2012/3/31 ガンバ大阪vs新潟 「底辺での勝点の取り合いもまたサッカーの一部」

この試合はテレビ観戦。

ついにというかあっという間にというか監督以下スタッフ交代に及んだガンバ大阪。確固たる信念があってやり方を変えるなら、勝ち点を失ってもそれを貫けば良かったものを、焦ってキャンプからやってきた決め事を自ら捨てたり、ひたすら精神論を唱えて練習中は何度も中断、などということであればこれ以上の継続は不可能だという判断はやむを得ない。

長期的視点では、チームが主体的に生まれ変わるチャンスを逸してしまったのかもしれないが、状況的には全敗(未勝利、ではなく)という危機的な状況下で外部要因で、しかも生え抜きの松波監督で生まれ変わる好機を得たのだととらえよう。

で、この試合は同じ全敗同士の新潟でのアウェイ戦。オレンジアレルギーのガンバにとって、昨年も優勝を逃す決定的な試合(2-2ドロー)となった場でもある。仮にチーム状態が良くってもポジティブには迎えられない。

監督は替わっても、今季いいところなしの藤ヶ谷が先発。パウリーニョが怪我で遠征不帯同ということで、二列目は倉田と二川。また怪我の明神をベンチに置いて武井の先発と、新監督のエッセンスというよりは緊急対応的に選んだメンバーともいえる。

5分、中澤が強引に止めてカード、与えたFKを新潟のアランミネイロがゴールに向かって一直線のFK。誰も触らず、藤ヶ谷も動かず、ゴールイン。今節も開始早々あっさりと失点で、追いかける展開に。

相変わらずのセットプレーの失点ではあるが、少なくとも人には対応できていたし、謎のスカスカゾーン守備からは脱却した模様。

リードした新潟は基本的には素早くブロックを作って守備、で人数をかけずにカウンター。守備に追われることなく対応できるはずの加地がマイボールの対応をしばしば誤ってしまい、結果的にファウルでセットプレーを与える悪循環。今のチームにとっては、セットプレーこそが最大の失点機会であることはベテランなら理解してほしい。10分のFK、CK、17分の連続CKなどは藤ヶ谷のセーブと、ポストに助けられたが、パスミスと緩慢な守備のガンバに、新潟は少ない人数と手数で効率的にゴールに迫り続け、この時間帯は、同じ全敗同士でもチーム状態には差があると思わざるを得なかった。

特にアランミネイロはスピードもあって、パスもいちいち気が利いていて、かつゴールに直線的に向かってくる、新潟の攻撃の核となっていた。また藤ヶ谷は至近距離のシュートをたびたび反応よくセーブする反面、味方がクリアしたボールが目の前を横切っても頑としてゴールラインから動こうとせず、CKを与えるなど、相変わらずボールとの距離感とかタイミングに圧倒的な問題があると感じずにいられなかった。

攻撃面では、藤春の縦突破の制限はいよいよ本格的に解除されたようで、相手の守備も対応に苦慮しているように見える。相手のブロックを崩す10分にはCKも獲得したし、20分にはエリアで倒されてPKを獲得。藤春とスンヨル、藤春と倉田、藤春と二川、と誰とのコンビでも効果的にアタッキングサードで優位性を作れるのは藤春の良いところ。一方でブロックを崩すにはもう一人、二人と絡んでいかないと行けないがそこまでの有機性が見られない中で、個人の力でゴールを得たのは幸運と言える。PKはラフィーニャが決めて1-1の同点。

30分、倉田が倒されて得たエリア角からのFKは、相変わらず不調の遠藤が可能性を感じさせない高いボールを蹴り出すに過ぎない。33分には藤春が左からクロス、いったんはじかれるがセカンドボールがラフィーニャに回り、強引なシュート。ブロックされたボールは藤春がダイレクトにシュートで終える。ゴチャゴチャするだけでシュートもできなかった前節までよりは遙かにマシだ。

とはいえこの試合も、ラフィーニャには二人・三人と人が付いていて、ボールを収めるのは不可能。スキップして組み立てるのが効果的なのだが、これまでは引きつければいいものを無理にボール交換に絡んできて、失うか倒されてアピール、でカウンターを食っていた。

しかし徐々に、引きつけて倉田とスンヨルで縦に浸入したり、倉田が藤春を縦に走らせるフィードでチャンスを得たりする中で、ラフィーニャへのマークが甘くなって、カウンターで抜け出せる場面も出てきたり、フリー気味で受けられるようになってきた。飛ばして入った新潟の疲れも出てきた面もあるが、比較的良い攻撃の形を見せている中で前半終了。

両チーム状態が良くないなかで、新潟が圧倒した時間帯を幸運にも一点で切り抜けられた、という前半。

後半は松波監督の選手交代が減速要因となるかそれともチームにスイッチを入れることができるのか、が見どころだった。

HTにガンバ守備の弱点を再徹底したか、後半開始早々チャンスをつかむ新潟。ロングボール、大きなサイドチェンジ、GKとDFの間、など狙われて冷や冷やするがゴールは割られず。カウンターにも藤春は時間をかけさせて数的不利のままゴール前に持って行かせないなど、良い守備をした。

