2012/3/10 ガンバ大阪vs神戸「85分の新しい試みと5分の亡霊」

 開幕戦はゴール裏で観戦。

 大量に変更されたチャントの歌詞に戸惑い続けた、ことはさておき、朝まで続いた雨を含んだピッチ、陽がさすと暑いくらいだが、風はひんやり、の春らしいコンディション。メンバーはACL初戦から、武井が外れて佐々木が入ったくらいで、ボックス型の中盤に。トップのコンビはまたもラフィーニャパウリーニョ

 試合開始直後に押し込み、CKを獲得、こぼれ球を二川がミドルボレーで蹴り込んだが、相手GKに止められる。ああ、やっぱり神戸は神戸かな、と安心していたが、神戸の状態に関係なくガンバが悪かった。中盤の選手間の距離が大きく開き、サイドにボールをはたいては、ロングクロスをあげては跳ね返される、しかできない。もともとセンターでのハイクロスの競り合いなんて捨てていたチームなんだし、まして跳ね返しには強い神戸DF相手に、きわめて無駄な時間を浪費し続けた。

 相手CKから左右に振られてゴチャゴチャした真ん中で押し込まれた失点は、いつも通り。そのシーン自体の失点をどうこうせいというのは無理な話。そのあとも両チーム大味な蹴り込みを繰り返す飽き気味な展開。相手に跳ね返されたボールを左から距離のあるミドルで叩き込んだパウリーニョ弾で同点にしたが、こんな飛び道具が90分で何回炸裂するのかな、ということしか頭には浮かばない。ピッチコンディションがまったく関係ないほど、ボールは常に空中を飛び交ったまま、前半終了。

 ハーフタイムで交代がないことからも、ベンチがこの状況に危機感を持っていないことは明白。得点があるとすれば、セットプレーしか、というところでも遠藤のFKは決まらず。まあそりゃそうだ、去年は一年間で一本だもんね・・・。でCKから神戸のゴールが生まれる。反対側で状況はよくわからないが、こぼれ球がネットを揺らして橋本が大喜びで神戸サポに駆け寄っていったのはわかった。あわてた監督は、よりによって二川に代えてイスンヨルを投入。中盤で辛うじてセンター経由でボールをサイドに配球できていたのは、二川がいたから。これで完全に最終ラインからサイドへのボールしか回らなくなった。佐々木も含めた前の4人+片方のサイドの1人、それと後ろの5人が常に分断されてしまい、完全に神戸のペース。さらに悪いことに佐々木を佐藤に代えてしまい、もはや何も起きなくなってしまったところに、完全に神戸が制圧した中盤でファールをしてしまい、FKから藤ヶ谷が中途半端に弾いてボールを大久保にパスしてしまい万事休すの三点目。

 パウリーニョを阿部に代えた82分過ぎから若干の変化が。遠藤が二列目に来て今野と明神がボランチ気味に。両サイドの位置も高くなり、結果的に選手間の位置が近くなったことで、コンビネーションサッカーが一時的に復活。ATにラフィーニャのゴールが生まれ、さらに攻め続けるも時すでに遅し。開幕戦は2-3で敗戦。

 攻撃の問題は、昨年までとは異なるコンセプトでアプローチをするということで、まだまだ時間が必要。ただし少なくともセンターでボールを受ける役割は必要なので、それをなくしてしまうような慌てぶりはやめてもらいたい。あと、このサッカーなら遠藤にこだわる必要はない。適当に休ませよう。

 それよりも重要な点は、ザル守備のガンバがここまで好成績を残せて来れたのは、失点以上の得点という結果論だけではなくて、相手のポゼッション比率を下げることで守備時間と守備機会を少なくすることで、失点確率を下げるというマネジメントにあったはず。単純な放り込みの選択で、二列目の二川、佐々木はサイドに開いた結果、中盤の距離感が開きポゼッション率が下がることで、その善し悪しとは別に失点リスクが格段にあがったことは明らか。単純に、昨年までのデフォルト二失点を、デフォルト三失点に読み替えることになるのでは、試合にならない。別の方法で失点リスクのマネジメントをしないと。

採点

藤ヶ谷:今年も不安定なボール処理は健在。しかもポゼッションを捨てるのならば、フィードの善し悪しは関係ないし、彼にこだわる理由が全くない。もう少し

加地:攻撃で佐々木とかぶるのは相変わらず、守備でお互い助け合えないのも相変わらず・・・。あなたのクロスの質も例年通りですが、今までは気ままにあげていたのに、強要されることで精度の低さがことさらに強調されてしまった。できました

中澤:クロスへの弱さたるや、もはや伝統芸能。つなげるDFが売りだったので、それを奪われても先発というのは解せないな。もう少し

今野:ボールのカット、クリアには非凡なところを見せてくれたが、その一方で今野がいても東京は二部に落ちたんだったな、ということを思い出させられた。できました

藤春:弾丸の駆け上がりは相手の脅威だったが、中に切れ込む相手がいたらもっと良かったんだよね。さすがに一人ではすぐに対応されてしまった。できました

明神:前半、「今野の前でしごとしたる!」的な気負いが感じられて、無駄動きが多かった気がする。任せるところは任せて。さもないと今日の終盤のように消えてしまうことになる。もう少し

遠藤:FKには結構可能性感じたんだが。たびたび出す縦パスではなく常に縦パス、という辺りに苦悩がにじんだ。他の選手と距離を近く保てないから下がってしまう、というのはやむを得ないけどさ。もう少し

二川:左に開けと言う指示だったと思うが、あまりの攻めてのなさにしばしばトップ下にきては配球を試みていた。非常に効果的だったが、それが原因で監督に交代されたのだったとしたら、救いようがない。交代後の攻撃陣の沈黙を考えればどちらが正解だったかは瞭然。よくできました

佐々木:スターターでは良い印象が少ないけど、今日はサイドハーフで敵陣深く切れ込んでは相手DFを脅かした。ただしセンターからファーで待つだけの味方に対して効果的なゴールアプローチは見せられず。できました

ラフィーニャ:終了間際のゴールのように、パス交換の中で活きるように半年かけてアジャストしてきたのだが、実は草津にいた頃のような動きを思い出せば、新監督の戦術にフィットするのかな、とも思った。一人イライラして無駄なカードまでもらっていたのは、昨年までにはなかった光景。もう少し

パウリーニョ:異質感はあったが、飛び道具的なゴールを見せてくれたので、別に古いものに染まらなくても良いように感じた。ラフィーニャとはあってないので、彼をちょっと下げるか、いっそ二列目で使った方がいいのではないか。よくできました

インスンヨル:去年のスンヨンよりはうまいな、という印象は持ったが、あの展開では力が発揮できないだろう。スターターで見たい。よくできました

佐藤:監督のイメージするサッカーの中ではターゲットとして上手に活かせるといいのだろうが、終盤のパス交換の中では正直邪魔にしかなってなかった。もう少し

阿部:出表時間短く評価なし