4/4 ガンバ大阪vs広島「スタイル:いつか見た美しさ」

万博で観戦。試合開始直前まではなんとか持ってくれた雨も、キックオフの頃には本降り。せっかくの吹田市民デーなのに残念。丁寧に「傘を指さずに観戦してねー」との呼びかけがほほえましい。ガンバは、ホームタウンイベントでもスポンサーイベントでもチケットは販売なんだけど、よそはどうなんだろう。

代表戦で二週間開いたリーグ戦。明神の復帰が最大のグッドニュース。また、代表帰りの遠藤と橋本の状態が気がかり。

混迷する右SBチョイスはその橋本。安田は左SBに復帰。CBはパク山口のコンビ。明神が戻ってきて遠藤がボランチで、ルーカスと寺田が前。チョジェジンとレアンドロの2トップ。

対戦する広島は、開幕から悪くないサッカーをしているが、勝点を積み上げるにはいたっていない。昇格組とはいえ、他のJ1チームは広島のパスサッカーにかなり警戒して対応をしてきている。

そういう意味で広島にとっては、相手の長所を消しに来ないガンバは、今までの相手で一番やりやすいのではないか。という戦前の予想。

試合前番組では、ゲストの山野氏が「プライドを持ってポゼッションでガンバは負けて欲しくない」と言っていたが、もうそろそろそういうチームでもなくなっている気がする。美しさでトップを競っていればいいとは誰も思っていない。とは言い訳で、なによりポゼッションで勝てるような気がしない。

「よく似たサッカー」というには、広島に失礼じゃないかしら。

実際、その通りの展開。両チームがパスを繋いで展開は目まぐるしく代わるが、広島はボールへの寄せが早く、しかも運動量が多くどの局面でも人数をかけられるため、ルーズボールはことごとく広島が制圧。

ガンバは、遠藤の動きが鈍いのと、明神も本来よりも少し危険を見逃しがちでいつものような大明神様ぶりは発揮されない。まあもちろん、明神抜きの状態よりは、ずっと安定していたけど。

そして、SBの橋本が全く効いていない。サイドで効いていない上に、中盤でのパス交換の参加者が減った感がある。ルーカスやレアンドロが下がってくることで、そこそこガンバの時間帯も生まれるが、そうなるとゴール前の人数が足りない。

安田は髪色を変えて、そして柏木を迎えて気合いが入っているのか、かなり前向きなプレーが多い。ただし戻りのスピードやプレスに気持ちがいかないのか、左サイドがいつも以上に留守がち。

広島の攻撃は、ラストパスの精度が悪く、ガンバのDFにミスさえなければ問題ないはずだが、ミスがあるに決まっている。雨でほとんどの選手が滑ったり、トラップミスをしたり、芝もボールもツルツルになっていそう。

ガンバは攻め手がないなあ、という一方、守る方では佐藤の動き出しには対応できていて脅威を感じないが、高柳をほったらかしにしすぎ。あと、槙野が静かにゴール前に上がってきたのを何度も見逃していた。

なによりも、柏木の運動量とプレーの速さに、ガンバはついて行けない。身体も強くて、彼だけはほとんどすべったり、プレーにミスをしたりしない。彼のキックは強く、早く、状況判断も非常に的確だった。そして、そんなにだったかな、というようなボールチェイスとディフェンスの上下動。土砂降りの雨の中、彼の回りだけが晴天なのか、別世界・別次元のようだった。遠藤も翻弄されっぱなしで、スペースを何度も作られていた。人数をかけて守りにいかないガンバを相手にして、特にやりやすかった選手と言うことも言えるだろうか。

だが、サッカーの分からないところだ。エリア外でボールを受けても攻め手のなかったガンバにあって、もっとも消えている時間の多かったチョジェジンが、遠藤、寺田を経由して隙間をうかがっているボールをゴールに向かって蹴りこむ。ああー、何すんねん、と思ったらあららGKの頭を越えてゴール右隅に吸い込まれた。25分にガンバ先制。

先制された広島は、いよいよギアを一段入れてきた。パスとゴールへの人数のかけ方が寄りアグレッシブになり、ほとんどボールを回されつづける。

圧力をかけられつつも、しばらくはしのぎつづけ、このまま上手に守りきれるようなチームになったかな、前半なんとか持ってくれないかな・・・思いもむなしく35分に同点とされる。

