10/26 ガンバ大阪vs清水 「予想通り」の幕引き

数年前に「ガンバはJで一番カウンターに弱い」と言い放ったのは、かの反町名監督だ。なるほど、さすがの名将、彼は新潟を率いてただの一度もガンバより上の順位でリーグ戦を終えたことはなかった。いろんな戦術の中で、カウンターを選んだのではなく、それしかないチームに、その通りやられて、負けた。

対して今年の清水は、戦術のバリエーションが大変豊富だ。アタックのバリエーションこそ少ないけど、選手のセットが自在であり、たくさんのオプションがある。攻撃的にも、守備的にも、だ。

特に、フェルナンジーニョを放出してからの安定感は、素晴らしい。彼がいたときには、もちろん個人で展開する能力で、得たものも多かったが、やはり戦術理解の不徹底で失うものが多かった、と言うことだろう。

清水は、ナビスコ杯の決勝を一週間後に控え、リーグ戦の順位、首位との勝点差10を考えると、ここでガンバ相手に、守備的に勝点をかすめ取りに来る可能性は、皆無であった。負けたって失うものはさほどない。決勝に向けて、前向きな戦術で士気を高めることの方が、重要といえよう。

ガンバは水曜にACLを戦っており、中三日。いわゆる大一番を制した後に、若干の達成感を感じていたとしても不思議ではなかろう。しかし、霞んでいるリーグタイトルを、近づける絶好の機会でもある。これまで、今シーズン何度も、もっといえば何シーズンも、浮上のチャンスで、上位チームとおつきあいして、勝点を落としてきた。失速続きである。

どうすれば、チームに活力が出るのか、主力選手の疲労度と対戦相手の見据える先とガンバの今後のスケジュールを見たとき、ここで若手を使わないで、いつ使うんだ、という試合だった。チャンスを与える、などというレベルではない、低下した主力のパフォーマンスをもう一度高め、チームに勢いをつけるために、「そこに居る」モチベーションの高いサブの選手を使わないと、いけない、試合だった。

家長が、前田が、倉田が、寺田が、これまで活躍して拾った試合は、勝点3以上の重みがあった。大黒も、二川も、安田も、大事な試合で信じられない活躍を見せて、チームを引っ張り、主力となっていった。そう、ガンバを支えてきたのはその時々の主力だが、引っ張ってきたのはいつもユース出身の若手だった。西野監督が、一度や二度の活躍では、選手を重く扱わないのは、重々理解している。それは、もう慣れた。でも、今年は機会が少なすぎる。水本の一件で余計に意固地になったか。

連係重視という名の下に、この日も固定メンバーが出場し、残念ながら大変ひどいプレーを見せてくれた。運動量、集中力、熱意、何もない。

あれだけのモチベーションの低さを、試合前に見抜けなかったのだとしたら、監督など必要ない。

遠藤の出場停止という格好の材料があったにもかかわらず、監督は臆病だった。ルーカスを中盤に下ろし、播戸と山崎を組ませた。ルーカスの試合勘、播戸のゴール、どちらも残りシーズンに欠かせない、という判断も、結果的に失敗だったが、意図があったのなら支持するとしよう。

では、ルーカスをあの位置で使う予定はあるのか?二列目という意識からか、かえっていつもよりゴールに向かう姿勢が高かった気もするが、トップにいたって下がって受ける選手だ。ズルズルとFWとの距離を開けてしまい、さらにはFWもつられて戻る。

奇妙なコンパクトさを保ちつつ、ゲームはすすむ。試合の入りこそ、ポゼッションのシーンもあったが、時間がたつほど、バランスは崩れ、ガンバサッカーが崩壊していくのを見ているだけ。やがて持たされている感から、ロングボール、スピード突破、色々な形で裏をとられる形へ、移行し、当然の帰結としての失点へ。

最終ラインとGKの間の脆弱性を繰り返し突かれて、耐える形が続いたが、最後は、藤ヶ谷と加地がいっぺんに消されて、枝村に決められる。いったい何点献上すんねん。

後半、選手交代はなし、ますます失望。この状況を打破するのではなく、「形は悪くない」で済ませるのか。無策監督のもと、前半から続くズタズタの、切り裂かれ方。右から、中央から、はっきり言ってガンバの選手が、いてもいなくても関係のない、プレーと判断の速さ、思い切りの良さ。続けて2失点し、勝負あり。

