5/1 UEFA-CL 準決勝 リバプールVSチェルシー第二戦 「チェルシーを阻むヨーロッパ」

眠い目をこすってみたが、その代償は大きい。

ちなみに、私はイングランドならアーセナル、イタリアならACミラン、スペインならバルセロナをそれぞれ追っかけています。欧州レベルでは、アーセナルACミランバルセロナの順です。

従って、ベスト4にイングランド勢3チームという今年の勝ち上がりは、途中の過程も含めて複雑な気持ちですが、とりあえず今季はこれしかない、というミランにぜひビッグイヤーをと願っています。

さて、CL準決勝、イングランド勢対決となったチェルシーvsリバプール。この試合に関して、私の精神構造はものすごく複雑で屈折したものです。以前は、マンUにタイトルとられるならチェルシーでも、と思っていたが、最近はもっと難しい感じ。プレミアはどっちでもいいが、CLはチェルシーに持ってかれたくない。でもマンUの二冠(以上)は嫌だ・・・結論として、勝敗の希望はなく、フットボールを客観的に楽しむという気持ちで、深夜の観戦に臨みました。

第一戦は、チェルシーがホームで1-0で勝利し第二戦を迎えた。アウェーゴールを許さなかったという点で、モリーニョ監督の戦略は成功し、チェルシー有利な状況かと思われた。しかし、この一週間で状況は大きく変わった。そもそも故障者が続出した今季のチェルシーであったが、ここへ来てリカルドカルバリョ、シェフチェンコも離脱。バラックも第一戦の時点でいなかったのだが、まさか手術に踏み切るほど悪かったとは(モリーニョの仰天温存かと)。

週末のプレミアでも、ボルトンとドローに終わり、そちらはついに白旗発言。

リバプールにしてみれば、1-0で折り返して、アンフィールドでの試合を迎えたというのは、難しい試合運びを強いられることになる。この試合だけに勝つのは難しいことではないが、相手にゴールを与えないようにゲームをコントロールし続けなくてはいけない。1点とられた時点で、勝ち抜けには3点が必要になるのだから。

 ゲームの入りは、リバプールペース。絶対にバランスを崩さず、チェルシー顔負けの高速タッチで前にボールを供給し、シュートアウトチェルシードログバを1トップにして、2シャドーのスタイルは維持。ただ、前線は少しワイドに展開して、中盤を締める感じ。審判のゲームコントロールが秀逸で、ゲームは美しく流れる。

前半途中までは、ホームのリバプールのポゼッション率が高い(70%前後)が、両チーム球離れが早いので、極端に押している感覚はないが、ゲームを支配していたのはリバプール。そしてその流れ通りに先制したのもリバプール。エリア左外側からのFKをゴール前に上げて混戦から、同じような位置から再度FKのチャンス。今度はラインの前に流し込み、後ろから走り込んできたアッガーのミドルが決まる。チェルシーのDFは裏をかかれた格好で、ボールのコース上にも人数はいたのだが、完全にウォッチャーになってしまった。カルバリョの離脱に起因するといってしまうと簡単だが、リバプールのセットプレーのバリエーションに一杯食わされたといえるかもしれない。ただ、セットプレーではチェルシーが上手。合計スコアもタイになっただけ、ということで、その後もチェルシーは特に修正なく、守備に重点を置きながら少ないタッチでゴール前へボールを運ぶ。双方、中盤でのチェックが中心で、消耗しながらもほとんど何も起きない、という時間帯が続く。徐々にチェルシーが盛り返すが、お互い前線に人数かけるわけでもなく、バイタルエリアでフリーのシーンはほぼ皆無。個人で状況打破できるのはドログバくらいか。そのドログバがパス一本で抜け出してシュートが惜しい場面といえたがGKレイナが反応。終了間際には、決定的なシーンこそないものの、かなりチェルシーが押し込んで時間帯を踏まえた試合巧者ぶりを見せた。前半はそのまま終了。

