ガンバ大阪2017シーズン展望(1)

まずはじめに2016シーズンの総括から。

ガンバ大阪の長期的なミッションとして考えられるポイント毎に整理しながら総括したいと思います。

運営面ではまず(1)新スタジアムの稼働。

吹田市立サッカースタジアムが完成し、指定管理者としての業務が始まりました。これははじめての経験でもあり、運営を軌道に乗せるまでには慎重な舵取りが求められます。

2016年は主催試合38試合で56万6107人のお客さんに来ていただけたほか、代表戦、クラブワールドカップ天皇杯決勝を開催しました。「新スタバブル」がはじけるであろう今シーズン移行に向けて、安定状態に軟着陸していくことを考えなくてはいけませんが、初年度としては十分な成果を得られたのではないかと思います。

ついで(2)セカンドチームの運営。

ガンバ大阪U23を組織し、J3リーグに参戦しました。これは、アカデミーに優秀な人材が育つ土壌があり、かつトップチームとの選手とのレベル差が大きいガンバ大阪にとって、ローン移籍以外の選択肢を有するという点でポジティブな判断だったと思います。とはいえ初年度はU23の選手層自体が薄く、いわゆるオーバーエイジの選手がほぼ専業のような形でU23に参加していたことについては、ある種の批判を受けました。たとえば小椋や二川などをそのような立場に置いてしまったのは、マネジメント的には褒められたことではありません。ですが、スポーツ面で言えば、彼らが競争力を失ってしまった(という評価を下された)ことは事実ですし、そこには競争に勝ってトップでプレーした選手の存在があります。感情面での想いはありますが、彼らのような一流のプロに同情はむしろ失礼でしょう。

それよりも、多くの若手選手にとって、ステップアップリーグとは違う緊張感、あるいは体格差なども感じながらプレーの場を得られたことは、大きかったと思います。2017シーズンからは、U23をトップの調整の場としては活用しないという方針のようです。選手も増えましたし、昨年以上に安定して運営が期待できるのではないかと思います。今年は吹田Sでの開催が増えるというのも、プラスに考えたいと思います。

スポーツ面では(3)遠藤選手への依存度の削減。

これについては、非常に重要なテーマではありますが、セカンドチームでの問題と同様、競争によって決められるべきものです。とはいえ、昨季で36歳、今季は37歳にもなる遠藤さんですので、怪我や疲労に対する回復度や、90分でのパフォーマンスを考えても、プレー時間は限定されるべきでしょうし、持続可能なプレースタイルを模索していく必要があります。とはいえ、それは意図的で劇的な変化ではなく、緩やかな移行であるべきで、長谷川監督にはこのミッションを仕上げてから退任していただきたい、と個人的には考えています。

遠藤選手が100%の状態であれば、試合開始の時点で彼を上回る能力を発揮できる選手はまだまだ少ないかもしれませんが、たとえば75分になれば彼よりもピッチで求められる仕事ができる選手は増えると思います。

トップチームが参加した4コンペティションのプレー時間を比較した下図を見ると、遠藤選手の出場時間は依然としてトップですが、総プレー時間4600分の90%を切るところまでプレー時間は減少しています。長期の離脱がなかったこともあり、総プレー時間は多くなっていますが、出場試合あたりのプレー時間はフィールドプレーヤーで5番目というところまで下がってきています。つまり、昨季も遠藤選手への依存度は緩やかに減らすことはできたし、おそらく2017シーズンもその気配でいくでしょう。

(4)生え抜き指導者層の育成

2016シーズンは宮本さんがユースの監督に、實好さんがU23の監督にそれぞれ就任しました。また、強化部などのスタッフとして多くのOBが入社しました。上述のようにいくつものプロジェクトが誕生し、シンプルに社員さんの数が必要な状況でもありましたが、ここから多くの方が指導者を目指していって欲しいと考えています。今季からは宮本さんがU23監督に、山口智さんがヘッドコーチに就任しましたが、今後も一人でも多くのOB(現スタッフに限らず)がS級を取得できるようサポートしていって欲しいと思います。

こうした中で2016シーズンは年間勝点58(1st:24、2nd:34)の4位でした。もちろん満足な結果ではないけれども、長期的なガンバ大阪のミッションを達成する上で、予算・時間および人的なリソースがある程度割かれたことを考慮すれば、ある程度許容しなければいけない成績だったかと思います。

短期的、というか特に昨シーズンの問題として特に強調しなくてはいけないのは、(5)開幕当初のホームでの勝率の悪さです。

素晴らしいスタジアムで、お客さんもたくさん入るようになりましたが、皮肉にも万博記念競技場時代のようなホームアドバンテージを得るには時間がかかりました。気分的に慣れるまでは、相手チームにとってもガンバにとってもフレッシュで、テンションも上がり、なんとなくイーブンな状態だったようにも思えます。芝の養生のために長めにカットされていたことも、ガンバのスタイルとは合わなかったのかもしれませんが、考えなしに水をまいて、ガンバの選手ばかりがツルツル滑るのを見るのは閉口しました。

これはチーム状態の方も大きいのかもしれませんが、1stステージはホーム9試合で勝点11(平均1.2)にとどまったのに対して、2nsステージでは8試合で勝点17(平均2.1)を得ています。この差は大きいです。少しずつホームの利が結果に直結するようになってきたんだとしたら嬉しいことです。

また(6)いびつな選手編成、に監督が苦心したことが窺えます。

宇佐美選手の移籍が夏にずれ込んだことで、春には様々なオプションを試すこととなりました。サイドの運動量不足は改善せず、それをサポートする選手の負担が増え、それが戦術的な選択肢を狭める・・・という悪循環に陥ったことは否定できません。アデミウソンのフィット後の活躍を見るにつけ、彼のプレー時間を延ばせなかったことは残念でした。一方で、監督自らが望んで獲得した(と想像される)藤本選手のサイド起用は先発・交代出場いずれもなかなか機能していないようにみえましたが、ひたすらこだわり続けました。戦術理解とか指示の浸透とか選択の優先度が高まるにはいろいろ理由があるとは思いますが、シーズン終盤のように・・・・的な起用で持ち味を活かせるようになったのを見るにつけ、チャレンジに費やした時間が惜しまれます。

一方で、(7)井手口選手を我慢して起用しつづけたことで、チームの中心を担える選手へと成長してきたことは、長谷川監督の功績といえるでしょう。2015には危ない突貫小僧だったのが理性的な突貫小僧になりましたが、戦術をしっかり叩き込まれていないのは気がかりです。ボールに釣られてポジションをほっぽり出してしまう熱さと、ポジショニングばかり気にしてピッチに杭を打ってしまう時が両極端ではなく、うまく機を見ることができれば素晴らしいですし、それを活かせる新システムなのかな、という期待はしています。

長くなったので続きは後編で。