ゴール前でパクが競ったクリアボールが、中途半端にフリーの柏木の前に落ち、左に走り込んだ高柳が、苦もなくシュートをたたき込んで1-1同点。

パクの高さはガンバの守備を大きく変貌させたが、酷かもしれないが、たまに無定見に競ってしまって、クリアボールの行方を気にしていないことがしばしばあった。広島の前への推進力でことこどくそのボールをかっさらわれていたが、一番まずい位置で失ってしまった。ま、それは中澤でもあることだし、そもそも柏木にどーんとフリーでそこにいさせている方が問題。

その後の時間帯は、気落ちしたガンバに広島が襲いかかり、本当に厳しく、雨が身にしみて、冷えた。

そして極めつけは、42分、右へ左へ振られると対処できなくなるガンバの弱点をよくご存じ。面白いように振り切られ最後はゴール前佐藤がフリーで頭であわせるという、いただけない状況で逆転ゴールを許す。1-2。

いやいただけなかったのは、ゴール後の佐藤。興奮していたのか良く分からないけどフラッグを蹴り倒して破損。プロがあんなことしちゃいけない。(後日、ホームだったらやらないけどアウェイだから壊してやった的なコメントを出していたそうで、もう最悪)

高柳?か誰かが直しに来てスタンドからは拍手が出たし、主審もカード出しそうだったけど、収めたようだった。

その後は、広島のGKが少しゴールを留守にするチャンスもあったが回しすぎているうちに決めきれず、前半終了。

ハーフタイムで何か手を打たないと、完全にやられている状況。チョジェジンはゴールこそ決めたが、ほとんどプレーに参加できていない。橋本は右サイドで攻撃にも守備にも非効果的。安田は、トラップミスが多く、ゴールへの意識もしくは柏木への意識を強く持ちすぎ。このメンバーとスタイルでは、対応できない。

しかし、同じサッカーで負けるというのは、監督のプライドが許さないのか?選手交代はなく後半へ。

後半早々、前半からおかしなジャッジをしてきた主審(鍋島)が、ゴール前でルーカスが倒されたという判定で、PKをゲット。正直、滑っただけのようにも見えるが、少なくとも足には問題ないし、上半身で何かしたように見えたのだろうか・・・前節のこともあり複雑な心境だが、PKを遠藤が決めて2-2に追いつく。

広島はまた前へ圧力をかけてくるかと思ったが、そうでもなく、一進一退の時間帯が続く。ガンバには、山口の頭が不発だったり、レアンドロのミドルがポストを直撃したり、安田が藤ヶ谷のフィードをよそ見して見逃したり、広島は槙野が頭であわせたり、柏木がフリーのシュートを空に打ち上げたり・・・

後半30分過ぎから、目まぐるしく選手が投入されるが、ガンバは35分にチョジェジンを山崎に、40分に寺田を佐々木に代える。

山崎の投入で前線の選手がポジションを目まぐるしく変え、いよいよゴール前は活性化される。

主審は、Pk判定で気を遣ったのか、ルーカスが滑って転んで接触したシーンでイエローカードを提示。そういう意味での公平性は、前節よりはマシなんか?

試合終了まで押しまくったが、佐々木が孤立したり、ルーカスにサポートがなかったり、遠藤のところでパスが途切れたりなかなかフィニッシュに持っていけず、流れの中で崩しきることはできなかった。ゴール左に安田が突然現れ突破したのが一番ゴールに近づいたシーンだが、シュートはGKに止められ、試合は終了。

前半は広島のサッカーに圧倒されたものの、結果的には飛ばしていたのか、それとも足を使わせることができたのか、終盤は今年のガンバのやりたいことが示せたように思う。ただ、それぞれのベストの時間帯のサッカーを比べると広島の小気味よさ、美しさの方が勝っていた。

サッカーの質という点では、どちらが上かは良く分からない。勝つために、ゴールを決めるための効率性も質のひとつだし、その点ではどちらも決して高くはないのかもしれない。

広島の今のスタイルは、以前のガンバの目指すスタイルだったはずだが、もはやその方向性が変わっているのは事実だ。攻撃的という売りのガンバは個の力による効率性へのシフトをすすめている。広島のサッカーは、連動していて、運動量も豊富で、しかも勇敢に前に向かっていた。そのスタイルは羨ましいけど、もうガンバはそのスタイルには戻れないことも分かる。広島の挑戦には、これからも拍手を送りたいし、楽しみにしている。