交代なく後半が開始し、戦術に劇的な変化はなく綱引き状態がつづく。10分前後はリバプールの時間帯ともいえたが、クラウチのシュートはツエフが、カイトのヘッドはクロスバーが防ぐ。一方チェルシーの目立つポイントは、ドログバの飛び出しとジョーコールの運動量か。しかしレイナがシュートまたはシュート前のプレーで未然にセーブ。ツエフの勇猛さは先週の試合で改めて実感したが、今日はレイナも当たり日で、プレーが切れていた。しかし実際にはそれが発揮されたのはごくわずかで、ほとんど目立つことないくらい、チェルシーにゴールを匂わせる危険なプレーは少なかったといえる。

延長を見据えた心理戦。体力と神経がじりじりと消耗する。アウェイなので、チェルシーは長引かせたくないのか、いっそPK戦まで持ち込みたいのかとも思ったが、私的にはPK戦はまったく興ざめなので、何とかゲームでの決着を願う。

先に動いたのは、リバプール。80分にシャビアロンソを投入したがバランスは崩さず、中盤での早めのチェックが有効に機能し続ける。この辺りからチェルシーは、組み立てをあきらめるような態勢で、後ろはしっかり保ってロングボールで様子をうかがうようなシーンが増える。ゼンデンがゴール前に迫ったがゴールはならず、結局緊張感とプレスを保ったまま90分タイムアップ。タイスコアとなり延長戦へ突入。

非常にクリーンな試合で、カードの心配をしなくて良いこともあり、戦術上の交代という監督采配が鍵を握る可能性もあった。延長戦で先に動いたのはチェルシージョーコールの運動量は落ちていないように見えたが、ロングボールが多くなっていたこともあり、前半8分にロッベンと交代。その直後、シャビアロンソがグラウンダーのミドルを放ち、ツエフがはじいたところにカイトが詰めてゴール!

しかし、カイトとスタジアムの喜び爆発ぶりに、しばらく中継も気づかなかったが、オフサイド。ミドルを放った時点でカイトがオフサイドポジションのようにも見えなくはなかった。画面はしきりにコッリーナを映していたが、コッリーナが文句を言っているのかどうかも良くわからなかった(いつも通りの強面)し、その時点ではなぜコッリーナを映しているのかも良くわからなかった。後で見たら、レフリーオブザーバという仕事だったようで、インカムもついているようだった。

ポジションがオフサイドでも、ボール保持者がシュート態勢だったら、厳密にオフサイドとらなくても良いとか?運用上の規定でもあるのかしら?逆はJリーグでよく見る(ゴール判定)だけど、あれは審判が見てないのかと思っていた。

とにかく、このプレーと判定で、スタジアムは大歓声とため息。だが、ボルテージを高めるには絶好のプロットで、これ以降は完全にリバプールのゲームといった趣だった。延長に入った時点で三枚の交代カードがあり、しかもそれを先に切ってきた時点で、気持ちリバプールは後手に回っているような印象もあったのだが・・・

延長後半開始時には、リバプールクラウチoutでベラミーin。相手の変更を見てチェルシーは中盤の修正をはかるべく、カルーoutでライトフィリップスin。これはなかなか有効で、お互いさすがに運動量の落ちてきた時間帯に、中盤再構成とチャンスメークに彼は大活躍であった。惜しいクロスもあってモリーニョまたマジックか、と思わされたが、ゴールには至らず。

本当に残りわずかになって、チェルシーは底で奮闘していたマケレレを下げてジェレミーを投入、リバプールマスケラーノを下げてファウラーを投入。いずれもPK戦向けの交代かと思われたが、さすがにバランスが崩れて、その間隙を縫ってカイト、ジェラードがシュートを放つ。この辺は、もうPK戦だろうという空気が確かに充満していたが、少し集中力を欠いた時間帯で何が起こってもおかしくなかった。

しかし「残念ながら」無事にタイムアップ。

PK戦は、アウェイサポータ席側をバックにして行われる。

雰囲気的には、最後押せ押せのリバプールが試合を決めきれなかった感が強く、こうした時にはどっちが勝っちゃうんだったっけなあ・・・とチェルシーの勝利をなんとなく予想。

