北京五輪・男子サッカー:さよなら中国
北京五輪の男子サッカーは、予選三戦全敗で敗退となった。
直前の豪州戦、アルゼンチン戦の出来から考えても、勝点0というのは予想していなかった。
事前の予想では、初戦のアメリカで勝点をとらないとどうしようもない。
(たぶん他の国は、日本から勝点とらないとどうしようもない、と思ってただろうけど)
ナイジェリアの方が抜けており、まだオランダの方が可能性があるかも。勝点4で、二位通過。
短い期間で三試合なので、二戦目のナイジェリア戦ではメンバーを落として、初戦と三戦目をベストメンバー組む。
疲労だけでなくカードも怖い。
しかし、いくら初戦で、硬いとはいえ、アメリカ戦(0-1)の出来の悪さは、ひどいものだった。
いつも通り、低い位置でのポゼッションで、ボールを支配する気にはなっているが、そこから先、アタッキングサードではまったく可能性を感じなかった。
仕掛けるような場面もほとんどなく、危険なシーンを作れなかった。
その前日にあった、女子サッカーNZ戦がそうだったように、支配力を高めて得たゴールも、ワンチャンスで決めてくるゴールも同じ。
もちろん、突然生まれ変わったようにシンプルなサッカーをするようになるとは期待していなかったが、いつもより消極的にバランスをとって、ボール回しを続ける姿は、つまらないものだった。
攻撃的なメッセージを持った先発起用だったと思われる梶山が、むしろスルスルと下がってしまうことで、谷口との間が間延びし、さほど前に出ない長友のサイドからは何も展開できなかった。
わずかに可能性があったのは右から内田や本田圭を経由して谷口に絡んでくるシーンくらいだが、それもハーフタイムでしっかり対応されてしまい、蓋をされたかのように何もできなくなった。
老獪に時間を使う相手GKがさほど気にならなかったのは、ピッチ上で同じように時間を消費しているだけの日本のボール回しがあったからだろう。
失点は仕方がない。水本の不用意なカットをワンチャンスで決めてこられた。だが、その可能性を下げるだけのラインを統率できる人材がこのDFメンバーにはおらず、無失点を期待るのは困難なことが改めて明白となった。アメリカの後半のシュートはこの1本だけ。
やはり点を取らなきゃいけない。
二戦目のナイジェリア戦に、何とか可能性をかける必要がでてきてしまった。
二戦目は、左サイドが長友から安田、ボランチが梶山から細貝、トップが森本から李へと変更。
両サイドは効果的に効き、本田や香川と李の連動性も高く、攻撃面では、前回よりは期待させてくれた。
しかし、最終ラインの前までの崩しは成功しても、最終ラインをいかに突破するかという点で、アイデアがなさすぎた。
すばらしいミドルシュートと、サイドからのクロスにあわせたシーンはあったが、それだけでは前時代的すぎる。
ナイジェリアには、それよりもはるかにモダンな方法で密集を作って中央からゴールを決められてしまった。
対人能力が強みのはずの水本が突破を試みた選手に中央で動きをふさがれてゴール前にスペースを作られて、そこに二列目から走り込まれて難なく失点。
この失点には、アメリカ戦のように仕方がない、と片付けられない、大きな差をみた。
ナイジェリアの攻撃はきわめて先進的で、しかも最終ラインの突破に多くの戦略があった。ひらめきとか、身体能力とか、ではなく(もちろんそれも要素に含まれるが)、サッカー理論の差を見せつけられた。
岡崎・豊田を投入し、前線に圧力をかけるが、待っていたかのようにまんまとカウンターを食らって2失点目。
相手GKのミスフィードから1点を返したが、万事休す。
連敗での予選敗退が決まった。
そして、三戦目。オランダ。2005のワールドユースでも対戦しており、数ヶ月前にはトゥーロンで二軍相手とはいえ圧倒して勝っている。
オランダは二分けで勝点2と後がなく、日本戦に必勝を期してくる。
そこでしか得られないものがあるはずだ、と期待したが・・・
そこで見たのは、自らの商品価値を誇示しようとする、醜悪な若者の姿だった。内田・安田を怪我で欠いてサイド攻撃の威力が弱いせいもあるが、不用意な仕掛けやプレス、おしゃれパスなどを多用するも、シュートどころか二列目さえ超えられない。
戦略としては、勝たねばならないオランダをじりじりとおびき寄せて、焦らせた上で、手薄なゴールに襲っていくべきだと思ったが、なぜか逆をやられた。
オランダはしっかり守ることでリズムを作って、チャンスをうかがう。
日本も、森重のミドルがポストに防がれるなど惜しいシュートもあったが、最終的には、ラインの突破、エリアへの浸入の圧力に耐えきれずに、PKを献上。これも本田は不用意だが仕方がない。そういうシーンを多く作ろうという、本来日本がやりたかったことをオランダに最終的にやられてしまった。
日本は全く焦る必要のない試合だったのだが、功名を焦ったというのはまさにこのことか。
本田圭に代わって香川が入ってからは、怒濤の攻撃を見せるが、カウンターもしっかり食らい、どちらも無得点で終了。
ナイジェリアがアメリカを下し勝点7で一位通過、オランダが最終的に勝点を5に伸ばし、二位通過となった。
常に、目前の試合にベストの結果を残す努力をしたかどうか、甚だ疑問だ。三戦目のような強引な姿勢を、なぜそれが必要だった一試合目で見せられなかったのか。
五輪種目に対してひたむきに競技にのぞむ選手と比べると、どうしても目についてしまった。
最後に普段個人の採点はしないのだが、三試合通じての採点をしたい。
西川6.0
(あの守備陣で4失点はよくやった)
細貝6.0
(初戦で見たかった)
吉田5.0
(水本と二人で何度も危険を演出)
水本4.0
(主将としてもストッパーとしても落第)
長友4.5
(ポリバレントというより器用貧乏)
森重5.0
(CBとしては落第、SBで回復)
内田6.5
(一人別次元、遠藤と組ませたかった)
本田圭5.0
(周りを生かせないなら決めろ)
豊田5.5
(唯一のゴール、有難う山形・祈昇格)
梶山5.0
(初戦の出来の悪さは?)
岡崎5.0
(流れ変えられず)
谷口6.0
(中央で奮闘、安田のクロス決められれば)
安田5.5
(良くも悪くも能力発揮)
香川5.5
(ピッチ状態無視して足元にこだわりすぎた)
森本5.0
(かき回せず信頼失う)
本田拓5.5
(守備に奮闘も累積停止)
李5.0
(かき回すも無シュートで帰国)
山本-
(出場なしもよく経験生かして欲しい)
反町監督4.0
(世界は美しさではなく結果に驚く)