ガンバも新潟のブロックが形成される前に、と遠藤や倉田起点でショートカウンターを何度か試みたが、どうしてもスンヨルがつないで、フィニッシャーがラフィーニャになってしまい、素早いシュートまでもっていけず潰される。それならばと、武井と倉田のコンビから二川、スンヨルへと配球して崩してのシュートや、ラフィーニャが潰れ役となっての二川・遠藤のミドルレンジからのシュートなど、多彩な攻撃を見せる。

かなり可能性は感じるし、得点の可能性は高そう。遠藤、二川、倉田が連動するとブロックを崩すことも容易。

ガンバが人数をかけて攻める時間帯が続き、新潟がたびたび攻撃に転じた際には、大きなピンチとなるが、持ち込んだブルーノロペスがダイブで逸機してくれたり、密集で今野がさばいてくれたり、と失点せずにやり過ごした。

20分にはスンヨルに代えて横谷投入。西野元監督の時も度々あったが横谷はトップに。左サイド偏重だった攻撃が、右サイドでも起点ができて相手ゴールに迫る。

さらに25分に二川に代えて明神を投入。セホーン前監督と同じく二川が早めの交代対象となるのは、運動量と相手が慣れてきた部分をどう変化つけるか、ということなんだろうか。明神投入で遠藤が上がり、武井は明神とダブルボランチ、というより、ペアで一方が残ってどちらかが攻撃参加。

ゴールが奪えない状況で、徐々に体力が落ちて消える時間帯の多くなってきた倉田に代わって佐々木を投入。もっと相手に混乱を呼びたかったが、相手の固い守備に対して、残念ながらそこまでの状況は作れなかった。

今野のスライディング空振りでピンチを招いたり、自陣ゴール前でもたもたしてる間にピンチを招いたり、相変わらずなところもあったが、明神のボール奪取、矢野のドンピシャヘッドを藤ヶ谷がファインセーブなど、何とかしのぎきって試合終了。

長時間ボールは保持して相手を陣内に閉じ込め続けたが、ラフィーニャが蓋になってしまったし、うまくラフィーニャを迂回してゴールに向かうアイデアはいくつかあったが、ゴールを生むのに充分ではなかった。

それでも攻め続けて守備機会を減らすガンバのプリンシパルを思い出し、新監督で勝点1を得たのは非常に大きい。優勝狙うなら1/70だけど、今は残留に向けて1/38の大事な「1」を苦手新潟でセーブできたことに満足しよう。

採点

藤ヶ谷:ゴールラインに張り付きピンチを招くこともしばしば。不安定さはスーパーセーブと相殺。ピンチの芽を摘む守備が一番なんだぜ。失点シーンはもう少し反応してほしかった。とはいえ今季一番の出来。できました

加地:攻撃の起点は作れず、ミスでピンチ招いた。衰え実感。もう少し

今野:パス交換の弱点とみられてプレスかけられて何度も慌てた。ヤットばりのアリバイスライディングでピンチも。密集でのかきだし以外目立った点なし。もう少し

中澤:つなぐ拠点としては落ち着いていたが、FKのゴールチャンスは感じなかった。てか攻撃よりも守備。さすがに追走アピールはなかったが、裏をぶっちぎられて背筋を凍らされた。できました

藤春:突破解禁で左サイド制圧。唯一の得点も演出。守備でも走力でたびたびカウンターの芽を摘んだ。よくできました

武井:守備的でも攻撃的でも良い場面に顔を出して、テンポを高める役割を果たした。得点につながらなかったことまでは責められまい。よくできました

遠藤:多少は動きがマシになってはきたが、セットプレーの希望のなさとか、簡単なボールロストとか、どちらかというと常に危険要因だった。回復はまだ遠い。もう少し

二川:司令塔としては申し分ないと思う反面、相手のブロックを打開するためにはもっとゴールへの意識を高めて欲しかった。点とり屋ではないけど、チームで取っていかなきゃ行けない状況で、FWへの遠慮があったとしたら残念。できました

倉田:先発起用に答えて、充分な存在感を見せつけた。アタッカーとしての脅威を示したし、ゴールに繋がってもおかしくないプレーは何度もあった。結果を早く出したい。よくできました

スンヨル:独善的な相方との2トップが機能しないとみるやシャドーに回ったり二列目的な仕事をしたり大車輪だった。一人で二人分の仕事をしたといっても過言ではない。よくできました

ラフィーニャ:この日も相手の守備にイライラしてまったくチームプレーができない状況からスタートしたが、後半に向けて徐々に改善が見られた。おとりになったり、スキップしたり、自分が潰れ役になることで、マークが和らいで自分の仕事もやりやすくなる。去年は好調のグノがそれをやってくれたから、自由にできたんだよね・・・早くフィットして欲しい。もう少し

横谷:SHからトップ気味の仕事で前線をかき回した。馬力もあってスピードもテクニックもある。いかにもガンバらしい中盤だし、先発でみたい、と何度も思います。よくできました

明神:怪我の状態が良くないのかとも思ったが、少なくとも時間限定でも中盤の活性化に充分な役割を果たしてくれた。遠藤を前にあげて、武井と交互に攻撃参加。よくできました

佐々木:前への突進力よりも倉田を失ったデメリットの方が目立ってしまった。自陣に引いている相手を崩しきるまでの仕事はできず。もう少し