フットボールにおける「若さ」:3つの試合より

今週末は、いくつかの試合を心安らかに見ることができた。

リーグ戦、リーグカップ戦、協会カップ戦、これくらいのタイトルはどの国ももっているし、それをやりくりさせてこその、トップチームだ。

チーム事情や、大会の特徴から、思いがけず「若さ」の功罪を考えることになった週末だった。

10/29 プレミア:アーセナルvsトットナム

金曜深夜に観戦。しかしまあ、サッカーは終了のホイッスルまで何が起きるか分からない。

先制はされたがその後アーセナルは 3-1, 4-2とほぼ常に2点のリードを保ち続けた。ワンタッチフッ

トボールで最後まで攻撃的な姿勢を見せていたし、受けに回ったようでも感じられなかった。やられ

る、やられる、という危機感もさほどなかった。

これはもう最後まであきらめず、追いついたトッテナムを褒めるしかない。試合が終わるまで、チャ

ンスの数、攻撃的な姿勢は、イーブンであった。いや、そう考えると2点差、というのは途中経過であ

って、90分で4-4というのは、妥当な結果と言うべきか。

今季のアーセナルの弱さが浮き彫りになったとしたら、相変わらず試合を落ち着かせることができない、というところだろうか。ハルシティ戦もそうだったし、この週末のストークシティ戦もそうだった。

ヤングガナーズ大変結構だけど、「若手が元気な中堅チーム」のような脆さを見せられては困るんだが・・・

いや、むしろウォルコット下げてからの方がバタついたかな?

次は、ユナイテッド戦、ギャラス辺りしっかり頼むよ。

11/2 天皇杯:鹿島vs国士舘大学

これが天皇杯の醍醐味、と毎年のように書いているが、J1のチームから見て、大学生ほどやりにくい

チームはないだろう。JFLのような厭世観(失礼)もなく、J2のような戦略的な野心もない。

就職が決まっている学生にとっては力試し、サッカーを続けたい学生には格好の売り込みの場。J1相

手に難しいことをしても仕方がないので、自分たちの一番良いパフォーマンスを出すことに終始する。客もたくさん入って、モチベーションも集中力も最高潮。

国士舘は、少し慎重な鹿島んほ判断の遅れを突いて、先制点そして、追いつかれた後も勝ち越し点を取った。

鹿島が、それほど相手をなめてかかった訳じゃない。

ただ、必要以上の心理的余裕が、シュートシーンで「いつもより確実に」、チェイスで「ファールをもらわないように」、ブロックで「確実に進路を抑えて」、というちょっとした「よそ行き感」が、苦戦に繋がったと言えよう。

毎年J1のチームがそれにはまるのだからもう仕方がない。磐田のように天皇杯仕様の別チームを作れれば話は別だが、今の鹿島はその状況にはない。

二点目をPKをもらったシーンは、マルキーニョスマリーシアかと思ったが、GKは結果的にボールに触れているだけで、マルキーニョスの足に行っていると見られても仕方がない。ただ、PKをとらないジャッジでもおかしくないプレーだった。マルキーニョスのダイビングが巧かったともいえるし、GKが飛び出したときにはもう笛を吹く準備があったとも、いえるだろう。

悪く捉えて欲しくはないがそれも含めて「ウマさ」だといえるだろう。

今季、審判に何度も泣かされてきた鹿島だが、この日は地の利を生かしてもらえた。

PKシーン、鹿島サポのブーイングを見て笑顔を見せた国士舘の選手たち。

残念ながら、あの時点でもう勝負は決していたのだろう。

でも、120分、互角に戦った最後に、まだ勝負は決していないのに、なぜ開放感を発してしまったのだろうか。そうやって思わせるだけの力が、鹿島にあったということか。

J1にとって大学がやりにくいように、大学にとってJ1は、勝負が決する前に、満足感・達成感を感じさせてしまう、そんな効果があるわけだ。

PK戦は運だといわれるが、少なくともこの試合に限っては、技術と精神力が生きた。特に曽ヶ端選手はさすがだった。失点シーンではGKは転がされているのだ。2失点して、悔しいはずがなかろう。完璧なセーブだった。

試合後のゴール裏の国士舘コール、そして国士舘イレブンの相手ベンチへの一礼、天皇杯らしい良いシーンだった。

オリベイラ監督の、国士舘を称える姿勢も。

11/1 ナビスコ杯決勝:清水vs大分

カップ戦決勝の独特の雰囲気に、両チームとも慎重というよりは飲まれた、試合の入りだった。

大分は、いつもの厳しく(ともすれば汚い)ディフェンスがかからず、しばしばピンチを招く。

一方、清水の若さは「勢い」ではなく「臆病さ」となって空回り。先日のリーグ戦で見せたような、思い切りの良い突破やシュートが見られない。サイド攻撃もしっかり対応された。

前線でウェズレイがぶらぶらしている分だけ、清水の方がかろうじて押し気味で後半へ。

後半は清水の良さが徐々に出てきて、長時間押し込んでは時々大分がカウンター、という流れが続いた。

大分はボールを奪うと多彩なカウンターを見せる。逆サイドに複数が走り込んだり、サポートに走った選手を使った突破を試みたり、ロングボール一本ではないので、神経を使う。

しかし徐々に戻りが遅くなり、清水のサイド攻撃にに大分DFの足がついていかなくなってきて、清水の先制点は時間の問題と思えた。

そんな中、ゴールを奪ったのは大分。ゴール前でファーへのクロスを高松が頭であわせて先制。DFの寄せもGKの判断も若干ずれたし、ボールが転がった位置も良かった。なんと言っても、カウンターの度に人数をかけてくる大分の連動性に、ついに対処できなかったともいえるだろう。

あとは、清水の若さが出てしまった。焦りから、視野が狭くなり、チャンスをつぶし、ボールを失い、天を仰ぐ時間が増えた。

そんな中、ウェズレイがダメを押す追加点。これは、単純なカウンターだった。しかし90分ブラブラされても、この重要なゴールを決めるのだから、さすがだ。

2-0でタイムアップ。大分が初タイトルを獲った。

おめでとうございます。みんないい顔でした。

来年は忙しいですよ~。ハワイとかスルガ銀行とか。耐えてね。

先日チンチンにされた清水に勝ってもらうと、少し溜飲が下がったんだけど、やはり今のガンバの相対的な状態が厳しいことを感じさせられる試合でした。

(来期ACL(3位)は無理だな、こりゃ)

若いことが、チームを勢いづかせることを、知ってはいても、あえて若さのエネルギーを度外視して能力で勝負させる、というのは、長期的に見てチームを、そして選手を良い方向へ導こうとはしているのだろう。

でも「勘違いさせない」ことが重要だというのも分かるけどね、短期的には試すことも必要なんじゃないのかナー。

若い人は経験を積んで成長していく。この三試合とも成長には格好の舞台であったですね。

天皇杯を軽視できない状況のトップチームは、若手の処遇を含めてメンバーをどう組むか今後も注目ですね。

(浦和のユース選手なんか、出てくるのかな?)