スポットから見て、左半分をチェルシーサポ、右半分(から一周だけど)をリバプールサポが締めている格好。だからではなかろうが、リバプールの選手は、ゴール右へのキックが多く、ツエフは止められなかった。一方チェルシーは、一人目のロッベン、三人目のジェレミと交代出場の選手が、レイナに止められる。二人目のランパードも決めはしたがコースは読まれていた。遂にレイナがキレキレぶりを発揮できる場面が来た。リバプール四人目はカイト。今日は、クロスバーに、コッリーナに、と色々あったが、シュートを最も多く放ったのも彼。そして、ゴールを決めて、試合を決めた。

冒頭には、どちらが勝っても、と達観したようなことを書いたが、去年アーセナルが逃したビッグイヤーをチェル資に先を越されたくなかったのは、正直な気持ち。今週末プレミアでチェルシーとの対戦もあるので、勝ってきて欲しくはないと思っていたのも事実(実際には四位確保して消化試合になったのでそこまでではない)。

ただ、結局リバプールかよ、というのも好ましくなかったし、欧州CLを勝ち取るポテンシャルはここ数年ずっとあったであろうチェル資が、決勝にまで行けないというのは「運」の重みが過度に重要視されてしまいそうで、複雑であった。希望としては、チェルシーが決勝まで行って、「劇的に」ミランに敗北していただきたかった。

しかし、邪念はテレビの前の視聴者一人のみ。非常にレベルの高い、静かな激しさと美しさを保ったゲームだった。ゴールシーンあるいは直接的なゴールチャンスはなくとも、ゴールの意識と、失点を防ぐ意識が高度に融合したゲームだった。マンUがローマ相手にやったようなゲームも良い。しかし、エンターテインメントとしては、今日のゲームの方が、「フェティッシュ」な意味でレベルが高いと感じた。まあ、フェチというのは個人差ありありですから、自分の性癖をばらすようで恥ずかしいですが。

そして、今年のアーセナルは、そのレベルには達していない「青年」チームだったと実感した。

それにしても、欧州の舞台でのチェルシーには、なぜフットボールの神様が振り向かないのか。かの神様は、必ずしも因果応報という訳でもないようだ。リバプールが犯した罪を償うのに20年かかったのは分かるが、チェルシーにはさほど罰せられる悪行はないと思うのだが・・・

単純に今日の結果に対してだけみれば、今のメンバーで充分な結果だったと思う。スカパー!解説の粕屋氏の「先月来、本当にこのメンバーで良くここまで盛り上げたと思います」という賛辞を引用しないわけにはいかないだろう。

ただ、故障者が続いたことを単純に運が悪い、とは片付けられないだろう。

多くの離脱者がアクシデントの故障ではなく、持病の再発である点は、ケアしなければいけない。特に、新規合流した選手がなぜ簡単に離脱するのか。獲得時点でスター選手でありしかもW杯イヤーだった以上、どこかしら悪いところを持っていたことだろう。しかし、新しいチーム・リーグへの適応・順応が求められるばかりに、メディカルケアがおろそかになっていてはチームの継続性に疑問が残る。双方を両立させた上で、チームの成績を上昇させる運営をしないと、過度の負荷をかける結果になってしまう。故障者による離脱は偶然なのか必然なのか、ということである。

チームとして、非常に結束した集団を作り上げているのは、監督の能力の賜だ。しかし毎年のようにスター選手が合流するチーム(かの油オーナーは方針変更するらしいが)で、初年度は活躍できない、というサイクルを繰り返していては、選手消耗のサイクルが早まるだけで、強豪クラブとして欧州CLに望み続けることはできないのではないか。(いや、もしかしたら、いったん挫折を味わうことで、ファミリーの一員に迎え入れるというやり方なのか?やらしすぎるぞ)

チェルシーの今後を心配することはアーセナルサポとしては無駄だ。

でも、やはり、今日バラックがいたら、リカルドカルバリョがいたら、どうなっていただろうと、妄想してしまう。一サッカーファンとしては、期待してしまう。その妄想や試合の余韻を楽しむ間もなく、今夜は準決勝のもう一試合がある。こちらは、ユニホームを着て勝利を願おう。