佐藤にはがっかりしたけど。

あと、前節主審に壊された試合を嘆いた監督、たとえ誤審が有利な判定でも、含み笑いではなく一言言って欲しかった。がっかり。

今日の採点です。

藤ヶ谷:GKにはどうすることもできない失点の連続だった。組織的という言葉のない守備陣の後ろでよくがんばっていたと思う。(できました)

安田:今日はかかり過ぎだった。攻撃はフェイントの連発では自滅するだけ、もっとシンプルにいくプレーを混ぜてはじめて相手にしてもらえる。それより守備はもっと集中して。サイド「バック」ですから、君の後ろはゴールしかないと思ってプレーを。フィードを無視してのんびり走るなんて、懲罰もの。ライン際でのボール扱いも雨を考慮しても酷かった。最後のシュートシーンでは、これ一発で帳消しにする気か、と思わせたが、それもできず。(もう少し)

山口:振られましたね。強気のラインコントロールは良かったけど、スピードと運動量と連動性でボコられました。ルーニーが居たかのようなちぎられ方。よく二点ですんだと。(もう少し)

パク:佐藤に頭で決められるんだから、高さは一要素ではあっても、絶対ではないってことだね。失点時になぜか顔を出していないポジショニングが気になる。(もう少し)

橋本:右SBでは生きない上に、中盤の安定性が失われる。前も同じように採点したような・・・。今日は小明神だったので、よけいに中盤がとっても危なく、しかもサイドで押し込まないので充分なスペースを提供してしまっていた。右サイドでのフリーランから気持ちいいように決定機を生み出された。あと、エリア内でボールをかきだしに行ったとき自分がSBなのでフォローがないことも、しばしば。(できました)

明神:故障明けで本調子ではなかった。いつものパスカットやプレスが面白いようにかわされていた。不在時に比べるとずっと安定してたけど、監督の見込み(大明神で橋本SBをカバー)よりは下回ったか。徐々にコンディション戻して(できました)

遠藤:今日は柏木の前で霞んでしまったけど、よく走ってくれてました。代表帰りでコンディションも良くなかったけど、明神のカバー、前へのボールの配給は精力的、そしてPKもきっちり。パスミスも多かったしもっとやって欲しいというのは贅沢な要求だと思う(よくできました)

ルーカス:ちょっと精彩を欠いた。ゴールへの焦りはみられないが、ゴールへ向かう姿勢もみられない。キープがチャンスに結びつかず、一瞬の遅れでボールを絡め取られるシーンが多かった。PKゲットのシーンも、躊躇せずシュートにいって良かったのに、なぜ倒れたのか?転んだにせよ倒されたにせよ、理想的なプレーではなかった(もう少し)

寺田:いつも以上に巧くやろうとしていたのは、相手のアグレッシブさから相対的にそう見えたのだろうか?もっと激しく行けるようになってほしいと切に願う。ガンバらしさという点では遅攻の中心にはなっていた(できました)

レアンドロ:ゴールラッシュはどこへやら。今日は決定機にすべったり、好守備にあったり、ポストに嫌われたり、運がなかった。別の機会に貯めておいたとしておこう。間違っても使い切ってないよね??ただ、流れの中で一番合ってるし、プレスも献身的だった。時々ルーカスと距離があいていたのが目立った程度(できました)

チョジェジン:先制点も独善的だったが、その後のプレーは完全に浮いてしまっていた。味方への不満、審判への不満を表現している間にゲームは動いている。プレー続行がガンバのスタイルなんだから、その間だけでも戦力になっていないこと認識すべき。なぜ80分まで交代させられなかったか、いつまでファーストチョイスなのか、疑問。でもゴールは偉大(できました)

山崎:チョジェジンの代わりで入ると、より前線が活性化される。パス回しも安定するし、期待感を持たせてくれた。広島が唯一手を焼いた選手だったのでは。(短いので評価なし)

佐々木:時間が短すぎた。何回かボールを持って、突破とクロスとパス交換を織り交ぜることで混乱を呼び込める選手。短時間では難しいよ。橋本とユニットで右を制圧できればいいんだけど、試すチャンスがない。(短いので評価なし)

監督:試合後の評論家的なコメントに久々に怒りが。ガンバの良さを消され、相手のテンポが上回っているって難しいことを両立されてるなら、その状況をどうするか考えるのが仕事でしょ。チグハグなりに選手たちの工夫で、80分まで何度かチャンスを作ってきた。エンジンがかかりはじめてからしか動けないのかしら。エンジンをかけることもできるだろうに。(もう少し)