W杯南ア大会 アジア最終予選 日本対ウズベキスタン「名も実もないサッカーに耐えて」

ゴール裏の、コールリーダーにも、いろいろなタイプの方がいるけど、中には、勝点差の勘定が、好きな人もいる。

これから、応援するぞ、という時に「勝てば首位に勝点差3に迫ります」とか「今日勝点3とって、首位がこけてくれるのを待ちましょう」とか言われると、目の前の試合に対する熱が、少しいなされたような気分になってしまう。

もちろん、語っている数字は事実であり、客観的なものなのだが、それは家に帰って、新聞見ながらニヤリとすれば良いことのような気がする。

駅前で、観戦の呼び込みをするには、有効な言葉かもしれないけど。

そこに、集っている人にとっては、首位争いでも、目的の見えない中位同士の対戦であっても、目の前で、選手たちの素晴らしいプレーが見たい、試合に勝って欲しい、という気持ちがあるわけである。勘定よりも感情(ダジャレか)。

最終予選に、スペクタクルなど期待していない。

スペクタクルなサッカーが、予選突破のための最短距離であるならば、そうすべきだし、より確率の高い手段があるなら、別に実直で退屈なサッカーでも構わない。

魅力的で、強いサッカーを指向することは、忘れて欲しくないけど、予選でそれにこだわって敗退しても、拍手は送れない。

私は、テレビで観戦だったので、そう思いながら声援を送った。そして、1-1は妥当な結果だと思った。

しかし、現地で観戦した、多くのサポーターにとってはどうだっただろう。

ワンプレーごとのミスはあったが、緊張感を感じる試合だったので満足だという声も上がるだろう。埼玉という土地柄、レッズの選手が痛々しく奮闘する姿を見て、涙した人もいただろう。一方で、「熱」をもって集った人にとって、その熱が発散するでもなく、持って行き場を失ったような、どうしていいか分からない感覚に陥った人もいたのではないだろうか。

試合前の、星取り表だけを見れば、最終予選突破にはウズベキスタンに勝つことは必須のように感じられた。しかし、最終予選は長い。その間にチーム状態が変化することを、改めて思い知らされた。

ウズベキスタンの前線の強いプレス、迫力のあるボール奪取と攻撃への転換。これが与しやすい相手だとは到底考えられなかった。むしろ最も苦手なタイプではないか。

さすが適切なアドバイスジーコ氏。日本代表を率いてドイツまで行って「世界とは体格差がある」ことを敗退の理由にしただけのことはあります。

とにかく、人にもいけない、スペースも空ける、プレスもかからない。シュートまで持って行かれないことに、むしろ「さすが」とさえ思ったものだ。

テクニックの違いで、ゴール前まで攻め込むことはできた。審判のジャッジが日本寄りだったこともあって、セットプレーは何度も獲得できた。中村俊には強いマークがついてはいたが、決定的なパスは何本も出たし、軽いプレーでボールを奪われるのも含めていつも通り。

得点の匂いがないわけではなかったが、楽勝できるはずもなく、プレスを受けてボールが下がるたびにハラハラし続ける時間帯の中、素早い攻守の切り替えに対応できないまま27分に先制点を許してしまった。シャツキフがクロスをスライディングで押し込んだシーンは、日本のFWなら誰も決めきれないボールだったと思う(鈴木・・・)。

そこに至った直接のプレーは田中マルクスのクリアミスから、のように評されているが、とにかく日本チームの誰もが的確な守備対応ができていなかったのだから、こんなもんだろう。責められるとしたら中沢との連係だろうか。

一方、中村俊のクロスが、得点に結びついたのは40分。ややゴールから離れた左サイドから、ファーの大久保がゴール前に折り返して、玉田が決める。

後半にはいると、相手のプレスも弱まってきているのだが、日本の攻撃も急激にトーンダウン。人数をかけた守備をしてくるので運動量が落ちた時間帯には、空き気味の逆サイドへのチェンジ、左右の揺さぶりは効果的だと思ったのだが・・・。

単発のミドル、ロングボール、無理なスルーパス。プレスを避ける策として縦のボールを増やしたのかもしれないけど、相手も対応。、焦ったわけでもあるまいが。

日本の交代は62分に大久保から岡崎。さらに突破スピードを生かして、ということか。ターゲットになる選手もいないし(なんでいないの?)、その時間帯がきたら田中マルクスを上げるんだろうな。彼が傷んだら打つ手がないよ、どうする。

そして「その時間帯」の76分に香川から稲本。いくら田中マルクスを上げるからといって、守備バランスを重視する交代は、残念ながら、最終予選的な選択だ。

81分には玉田を興梠に交代。システムとして劇的な改善はなく、タレントも用意していなかったので、これ以上打つ手はなかったかもしれない。

幸い、前線で張っていて迫力を見せていたシャツキフを、72分に相手が下げてくれたことで、守備の負担は格段に減る。リスクの減った状態で、攻撃面では次善の策を繰り出し続けて、ドローに持ち込んだ。

采配も、もっと良い手はあったかもしれないけど、それほど悪くもない。ホームでウズベキスタン相手だから若い選手を試すことができた、ということもできる。

稲本ではなく中村憲だったら、逆転があったかもしれないけど、(中村でも今日の稲本ぐらいの守備ならできた)、稲本投入時の期待としては悪くなかった。

釈然としない気分も残るが、やはり、最終予選で、今日のように迫力あるプレーをしてくる相手に、負けなかったことは充分な成果と捉えるしかない。勝点3があるに越したことはないが、失った2点は、このメンバー、そしてこの監督の下では、最善だったのではないかと思える。

ただし、このベンチメンバーを選択する時点での是非、そしてこの監督のとる「現実的」なスタイルの是非。それは問われるべきではないか。

そしてスペクタクルなサッカーが、最短距離ではないのか、どうか。

しかし、ウズベキスタンには、是非この調子で、日本以外のチームにも向かっていって欲しい。そうでないと困るよ、ジーコ氏。