シュラスコは涙の味

出張でブラジル・サンパウロへ行っておりました。

現地から色々記事を書き込もうかと思っていたのですが、到着日に自分のPCがダウンしてしまい、無念の事後記となってしまいました。

さて、ブラジルには3泊4日の強行軍だったので、日程が合わず、ナマでサッカー観戦する機会には恵まれず。

しかし国際Aマッチデーもあり、また週末の全国選手権の試合を繰り返し再放送していたこともあり、テレビをつければ何がしかのサッカーを見ることができた。(日本-イラン戦はもちろん見れていません)

その中で考えるきっかけになったのは、ブラジルの下部リーグ(現地の人は二部だと言っていた)である。

以前ブラジル人とサッカーをする機会に恵まれたとき、そのレベルの高さに驚いた。もちろんお互い素人だ。しかし、そのパスの速さ、強さ、正確さと言ったらない。極端な話、走ってさえいれば、勝手にワンツーになり、ゴール前で軽くジャンプさえすればシュートになる、そんなボールをまさに配球ならぬ「配給」してくれるのだ。

何の参考にもならない話だが。

さて、そんな一般ブラジル人に驚かされた話はさておき、ブラジルの二部リーグというのはどうだったか。端的に言うと、時間がかかりイライラするサッカー。トラップミスが多く、状況判断も遅い。

どこかできいたような表現だ。

レベルとしては、Jリーグ一部の下位チーム同士のような戦いであった。

違いを挙げるとしたら、まず、守備意識の低さ、というか緩さ。

その結果、試合としてものすごくルーズな印象をうけてしまう、そんなネガティブな感想を持つのは、きっと私が日本人だからだろうか。あるいは、二部リーグの特性だろうか。

今時、南米の上位リーグのチームが攻撃偏重だなんてステレオタイプなことは、トヨタカップの中継でも聞かれないし、守備軽視の国柄、と片付けるほどサッカーが後れているはずもない。おそらくこのレベルのチームであれば、攻撃のタレントを育てて勝ち点を稼ぎ、頃合を見て他クラブへ移籍させる、というのが経営上重要という視点もあろう。

またもうひとつの違い、それはゴール前でのミドルシュートがないこと。「今日はミドルなしね」と約束して試合をはじめたのか?というほどこれは驚きだった。ドリブルか、必ず形を作ってゴール前に迫ろうとする。まあそれがいたって不正確で遅いのだが。つまるところ、決定力不足だ。

手数をかけないと、ゴールが作れないのなら、その熟成を待たねばいけない。日本代表について、先日そう書いた。

だが、ブラジルで疑問が湧いてきた。果たして熟成するんだろうか。

Jリーグを席巻している、またはしてきたブラジル人アタッカーは、無論本国で一流と呼ばれる人たちではない。ワシントンしかり、マグノアウベスしかり。さかのぼっても、ジーコやらエジムンドやらは別として、得点王に絡んでくるような、アラウージョ、エメルソンなどクラスの選手には事欠かない。

ブラジルで何流の選手といえるのか分からないが、とにかく彼らは、二部のレベルではなさそうだった。(もしそうだったら、少し安心したのだが)

ブラジルには、一流と言われる以下のレベルで、このクラスの選手がゴロゴロしている、と言うことだ。

つまりこうだ。少なくとも中盤からゴール前までの実力はブラジル二部とJリーグに大差ない(ように見えた)。だが、ブラジルには、最終的に前線で決定力を持った一流以下のレベルの選手が、確かにいるのだ。二部でプレーしないだけで。

一方、日本。そのレベルであっても、ゴール前を自国の選手が張れない、というのはその国の代表にとっては致命的なんじゃないか。

ブラジル代表は二部の選手だけで構成されるわけではない。だが、日本では、現段階でいくら探しても、代表暦があるFW以上の選手は出てこない。

そうした選手のレベルが高くないから、一流ではない外国人選手や、動きがアグレッシブで読めない若手がJリーグでは即活躍できるのだ。

つまり、いくらゴールにいたる手順について連携を高めていったって、フィニッシュを外国人選手におまかせ、としているリーグ戦の状況では、代表の時だけFWを責められない。急にうまくなるわけじゃない。

崖の底がかすんでよく見えない怖さには実体がない。想像上の恐怖だ。だが霧が晴れた時、喪失感すら覚えるような焦り・絶望を感じてしまう。大げさだが、やはり、足りないのだ。

どうすればいいんだ。

松橋や杉本やカレンがなんとかしてくれるのか。柿谷の世代まで待つのか。僕が生きている間じゃ無理なのか。

楽観論を戒める代表監督は、彼が生きている間にこの問題をどう解決するつもりだろう。

自分にできることは、Jリーグのスタジアムで、数少ない日本人アタッカーを、叱咤することだけだ。

良いプレーには敵味方なく正しい評価を(難しい。せめて黙って拍手か)。悪いプレーには、味方なら罵声を。敵なら失笑を。

播戸が、走りこむのはいい、飛び込むのもいい。だが、自由に動けるのは、マグノアウベスがいるからだ。

それに、オフサイドにかかるのには理由があるのだ。相手のラインが優れている時ばかりじゃない。

サポーターの立場になるとスタジアムではつい目をそらしてしまうが、日本人FWのレベルを上げていくためには、今プレーしている選手にきちんとやってもらわなければ困るのだ。

どうか、「外国人選手におまかせ」にせずに、日本人FWが前を張って欲しい。

ヨンセンは良い選手だが、頼りっぱなしでは、目の前の勝ち点だけでなく、チームを強くすることにさえ繋がらない。いわんや、国の代表など。

サンパウロでは、そんな暗いことに、思い至っていました。

でかい肉をため息混じりで食いながら。