2012/3/25ガンバ大阪vs磐田「運が味方せず、勝点以上に失ったもの」

 万博ゴール裏で観戦。一言でいえば、昨年までなら審判にこそブーイングが飛べど、選手には拍手が送られた試合だった。

 アデレードでも完敗し4連敗中にもかかわらず、変更点は怪我の明神のところに武井が入っただけ。監督の意地が透けて見える。対戦相手の磐田は、山崎、川口の離脱などベストメンバーではなく、相性からいっても浮上のきっかけにしたいところ。

 ファーストチャンスで藤春がゴールラインまで切れ込んで左からスンヨルがシュートを放つ。サイドネットだったが、ボールへの寄せと中央への人数のかけ方を見る限り、かなりベンチからの規制が緩んだことは明らかで、期待が持てる。しっかりつなぐことを意識するが、まだまだサイドのバランスを重視するあまり受け手が常に低い位置になってしまい、最終ラインから前にボールが運べない。前節よりはさらに改善されているが、やはり守備重視の決まりごとを徹底しすぎて、磐田の守備の密集を避けるようにしかボールを回せない。

 今野のパスを最後にボールを失うことが多いのはやむを得ない。今野は攻撃でも密集の中で惜しいシュートを放ったり、守備でも人数をかけられた際の対応は抜群であったが、比較的ボールを持たせてもらえる場面では、良さが発揮されていなかった。そんな中で、前半25分、縦パスで裏をとられた相手に1対1を決められて失点。確かにリプレイを見ればオフサイドだったようにも思えるが、完全に抜かれたわけでもなかった中澤がセルフジャッジでスピードを緩めたことの方が問題。アピールは後でせい。

 ただし、この失点は昨年までも見られたもの。中澤を叱る智と明神がいないのが気がかりだが。

 追う展開となったことで、磐田はますます上がってこなくなり、ガンバのパス回しはますます出しどころがなくなってしまう。遠藤、武井、パウリーニョあたりが下がってきて、全体的に低い位置でコンパクトなラインとなったことは、狙いなのかたまたまなのかわからないが、昨年一時期はまったショートカウンターを意識できる展開。実際、惜しいシーンも作れたし、磐田にはシュートまで持っていかれることもなく(ただしセットプレイでは相変わらずのスカスカ守備をみせたが)、前半を終える。

 失点癖は今季に限らない通常営業、無得点で終わるような工夫のない試合ではない。あとは明らかに手腕の劣るベンチの選手交代が、減速要因にさえならなければ今季初の勝点は見えてくるかと思われたが・・・。

 後半スタートからの交代はなし。後半もブロックを作る磐田に対して、ゆっくりとコンビネーションを確認しながらつなぐガンバ。さして危険なプレーを作り出せないまま、後半15分。またも裏を取られた相手カウンター、ロングボールに「珍しく」反応して前に出た藤ヶ谷が前田を倒してPKの判定。ゴール裏からは反対のエンドの出来事で、エリアの外のように見えたので、イエローまたはレッドが出てFKが妥当なんじゃないかと思えたが、リプレイ見る限りまあエリア内で前田のダイブ、で結果はカードは出ずにPK。主審家本ならそのくらいの混乱判定はあって然るべきなんだが。これで2点ビハインド。

 このプレーの前から交代準備していた佐々木がスンヨルに代わって入る。パウリーニョがあがって佐々木とポジション代わるかとおもったがどうもイケイケの3トップのよう。縦パスで相手を引かせて、人数をかけたポゼッションで圧力をかけ続け、カウンターにはハイラインで対処。要は追い込まれて手を打ってようやくガンバらしい攻撃を取り戻すというのが、今季のお約束なのか。パウリーニョのFKからの三段シュートも全てブロック。

 後半25分には二川を下げて倉田を投入。シュートさえ打てないラフィーニャを下げて二川のパスで倉田が走るところを見たかったんだが、この日もかなわず。ただ倉田の動き自体は非常に良くて、二列目あるいはセカンドトップ的に動き回る。藤春と倉田は髪型もチャラくてスパイクも派手で、見ている側だけでなく相手も困ったんじゃないか。佐々木・倉田・パウリーニョを遠藤が操れると良かったんだが実際には加地または藤春を含めてサイドでボールを回しながら時間をかけてゴールに迫る方が多かった。

 38分、左サイドから中央に持ち込んでパウリーニョが上げたボールを倉田が頭で押し込んで1-2。さて最後はオートマティックに佐藤入れんのか?との予測に反してベンチは動かず。そうか、ラフィーニャは絶対下げないんだな・・。試合終了まで怒濤の攻撃を続け、磐田は無理繰り止めることしかできない。しかし、パウリーニョのヘッド、佐々木、倉田の波状シュートもすべて実らず。万事休すかと思った前田のカウンターは藤ヶ谷が気迫の一仕事で止めて「もういっぺんダイブしてみろヤ!」と言ったとか言わなかったとか。神戸戦でもそうだったが最後に笑えるくらい攻め続けても結局逃げ切られて試合終了。リーグ戦三連敗、公式戦五連敗。