若くて、アグレッシブで、モチベーションも高く、しかも技術も高い。

無策監督は、動転したのか、ルーカスアウトの佐々木イン、そしてFW二枚替えで、ロニー、ミネイロの投入。意図はどこ行ったの?打てる手が少ないことをマザマザと見せただけ。中盤を再構成できる選手を投入するでもなく、唯一の共通理解であるポゼッションを放棄したことで、個人がボールを蹴るだけの時間が経過し、試合終了。

ロニーのゴールもあったが、まったくのおまけ。

つくづく、ACL準決勝は、内容的には現状Jリーグの中位サッカーだった、ということを思い知らされた。

清水のサッカーは明らかにガンバより良かった。でも、彼らが突出しているのではなく、神戸とか広島とか東京とか(時々千葉も)高いレベルでのアクションサッカーが、できていますよね。

対して、退屈で、平凡なガンバのサッカー、そして期待感の持てない監督の起用・采配。もしかして「勝てばいい」と思っているのは、君たちではないのかい?

まったく、何のトライアルもないまま、いつか高まる連係を待ちながら、ガンバのJリーグ2008シーズンは幕を下ろした。今日の試合は、その「真骨頂」「集大成」だ。

「内容が伴ったサッカーをやれば負けない」なんて言われるのかしらね、城福監督あたりに。

そして清水。かませ犬をあっさり踏み台にして、最高の状態でナビスコ決勝に臨めそう。期待しています。

採点します

藤ヶ谷:「ちい散歩」なみにブラッとゴールをあける。「仕方がない」といえるゴールは一つもなかった。敢えて言えば、レベルが違うんだから仕方がない。(もう少し)

安田:右サイドのセットに対して全面的に無力だった。U-20の頃から比べて劣化が激しい。SBは下平に明け渡して、二川やルーカスを追い落とす気概もたんかい!(もう少し)

中澤:決定的なミスはなかったが、DFの一員としては失点シーンで目立っていないことは逆に気になる。ワイン飲んではしゃぐのは良いけど、厳しい雰囲気は保とう。(できました)

山口:今日はヘッドも炸裂せず、二川のボールでも合ってるんだけど。決定的なミスが失点に直結したのは無論反省材料だが、藤ヶ谷との連係について、じっくり考えてください。オウンゴールも。(もう少し)

加地:ゴール前での活躍が見られたが、播戸・山崎のペアとは相性が合いませんね。佐々木とのセットだけが、清水に見劣りしなかった。(できました)

明神:縦横無尽な相手攻撃陣と、いつも近くにいるルーカスに手を焼いた。あんたが上がったら良かったんや。たぶんルーカスがケアしてくれる。左サイド安田を助けにいっては、空いた中央を使われた。(できました)

橋本:今日もパス交換に参上していたが、可能性は全く感じなかった。ボランチ同士の連係もイマイチ。ルーカスとは通じ合っているようだったけど。(できました)

ルーカス:ダメ。さすがに監督も見切って早々に交代だった。次は古巣東京戦。アウェイ国立で見せてくれた、恩返し弾をもう一度!(もう少し)

二川:大好きな児玉は今や完全に向こうの主力。その姿にショックを受けたわけでもなかろうが、相変わらずの不調。プレースキックは辞退したほうが良かった。不調の二川自身よりも、倒れるまで使おうという監督に腹が立つ。(もう少し)

山崎:播戸よりは可能性があった。二川とも呼吸が合えば量産できそうなんだけど、今は君よりも二川の方に問題があるね。今度下平と一緒に食事に誘ってやってください。(できました)

播戸:相変わらずの欠乏症。引き出す動きも今日は(も?)、効果的ではない。もう良いんじゃないかな。(もう少し)

佐々木:君がファーストチョイスに来ないのが不思議。びびらされた天皇杯山形戦からもう一年ですね。先発で固定される日も近いはず。(よくできました)

ロニー:2枚同時投入には、監督の自己陶酔に吐き気がしましたが、君のせいではない。いろんな組み合わせが試すことができた、という収穫を信じておきます。ほんの一瞬、溜飲を下げるゴール。あれがなければ夜の酒量がもっと伸びていた。(よくできました)

ミネイロ:もう神通力は消えたかな?いや、すくなくとも劣勢で出てくる選手じゃないよね。勝ってる場面で追加点、期待。(もう少し)