったのだが、登場順にどんどん悪くなっている。

脚がつるのは澤野ははじめてではないから、単に調整に問題があるとは一概に片付けられないが、これだけ体調が整わないでチームが大会に臨んでいるのだから、何とかケアしないと。力を出せずに負けるというのは、能力が低くて負けるよりも、初歩的で致命的な低レベルのミスだと認識すべきだ。

女子400mH決勝

あまり興味を持ってみてはいなかったのだが、世界記録保持者のロシアのペチョンキナが出ており、記録でないかな、ぐらいの気持ちでみていた。レースはオーストラリアのローリンソンが小気味よく前半積極的にとばす。ペチョンキナはバックストレートで少し力を入れてペースを上げ、三コーナーで早くも二人のマッチレース。

男子のレースから女子の予選まで、繰り返し「400mHは途中でペースアップしたらかならずダウンするからだめなんです、為末と同じミスです」との解説を聞いてきて、刷り込まれている。ああロシア大丈夫かなあと思っていたが、直線向いてから差が開く。

しかしペチョンキナの失速と言うよりは、ローリンソンが伸びている(落ちない)というか力強くてリズムが崩れない、非常にバランスがいいままゴールに飛び込んだ。なんでも昨冬に出産したばかりとのこと。おそれいります。精神的な強さと言うか、経験値というのは、競技から得られるものばかりではない。陸上も人生の一部、強い人生を送れるかどうか、だ。

男子走り幅跳び

正直選手を知らないので、真っ白な気持ちで観戦。パナマ人が世界ランク1位かー、お、8m30ってすげーな。という子供じみた観戦で澤野ショックの心を洗おう。東京の世界陸上でパウエルとルイスが世界記録で逆転劇をやってたな。当時高三だった僕は感動してテレビの前で泣いてしまった。あれぐらいドラマチックだったら、情報なしでも感動できるよなー。

競技はそのパナマのサラディノが、三回目に8m46をとんでトップに。試技のはじめは風も良かったので記録も伸びたが、エイトになってからは、順位の変動もほとんどなくなった。このまま終わりかなーと思っていたが、世界の舞台に臨む選手たちの集中力を見くびってました。

六回目イタリアのハウ8m47を跳んでトップに。いや、すげー跳んだ。その前のアメリカのフィリップスもすごい跳んだように見えたが、踏み切りを相当余らせたらしくて、記録は伸びていなかった。そう、助走路の後ろ目から見ていると、跳んだ距離が長いかどうかはわかるが、砂場でどの位置に落ちたかが判断できない。モニター見れば良いんだが、つい跳んでいる方をみてしまう。でも、ハウはすごかった。実際1cm差なのだから、トップに出たかどうかは計測を待たないと分からないのだが、とにかく絶叫、吠えまくって歓喜していた。この歓喜が僕は好きだ。勝った負けたの歓喜ではなくて、自分の力を出せたことの歓喜。力を出すためにトレーニングして、調整して、集中して競技をして、最後に力を発揮できた歓喜

しかし、それだけでは終わらなかった。最終跳躍となったサラディノは、これまた大ジャンプを披露。結果が出る前から、サラディノは歓喜し、ハウは素直に拍手で讃えていた。8m57という好記録で再逆転の優勝。いやー、興奮したわ。

男子800m予選

一組目のトップが1分46秒フラットと、非常にはやいタイムでの決着だったのを皮切りに、後続の組も全てハイペースの予選となり、見応え十分だった。とはいえ、今シーズンタイムで1分44秒を切っている選手たち、一位の南アフリカのムラウジから、出場していないウェッブをのぞき、三位のカメル、四位のラルー、五位のリードまで、各組で1位で通過しているのはさすがだった。

ところで、5組に登場した横田選手は、なかなか積極的な走りで会場を沸かせてくれた。まあおそらく多くの人は、通過できるとは思っていなかっただろうけれど、中盤までの奮闘と、後半粘って7位でフィニッシュしたことが、見ていて非常に気持ちの良いレースだった。結果的にも、この組の5着までプラスで拾われて準決に進んだので惜しいところまで、レースを作れたともいえる。

そして、どのくらいの人が気づいたのかしれないが、1秒以上更新する自己ベスト!これはすごい。本当に嬉しかった。800mは、僕と同期のスーパー陸上選手だった小野選手の記録が残っている。ぜひ更新してほしいものだ。場内の解説の人は、福士みたいにアフリカ行ってこいって言ってたけど。

男子5000m予選

ランクトップのベケレとシヒネが欠場。

一組目はスウェーデンのショークビストが独走して逃げ切りをはかるが、4000mまで後ろで遊んでいた集団が、あっさりと抜き去ってスプリントレース。ベケレ弟と、エスパーニャというスペイン人(日本人なら「大和」か?)、ラガトなどが通過。ショークビストは35歳。なんていうか、味のある良いレースぶりだった。日本の三津谷は、たれたショークビストさえ抜けずに、14分台。

二組目は逆に非常に目まぐるしく構成が入れ替わりつつペースは安定したレース。日本の松宮兄が4000mのラップをゲットするが、それに怒ったキプチョゲ以下の集団が一斉にペースアップ。一周持たずに松宮は撃沈。短命だった。レースはキプチョゲが貫禄の一位通過。

5000mはもはや日本人の距離じゃないことは分かっているので、まあ仕方ない。今一番おもしろいのは5000mじゃないかな、と思うので、決勝が楽しみだ。