 怪我人続出で、こちらから見てもイマイチGKと最終ラインの連携がとれていない磐田に対して、有効な攻撃を繰り出せなかったのは実に不甲斐ない。判定に泣いたとか、ゴールの神様に嫌われたという側面もあったが、それを充分覆せるだけの内容だっただけに、残念。残留ラインを当面35として捉えた場合に、今日の磐田相手に失った勝ち点の意味は後々どえらい響き方をするんじゃないかと思わせられた。

 またこの日は春休みということで、ナイター。雨も降って気温も下がるなか、人気クラブでもない磐田相手に、15000人もの来場者があったが、後半15分の2失点目で家路に向かう人が大勢いた。

 どんな一見さんだってサッカーの素人だって、興業に対する観客の見る目は正直でそれこそが回答だ。今までのガンバで2失点したって、得点の期待があったから、帰る人なんてほとんどいなかった。大きく失望させて信頼を失ったお客さんに訴求していくのは並大抵のことではない。ガンバのスタイルを気づくのに5年、お客さんがそれを信頼するのに5年かかったのだとしても、失うのは一ヶ月。

採点

藤ヶ谷:PKを与えたプレーはたとえ誤審だったとしても、そもそもそこまで対応が遅れるプレーではなかった。完全に迷いきってるのは明らか。まあそれさえも休養さえ与えてもらえず起用し続けるベンチ側に問題があるのだが・・・。被シュート数も少なく、決定的なラストプレーを防いだことは評価したい。できました

加地:「加地のクロスがゴールに結びついたことなんて去年ほとんどなかったやろ」がすべて。サイドのバランスを気にする分、上がってくる回数も少なくなり、クロスをあげる回数も減れば、成功数も減る、と・・・。もう少し

中澤:ラインが低くくて裏を取られて自己判断、は絶対やっちゃいかんやろ。たぶん手を上げて副審にアピールした瞬間に「やべ、ライン低っ!」って自覚したんちゃうかな。その後はよかったけど、決定的なミス。もう少し

今野:密集力の強さに改めて驚愕したが、フリースペースでの可能性のなさにもがっかり。もっとドリブルで上がっていくようなイメージあったけど・・・。ズルズル下がるのは良くない。もう少し

藤春:今日はサイド突破解禁でイキイキしていた。昨年の新鮮さを取り戻したかのようだったし、左からのクロスは最後まで脅威だった。よくできました

武井:前半は手持ちぶさただったがそれでもパス交換を落ち着かせる効果は絶大だった。後半のように攻撃に人数をかけたときに、中央で危険の芽を摘む仕事はピカイチ。ゴール前でも存在感を見せた。よくできました

遠藤:遠藤のところでボールを失うのは失望感が大きい。遠藤だからこそ失敗するようなチャレンジではなく、プレスのかかってない場面での単純なミスも多かった。あと守備でのアリバイすべりはコロコロPK以上に相手がよく知ってる。ロンドンに照準あわせてるのか知らんけど今の状態だったら関塚さん呼ばないでしょ。もう少し

二川:開幕から好調をキープ。二川が佐々木とパウリーニョを回している時間帯が一番可能性感じた。なぜ二川を代えるのかベンチに明確な答えを聞きたい。一年通してキープして欲しいから、とかならわかるけどさ。よくできました

パウリーニョ:さすがにズドンは炸裂しなかったけど、ボールも受けられるし守備(とうか忍び足で後ろからかっさらう)にも汗をかくし、ガンバに必要だったのはこのタイプだと改めて確信。よくできました

イスンヨル:ファーストプレイを決め切れれば、この日の試合は全く違ったものになったかもしれない。でもラフィーニャとの距離感は良い。ベストポジションの選手に譲るシーンが多かったけど、もっと自分で打っていって欲しい。できました

ラフィーニャ:相手にもしっかり対策されて、イライラと自信喪失で何もできず。カードを貯めただけ。特に後半はいるだけでストッパーになってしまってた。ワントップ云々の前に、藤ヶ谷同様少しリフレッシュあげないと気の毒。もう少し

佐々木:交代投入だと実に良い仕事をする。相手をべったり張り付かせるのに充分なかき回し。右サイドでの粘り、クロス、少なくともあの頑張りが見れただけでもこの日は万博に来た価値があった。よくできました

倉田:いよいよ全開でガンバらしさの中に入ってきた。もうヤットに叱られてた頃の弱さはないね。下のカテゴリーに出して本当に良かった。よくできました